2010年 愛知自治体キャラバンのまとめ概要

2011年2月/愛知自治体キャラバン実行委員会

1.名 称

「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」

2.主 催

愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部

3.日 程

2010年10月26日(火)~29日(金)
※愛知県とは11月15日(月)に、名古屋市とは11月17日(水)に実施

4.要請相手とコース日程

愛知内57市町村を5コースで実施

コース 主な地域 責任団体 宣伝カー
第1 尾西・海部 年金者組合 名古屋市職労
一宮・稲沢 一宮社保協
第2 尾北・尾東・尾中 自治労連 自治労連
第3 知多・尾東 愛労連・社保協 愛労連
第4 西三河 社保協・新婦人 保険医協会
新婦人
第5 東三河 自治労連 豊橋市職労
東三河労連
事務局4団体

5.参加状況

※(  )内は昨年参加者数

①各コースの参加者総数は延べ787人(788人)だった。そのうち共産党議員は76人(84人)だった。愛知県に19人(23人)、名古屋市35人(55人)そのうち共産党議員は1人参加。
自治体側の参加者は591人(535人)だった。首長1人、副首長4人(7人)、部長は15市町村21人(15市町村22人)参加。愛知県は20人、名古屋市15人。主に、福祉・保険・医療の課長・次長など担当者が対応した。

②各団体の参加状況は、延べ参加数で多い順に並べると次の表のとおり。

団体名 延べ人員
年金者組合 143(166)
自治労連(名古屋市職労含む) 113(146)
保険医協会 110(122)
新婦人 97( 96)
愛商連 65( 60)
愛労連(医労連・地域労連含む) 55( 56)
民医連 54( 46)

③昨年同様、年金者組合や新婦人、自治労連、など地域で運動している団体からの参加が定着してきている。愛労連は、尾中、東三河の地域からの参加が定着している。
地域から一宮社保協、介護の会や地域の民主団体とあわせて今年はあいされん・愛障協からも参加し、延べ74人が参加した。
東三河山間部は事務局団体と東三河労連が協力し今回も取り組んだ。

6.事前学習会の取り組み

事前学習会は、要請事項だけでなく国保の広域化の動きの中で国保問題も含めた学習や地域の具体的要求の検討も含め全地域での開催を目標に取り組んだ。結果、昨年の17地域から今年は18地域で開催し、249人(昨年・地域のみ205人)が参加した。
例年より一週間遅れのキャラバン日程であったため、陳情書への文書回答・アンケート回答も準備でき、地域の到達状況もつかんだ学習会になった。
今後、より地域での状況にそった学習会を開催するために、地域の到達状況と回答の検討などとあわせ、地域で懇談当日の重点や発言者などの準備をはかることが必要である。自治体毎の学習会の開催にむけた回答内容の検討、そのために必要な講師団の養成などが求められる。

開催地域(開催地) 開催日 参加者数
東三河(豊橋) 10/22 14人
西三河(知立) 10/13 10人
(豊田) 10/ 5 8人
(西尾) 10/ 5 14人
(岡崎) 10/19 18人
(安城) 10/17 独自開催
知多(半田) 10/14 24人
(東海・知多) 10/21 32人
尾張東(瀬戸) 10/23 10人
(長久手・日進) 10/21 12人
(豊明) 10/ 7 5人
尾張中部(春日井) 10/ 7 15人
(小牧) 10/13 8人
尾張北(江南) 10/18 14人
(岩倉) 10/12 12人
(犬山) 10/16 12人
尾張西(一宮) 10/21 18人
海部津島(津島) 10/12 23人
合計 18地域・249人

7.懇談の重点項目とアンケート・回答

①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように今年も重点項目を決めた。要請事項についてはすでに多くの市町村が実施している施策はアンケートにまわした。

②さらに、住民が安心して暮らしていける自治体の施策の充実のなかで介護認定者の障害者控除認定書発行や子育て支援などとあわせて介護保険については、ローカルルールになっている訪問看護サービスの「院内介助」に絞ってサービス制限をしないよう求めた。また、国保の都道府県単位化(広域化)が進められようとしているなかで「広域化反対」の要請を新たに重点項目とした。

③就学援助や生活保護問題とあわせて、肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンなどの接種費用の助成制度を予防接種として新たに項目をおこし要請した。

④要請項目についてのアンケート・文書回答について、今回もキャラバンの事前学習会で活用できるように約1カ月早く準備した。アンケートはすべての市町村から、文書回答は93%(昨年97%)の市町村から提出されたが、今年も豊橋市だけでなく大治町の回答書が事前に届かず懇談後となった。豊田市とみよし市だけでなく新たに西尾市、豊根村の文書回答が届かなかった。
・安心して暮らせる年金制度…飛島村、設楽町
・介護保険制度の抜本的改善と介護労働者の処遇改善…飛島村、設楽町
・安心して子育てできる制度確立…設楽町
・医師・看護師不足を解決し地域医療の充実…知立市、設楽町
・障害者の福祉・医療制度緊急改善…設楽町
・予防接種の定期接種化…蟹江町、設楽町
・弥富市は「青年の雇用と賃金」「国保の国の負担増」「介護保険の負担軽減と処遇改善」「年金制度の抜本的な改革」「後期高齢者医療制度廃止、医療無料制度拡充」の意見書をまとめて採択

⑤キャラバン要請を受けて、次の通り国と県に対する意見書が採択された。

8.要望項目に対する到達点

31年を迎えた自治体キャラバンや地域の運動で高額療養費や出産育児一時金の受領委任払いの実施、子どもの医療費無料制度の拡大、妊婦健診の助成回数拡大、福祉給付金制度の窓口無料化(現物給付化)などの改善とあわせて、障害者控除認定書発行や地域巡回バスなどの外出支援、配食サービス、住宅改修の受領委任払い制度の実施、予防接種の費用助成が前進し、市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たした。

1.自治体の基本的あり方

今年は、民主党政権が公約を守らず医療や介護保険など社会保障の制度の改悪法案が通常国会に上程される情勢のなかで自治体の基本的あり方について憲法25条と地方自治法1条をふまえた行政運営と各種交付金について雇用や介護職員の処遇改善など住民にとって必要な施策の積極的な活用と施策の継続とあわせて「税滞納者への行政サービスの制限をなくすこと」を昨年に続いて求めた。
「法の趣旨を踏まえる」としつつも「総合計画で各施策を展開」の回答が多くの自治体でみられた。各種の臨時交付金についても「全国市長会を通じて」「地方6団体を通じて」と回答し、「独自の努力は財政的に無理」の回答が昨年同様多数であった。行政サービス制限条例は、「ある」が半田市、豊川市、大府市、知立市、みよし市、東浦町の6市町であった。豊田市は「検討中」の回答。昨年あった東海市は「ない」の回答だったが検証が必要である。

2.安心できる介護保障について

(1)介護保険について
制度発足から10年を迎えた介護保険制度は、この間の居住費や食費の全額自己負担化(所得による軽減あり)、介護用ベッドや通院・生活支援などのサービスの利用制限、認定制度の見直しなどがおこなわれ、利用者不在の実態は改善されていない。2011年の国会には保険料の引き上げや軽度の利用者の家事援助の保険外し(自費化)などの「見直し」が狙われている。
このままでは、利用者は保険料だけ引き上げられ、懐具合で利用を制限し、低所得者には「選択」の自由もなく、必要な介護が受けられない状態が改善されず、介護保険から排除されかねない。

①介護保険料について
2009年4月から県内平均で月額3,721円から3,766円へと1.2%(45円)の引き上げとなった。2012年度の見直しで介護保険料がさらに引き上げられようとしているなかで減免制度の改善など要請した。
新たな保険料減免制度の実施はなく減免実施市町村が合併で31市町村(54.4%)となっている。申請不要の一宮市の実績が総件数7,184件中6,021件となっていることに注目したい。
減免に対する「3原則」の撤廃とあわせ国の負担をせめて「20%+調整金5%」から「25%+調整金5%」に早急に改善させることが必要である。
また、2009年度のキャラバンの調査で、38市町村(66.7%)が基金の残高を第4期に保険料の引き下げの財源に繰り入れず残高として残した。その理由として今後の計画に使うとしている。第5期の計画づくりが始まっている中で計画を検証し、保険料を引き上げさせないための取り組みが必要である。

②利用料減免について
利用料の単独減免も新たな実施の自治体はなかったが、豊田市が実施していることが明らかになり25市町(43.9%)になっている。
減免実施の市町村の対象条件が厳しく、多くの自治体では対象者がごく少数になっている実態は改善されていない。
そのなかで、豊橋市(低所得者の利用料限度額の引き下げ)や江南市・阿久比町(非課税世帯への訪問介護の利用料軽減)などの制度が優れており、実績も高い。他の市町村に広げていくことが必要である。
保険料減免と異なり、一般会計からの繰り入れで実施されている点は評価できる。

③訪問介護サービスにおける「院内介助制限」について
これまでの改定で予防給付や軽度者からの福祉用具の利用制限、同居家族がいる場合の訪問介護サービスの利用制限などが問題になり、厚労省は、介護現場や利用者の声に押され「機械的・一律に福祉用具を回収しないように」の事務連絡や、同居家族の利用制限についても2回にわたり「個々の利用者の状況に応じて具体的に判断」と3回の通達を出している。今回は、介護サービスの利用者が病医院に通院する場合の送迎から乗降車などについての「院内介助の制限」について「やめる」よう求めた。結果は、「制限なし」が6市町村(10.5%)、「ケアプランの明記あれば認める」が50市町村(87.7%)で回答があった。
社保協が昨年5月に実施した調査では、回答のあった199事業所の内63事業所で有償提供しており、料金も中央値で1回1,500円という結果になっている。
具体的な事例をつかみケアプランの記述の簡素化など利用しやすく改善させていくことが求められている。

④特別養護老人ホームなどについて
特別養護老人ホームの建設のテンポは遅く、入所待機者は2005年13,702人から連続して増え2010年度は26,472人になり3年待ちは当たり前になっている。
また、低所得者や医療依存度が高いと「施設から選択」され、「利用者が選択」の自由はなく、入所できない実態は変わっていない。とくに、居住費・食費の全額自己負担化のなかで経済的状況によって利用が制限される事態がいっそう進行している。必要な整備計画も進まず、厚労省の整備状況調査でも2006年から2008年度の達成状況は7割である。愛知県はそれより悪く、6割の達成である。
新政権になっても療養病床廃止は撤回されず、小規模多機能型居宅介護・夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護など地域密着型サービスも計画どおりすすんでいない。
誰でもお金の心配なく安心して施設・在宅サービスが利用できるようにしていくために特別養護老人ホームや小規模多機能施設の建設を中心に基盤整備を早急に行い、低所得者や医療依存度の高い利用者が入所できるよう独自の助成制度を設けることが必要である。

⑤介護労働者の確保について
深刻な介護職員不足問題について「介護報酬3%引上げ」「介護職員処遇改善交付金」など国の施策に自治体は期待を寄せているが、独自の財政的支援を行うところまでいっていない。
そのなかで介護従事者の研修会参加や資格取得費の一部助成(名古屋市・春日井市)、ヘルパー養成研修受講料の助成(安城市)などが実施されている。スキルアップの研修については、独自に一宮市、刈谷市、小牧市、半田市はじめ知多南部2市4町で実施している。
介護従事者の慢性的な人材不足に対し、この間の運動もあり「福祉人材確保支援助成制度」及び「職員研修制度」が不十分ではあるが国で予算化され一定の改善がされたという認識が市町村にみられる。しかし、介護労働者の定着確保には、「介護職員処遇改善等交付金」の事業所の活用の促進とあわせて、事務の簡素化や全職員対象にするなど交付金制度の継続的実施とその改善を求めていくことが必要である。

⑥住宅改修と福祉用具の受領委任払い
住宅改修と福祉用具の受領委任払い制度は、新たに日進市と東郷町で実施され、住宅改修が38市町村(66.7%)、福祉用具が29市町村(50.9%)での実施に広がった。

(2)高齢者福祉施策の充実について~全自治体で配食サービスが実施、外出支援も大きく前進~
「消えた高齢者」が社会問題になり、ひとり暮らし、高齢者夫婦や認知症の増加など、多様な生活支援が求められている。
国は、医療や介護の連携を強化し、地域で高齢者の暮らしをささえる配食・買い物・見守りなどの「地域包括ケアシステム」を「自己責任」「市場化」を土台に推進しようとしている。
高齢期になっても安心して暮らしていける地域づくりにむけて、ボランティアや民間任せでなく、国と市町村の公的責任を明確にした取り組みが必要である。

①配食サービス
自立支援事業となり、「自立支援につながっているか」などの調査実施や施設での食事の自己負担化の動きなかで、利用者負担の引き下げ、食事内容の改善を求めた。
配食サービスは、新たに南知多町で実施し、全市町村で実施となった。毎日実施は豊山町と東郷町が新たに実施し、16市町村(28.0%)から18市町村(31.6%)となった。週5回以上は42市町村(73.7%)となった。
1食当たりの利用者負担には市町村格差が大きく、250円から600円になっている。愛西市は400円を350円に引き下げた。
今回初めて自治体の助成額を調査した。犬山市のみがゼロで、他の市町村は1食あたり100~700円の助成になっている。今後、安否確認や閉じこもりを予防していくため対象者の拡大とあわせ、自治体の助成額を増やし、食事内容の改善にむけた取り組みが求められている。

②高齢者が地域で生き生きと暮らしていくために
新たに瀬戸市、三好町で実施し、名古屋市の敬老パスも含め43市町(70.5%)の実施となった。そのうち無料は、16市町(26.2%)である。
巡回バスがない半田市、江南市、岩倉市などは高齢者の足の確保のためタクシー利用券の配布をしている。

③宅老所など高齢者のたまり場等への援助
ア、安否確認や生活支援
ほとんどの市町村で福祉電話の貸与や配食サービス、民生委員やボランティアなどによる訪問事業など安否確認や生活支援を実施している。しかし、その方法は、市町村毎にばらつきがあるだけでなく、地域でネットワーク化されず、民生委員やボランティア頼みになっている。
県内で34人の不明高齢者が存在していたことが明らかになった。
高齢者・障がい者へのゴミ出し援助は、24市町村(42.1%)で実施されている。実施市町村と活用を増やしていくためのとりくみが求められる。
イ、敬老パスや地域巡回バスなど外出支援巡回バスは新たに新城市、武豊町が実施し、名古屋市の区内巡回も含め41市町(71.9%)の実施となった。巡回バスの実施とあわせ42市町村(73.7%)が高齢者や要介護者、障がい者などにタクシー代などの利用券を配布している。巡回バスのない豊橋市、半田市、岩倉市、江南市などは高齢者の足の確保のためタクシー利用券の配布をしている。豊根村は、村営バスで65歳以上の高齢者と障がい者に無料券を発行している。
巡回バスもタクシー券の発行もしていないのは一色町、吉良町、幡豆町、東栄町の4町だけになっている。
ウ、宅老所など高齢者のたまり場等への援助
宅老所や街角サロンなどへの助成実施自治体は19市町村(33.3%)となった。
介護予防が日常の暮らしのなかで進められ、高齢者がいきいきと暮らせるようこれらの施策を住民が必要とする内容に改善させていくことが必要である。
エ、バリアフリーの公営住宅の整備
公営住宅の改築時に一部バリアフリー化を計画との回答が多かったが、新たな公営住宅の建設計画がどうなっているのかは今回未調査のため掌握できなかった。
オ、住宅改修の独自助成制度
住宅改修の独自の助成制度実施については、介護保険の上乗せで実施を27市町村(47.4%)が、介護保険利用者以外への助成は17市町村(29.8%)になっている。
カ、ゴミ出し援助
要介護者や障がい者へのゴミ出し援助は、24市町村(42.1%)で実施している。

(3)障害者控除の認定などについて

①障害者控除の認定書発行が大きく前進
認定書の発行は、2007年の13,171人から2008年18,544人、2009年22,712人へと年々増えている。ねばり強い働きかけの成果である。
「寝たきり」や「認知症」しか認めない市町村があるなかで「要介護1以上の要介護認定者」をすべて「障害者控除」の対象としているのは、29市町村(50.9%)に広がった。
また、要介護者に認定書を送付しているのは、一宮市、知立市、稲沢市、岩倉市、日進市、扶桑町、阿久比町、東浦町、豊根村の9市町村(15.8%)になった。
認定書または申請書の個別送付を実施しているのは、24市町村(42.1%)に広がった。市町村によって対応が異なっている実態を改善させるため、引き続き対象を広げ、全ての要介護者に障害者控除の認定書・申請書を送付させるとりくみが必要である。

2.高齢者医療の充実について

①高齢者の医療費無料化について
後期高齢者の医療費無料化をめざし当面非課税世帯の医療費無料となるように福祉給付金(福祉医療費給付制度)の対象拡大を求めた。
愛知県は2008年4月から「福祉給付金制度」を「後期高齢者福祉医療費給付制度」と名称を変更し「ひとり暮らしの市町村民税非課税者」を対象から外す改悪をおこなった。
県が外した「ひとり暮らし非課税者」を引き続き対象(縮小も含む)とし、医療費を助成しているのは、52市町村(85.2%)から48市町村(84.2%)になっている。
県の基準より何らかの拡大をしているのは、「ひとり暮らし非課税者」を含め、54市町村(94.7%)ある。

②後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対する資格証明書の発行について
後期高齢者医療制度の発足にともなって長期の滞納者は、保険証が取り上げられ資格証明書が発行されるようになった。愛知県広域連合は、「悪質」「高額所得者」以外には発行しないという対応になっており、発行は「かぎりなくゼロ」と回答しており、現在、資格証明書の発行はさせていない。
なお、短期保険証は県内で516人(名古屋市内146人)に発行されている。

③後期高齢者医療制度に加入しない65~74歳の障害者医療助成制度の適用について
65~74歳の障がい者が後期高齢者医療を選択しないと医療費助成が打ち切られる問題は改善していない。愛知県と同じように障がい者への医療費助成に「後期高齢者医療への加入」を義務づけているのは愛知県を含め7道県しかない。
後期高齢者医療に加入しない65~74歳の障がい者に直ちに障害者医療を適用する制度に改めるよう求めたが「県の動向をみて」と回答している。後期高齢者医療に加入しない65~74歳の障がい者に直ちに障害者医療を適用するよう取り組みを強めていくことが必要である。

3.子育て支援について

①子どもの医療費助成制度
愛知県が2008年4月から通院を就学前、入院を中学校卒業まで(小中学生は償還払い)に拡大、名古屋市も県内で唯一実施していた所得制限を廃止し、子どもの医療費助成制度は大きく前進した。
通院・入院とも「中学卒業」まで自己負担なしでの実施は、昨年22市町村(36.1%)から26市町村(45.6%)へ広がった。また、通院で「小学校卒業」以上までへの拡大は、43市町村(70.5%)から47市町村(82.5%)に、「中学校」卒業以上の市町村は22市町村(36.1%)から29市町村(50.9%)に大きく広がった。
制度は前進したが、自己負担問題では高浜市は改善したが、一宮市、北名古屋市で一割負担が導入され、昨年から実施の一色町を含め3市町で残されている。また、入院で償還払い制度を残しているところが31市町村(54.4%)ある。
犬山市は2010年10月から通院、入院とも18歳年度末まで拡大されたが小学校4年以降1割の自己負担、2割の償還払いになっている。
1割の自己負担や償還払いを実施している市町村は窓口での支払いが必要になる。早急に改善すべきである。

②妊婦健診の拡大
妊婦健診は、厚労省の指導文書や厚労大臣の発言もあり、全市町村で14回の助成が実現した。
産婦健診の助成は16市町(26.2%)から19市町村(33.3%)となった。

③就学援助について
就学援助の認定基準を生活保護基準の1.5倍が7市町村(12.3%)、1.3~1.4倍が10市町村(17.5%)になっている。半田市は1.4倍から1.0倍に後退した。1.0~1.25倍が30市町村(52.6%)である。申請窓口は、「市町村窓口」と「学校」の両方を利用できるのが31市町村(54.4%)になっている。
また、民生委員の証明等が必要な自治体は、13市町村(22.8%)になっている。
広報は、早い時期に保護者に知らせるようになっているが、対象者の所得がわかる内容で広報がされているかは定かでない。
引き続き、就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等と義務教育の無償化を求めていくことが必要である。

④学校給食の無償化について
子どもの「貧困」問題が社会問題になっているなかで給食費が払えず給食が食べられない事態が生まれている。今回義務教育の無償化について要請をした。「無料の考えはない」の回答が多い中で大口町は給食費の半額補助、大治町は1人月額150円の補助をそれぞれ実施している。また、飛島村は、給食部会へ補助金を出している。

4.国保の改善について

①国保の広域化について
厚労省は、後期高齢者医療制度改革とあわせて広域化推進のための「広域化等支援方針の策定」を昨年5月の国会で成立させた。また、後期高齢者医療制度の廃止後の「新制度」創設を逆手にとって、75歳未満の国保についても広域化(都道府県単位化)を実施しようとしている。
愛知県でも12月20日に「国保広域化等支援方針」を決め、広域化の方向性と併せて当面、収納率目標を定め、広域化の準備をすすめている。
広域化(都道府県単位化)されれば一般会計からの繰り入れや独自の減免制度もなくなり大幅な保険料(税)の引き上げにつながり、何よりも住民の声が届かない国保行政になってしまう。
このような国保の広域化に反対するように要請したところ、「賛成の立場をとっていない」と回答したのは飛島村と設楽町のみだった。22市町(38.6%)が「広域化が必要」「広域化すべき」と回答し、「国や県の動向をみて」と25市町(43.9%)が回答している。広域化必要の理由に「財政基盤の安定」といっているが、国が大幅に削減した補助金を増やさない限り財政基盤の安定はない。

②保険料(税)および減免制度について
国民健康保険は憲法25条に基づく社会保障の柱であり、国民健康保険法のどこにも「相互扶助」の文言はない。法に基づかない考え方は改めさせていく必要がある。
滞納世帯は21.2%になり、払いきれない保険料(税)は高すぎる。保険料(税)の滞納者が増えるなかで、払える保険料(税)にしていくために、昨年に続き以下の要請をした。
ア)これまで以上に一般会計からの繰り入れをおこない保険料(税)の引き上げを行わず減免制度を拡充し、払える保険料(税)に
イ)18歳未満の子どもは均等割の対象から外す
ウ)前年所得が生活保護基準の1.4倍以下の減免制度の新設
エ)所得激減の要件を「前年所得1,000万円以下で、当年の見込み所得500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」に
「低所得者向けの減免」の実施は、17市町村(29.8%)になっている。また、「収入減の減免要件」は、常滑市が前年所得200万(1/2減少)をあらたに実施。犬山市や江南市で当年見込み所得を生活保護基準130%以下、東浦町で250万を300万以下になった。
引き続き国に対し、国庫負担を医療費の38.5%から45%に戻すとともに各市町村で「低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善とあわせて払える保険料(税)にしていくための取り組みが必要である。

③資格証明書・短期保険証
資格証明書の発行だけでなく、短期保険証発行の期間や制裁措置についても調査した。
資格証明書の発行は、愛知県合計で5,086件(2010年6月1日)と滞納世帯の1.7%(全国7.0%)に抑えている。資格証明書を1枚も発行していないのは26市町村(45.6%、2010年8月1日現在)になった。
資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは17市町村(29.8%)、「独自に配慮」は23市町村(40.4%)である。
子どもの無保険をなくす取り組みは国も動かし、2009年4月から「短期・6カ月」の条件付きで改善させたが、高校生以下の子どもに対して資格証明書の発行は、2010年8月現在で11市町197世帯であった。機械的な発行を許さない取り組みが引き続き重要である。
短期保険証の発行件数は、63,155件から53,101件と減っているが滞納世帯に対する割合は27.2%(全国27.2%)となっている。
有効期間は1カ月が15市町村で4,302件(2009年3,379件・名古屋市を除く)、3カ月が26市町村で7,439件(2009年7,497件)になっており、1カ月が豊田市で2,508件(2009年2,378件)、小牧市293件(2009年86件)、蟹江町542件(2009年13件)となっている。
また、留め置きも12,266件から16,721件となり、保険証が手元に届いていない人が増加している。また、給付の制限を一宮市と西尾市が行っている。

④滞納者差し押さえ
滞納者の差し押さえ件数も2008年の7,086件・39億4千万円から、2009年には8,151件・44億4千2百万円に増えている。なかでも名古屋市(164件→305件)、半田市(197件→299件)、小牧市(464件→983件)、知立市(429件→827件)、西尾市(90件→238件)では倍近く増加している。(括弧内は2008年→2009年)
差し押さえ物件は不動産、預金が多いが、給与もある。「悪質」のみの差し押さえなのか、きちんとした実態調査が必要である。

⑤一部負担金減免
一部負担金の減免制度は、新たな実施はなく合計43市町村(75.4%)となったが、未だに未整備のままの自治体が14市町村(24.6%)も残っているのは問題である。
2009度の減免実績は、7市・41件から8市町・68件と増えてきている。
引き続き、住民にわかりやすいポスター・リーフレットの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度を活用する申請の促進運動と制度の拡充が必要である。

5.障害者施策の充実について

国は、2010年4月から市町村民税非課税世帯を対象に、福祉サービス・補装具の利用料を無料にした。しかし、「自立支援医療」、障害児の利用料問題や配偶者の収入認定などの基本的課題、入所施設での手持ち金の制限、食費・ホーム家賃などの経済的負担問題は解決されていない。
地域間格差が激しい地域生活支援事業の予算も自公政権下の2009年度と同額の440億円しかなく改善の方向が見えない中、市町村が行っている移動支援などの地域生活支援事業の利用料を多くの市町村が無料にしている。
なお、愛知県は国の1/2以内の額を補助するにとどまり、「地域の実状に応じて」として地域間格差是正のために県補助額を引き上げることは考えていない。

①地域生活支援事業(移動支援・地域活動支援センター・日常生活用具等)の利用料について
2010年4月から国が低所得者の福祉サービス利用料を無料にしたにも関わらず、10市町が非課税世帯の利用料を無料にしていない。このうち瀬戸市は文書回答で「地方自治体が福祉サービスの水準維持を行うにあたり、応益負担の原則は必要なものと判断」と踏み込んだ回答をおこなっている。
このことは2010年1月7日の「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」が「応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけた」として応益負担の廃止を明言したことをまったく理解していないものといえる。

②ケアホーム・グループホームの建設・設置費補助、運営費補助について
ケアホーム(共同生活介護)・グループホーム(共同生活援助)への独自補助を設けているのは昨年と同様16市(28.1%)となっている。このうち土地の無償貸与をあげたところが2市町。国・県補助に自治体独自の上乗せ補助するところが少ない。
なお、愛知県では「市町村と共同して共同生活介護・共同生活援助事業費補助金を2007年度から創設し、運営費に対する補助を実施」と文書回答している。

③海部圏域に集中―新年度で改善
「利用料」の扱い、ホーム建設・運営費補助の扱いからも地域間格差は大きい。「利用料」を無料にしていない10市町(岡崎市・稲沢市・瀬戸市・津島市・愛西市・弥富市・あま市・長久手町・大治町・蟹江町)のうち6市町が海部障害保健福祉圏域に集中している。なお、岡崎市・稲沢市は軽減措置を設けている。br />
10市町が特別に財政力が低いわけではない。「財政」を理由に、軽減策を行わないことにはならないのではないか。br />
自治体との懇談で、岡崎市は2011年度から非課税世帯の無料化を「検討」、海部圏域も「圏域での調整」と蟹江町が回答したが、津島市では「検討することはある」と回答していることから新年度予算に注視が必要だ。

6.健診事業について

①特定健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と制度変更された。健診の実施に責任を持つのが自治体から保険者へと変更され、病気の早期発見に主眼がおかれなくなった。
今回も、特定健診への移行後の実施状況をつかみ、住民の健康を重視し福祉の後退にならないよう要請した。
特定健診は集団方式・個別方式のどちらかで実施されており、大きな変化はなかった。
個別方式または集団方式のどちらかで無料で受診できるのは43市町村(75.4%)ある。自己負担無料での実施は個別方式で34市町村(実施市町村のうち69.4%)あり、集団方式で27市町村(実施市町村のうち71.1%)だった。
各種がん検診は、項目ごとに実施のばらつきがあるが、全自治体ですべての検診を実施する必要がある。また、全てのがん検診を受けようとすると多額の負担になる。自己負担をなくし、費用負担の心配なく検診が受けられるようにしていくことが必要である。
前立腺がん検診を実施していなかった名古屋市が実施となり、残すは東栄町のみとなった。

②40歳未満の住民健診について
40歳未満の住民健診を実施している自治体は50市町村(87.7%)となり、特定健診と同じ内容で実施している自治体は18市町村(実施市町村の32.7%)になっている。
未実施は、名古屋市、岡崎市、一宮市、津島市、豊田市、東海市、幡豆町の7市町であった。1日も早く実施をさせていくことが必要である。

③歯周疾患検診
歯周疾患検診を毎年受診できるのは19市町村(33.3%)である。年齢基準を国基準より拡大しているのは45市町村(78.9%)である。

7.予防接種について

ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンなど任意予防接種の費用助成は、2010年10月1日現在、ヒブワクチン4市、小児用肺炎球菌1市、HPV(子宮頸がん)6市町村、高齢者用肺炎球菌9市町村となった。
なお、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンは、国の助成対象となり、すべての市町村で助成されることになった。しかし、市町村により助成額に格差があり、自己負担が無料の自治体もあるが、有料の自治体も少なくない。
早急に実施状況を把握し、無料化を求めるとともに、国に時限措置でなく、定期接種化の実施を強く求めたい。

8.生活保護について

リーマンショック以降、トヨタなど大企業の派遣切りが相次ぎ、職と同時に住居を失う労働者が急増した。また、自営業者も仕事が急減し、正規の職員にも大きな影響を与え、生活保護以下の生活を余儀なくされている実態が生じていたが、2010年になっても景気は回復せず、雇用問題は依然として厳しい状態が続き、生活保護の受給者は大幅に増加している。
2008年度と2009年度を比べると保護開始件数2008年11,866件が2009年20,153件となり、倍加したが、2010年度については未調査のため特徴がつかめなかった。
生活保護担当の職員については、2009年正規466人、非正規45人だったが、2010年は正規545人、非正規107人と増えている。国基準の受給世帯80に職員1人という基準が名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、小牧市、東海市、知多市、知立市などは守られていない。

9.今後の課題

(1)地域ごとの運動課題を明確にした運動を

国保の改善や高齢者福祉など、「水準の引き上げ」などを求め、子どもの医療費無料制度や障害者控除認定書の発行、巡回バス・福祉バスや配食サービスの実施など大きく前進させた。
さらに、国保の都道府県単位化(広域化)を阻止し、介護保険料や国保保険料(税)の引き下げ、独自減免など現行のサービスを改善させる取り組みと高齢者の生活を総合的に支える地域づくりなど継続的な取り組みの強化が求められている。そのためには、①キャラバンの事前学習会とあわせて「まとめ」の学習会も自治体毎に開催し次年度のとり組みにつなげていくこと、②事前学習会では事前に回答を分析し、具体的な事例で改善をめざす準備をする、③重点陳情事項をできるだけ絞り込む――など引き続き改善をしていくことが求められる。
そのためにもキャラバン時の懇談だけでなく地域が中心になって継続的な取り組みにしていくように、地域社保協などの運動体づくりが不可欠である。

(2)自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~これまでの貴重な成果を踏まえ~

世界金融危機にはじまった景気悪化の中でトヨタをはじめ大企業が率先して「期間工切り」や「派遣切り」を行い、深刻な雇用破壊に対し、「雇用・暮らしを守れ」の声は大きな世論となり、「反貧困」の連帯の動きが政府・国会を動かしてきた。
また、障害者自立支援、妊婦健診・任意予防接種への助成、地域医療を守る取り組み、国保の「無保険」の子どもをなくす制度の改善も私たちの運動で情勢を動かしてきた。
民主党政権は掲げた公約を守らず、後期高齢者医療制度は廃止どころか高齢者差別を温存し、国民健康保険の都道府県単位化(広域化)・70~74歳の2割負担化など、さらなる負担増の改悪を準備している。
また、「地域包括ケア構想」を打ち出し「医療と介護の切れ目のない連携」「24時間型訪問介護の実施」「住まいの整備」など「自己責任」と「市場化」を土台にした介護保険の改悪案を今国会に提出し、成立させようとしている。さらに「税と社会保障の一元化」の名で社会保障の財源を消費税「増税」で進めようとしている。
さらに、国民健康保険については、2013年から国民健康保険料(税)の算定方式を「旧ただし書き方式」に一本化する法案を提出している。この案が実施されると名古屋市、豊橋市、岡崎市では低所得者が大幅な保険料の引き上げとなる。
こうした福祉の切り捨て、住民の負担増を許さず、新たな情勢のなかで国の悪法を阻止するたたかいをすすめるとともに、制度を知らせる活動をいっそう強め、自治体が住民のいのちと暮らしを守る砦となるよう、「草の根」からの連携した運動強化がいっそう求められている。

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