新しい総合事業事業所アンケート結果

名古屋市では2016年6月から「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下「新しい総合事業」)が始まりました。「多様な生活支援のニーズに地域全体で応えていくため、これまでと同様のサービスに加え、多様な担い手による新しいサービスを提供します」(広報用パンフレットより)と説明していますが、事業者・職員や利用者からの不安の声が聞こえています。

愛知社保協介護委員会は、「新しい総合事業」の現在までの実施状況と今後の計画、今後の事業の見通しなどを調査するためにアンケートを実施しました。2016年11月2~4日にかけて名古屋市内訪問介護と通所介護の1,281事業所へFAXにより実施し(回答期限は11/19)、訪問介護事業所170件、通所介護事業所191件、どちらも運営している事業所74件、合計435件の回答が寄せられました。送付事業所の34%にのぼる回答が得られ、また送付した直後から回答が寄せられるなど、多くの事業所が制度への不安や矛盾を抱いている状況がうかがえます。サービスの継続性や報酬、人員確保に関わる意見も多く、制度の見直しが求められていることが明らかになりました。


1.「新しい総合事業」への参入状況

訪問・通所ともに、従来のサービスを継続できる「予防専門型」は7~8割参入。一方で、「生活支援型」は報酬、人員や事業継続性の面から見送りが多数。「住民主体の支援」の訪問型はわずか2事業所のみ。
(1)予防専門型(現行相当サービス)は訪問・通所ともに7~8割の事業所が参入
訪問介護への参入は244事業所のうち、188事業所77.0%(来年4月予定含む)でした。
通所介護への参入は264事業所のうち、220事業所83.3%(来年4月予定含む)でした。
従来の介護予防訪問介護・介護予防通所介護と同等の内容でありサービス提供を継続しやすく、報酬も同額とされているため、参入しやすいことが明らかとなった結果でした。
(2)生活支援型(基準緩和型サービス)は訪問で26.6%、通所もミニデイ7%、運動型13%にとどまる
訪問介護への参入は、244事業所のうち65事業所26.6%(来年4月予定含む)という回答でしたが、多くが介護職員初任者研修の職員で実施しています。「名古屋日常生活支援研修修了者」を採用しているのはわずか31事業所(12.7%)であり、採用人数も52人しかなく、「人員確保が難しい」という声があがっています。
通所介護への参入は265事業所のうち、ミニデイ型で19事業所(7.2%)、運動型で35事業所(13.2%)にとどまっています。報酬が低いことやサービスの継続性(6か月クールで終了)に疑問が出されています。
(3)住民主体の支援は、訪問型で2事業所、通所型で7事業所のみの実施
住民主体の支援への参入は、訪問型で2事業所(0.8%)、通所型で7事業(2.6%・来年4月予定含む)でした。名古屋市が言う「多様な担い手による新しいサービス」にはほど遠いと言わざるを得ません。

2.低報酬の基準緩和型サービスには97.6%の事業所が見通しを持てていない結果が明らかに

軽度者の受け入れストップや事業縮小・撤退で必要なサービスが受けられなくなるおそれも
(1)基準緩和型事業への参入は、「見通しが持てない」97.6%
基準緩和型の事業は従来の7~8割の低報酬の設定のため、参入については、424件の回答中、「やっていけると思う」は10事業所(2.3%)。「やっていけないと思う」251事業所(59.2%)と「わからない」163事業所(38.4%)を合わせると97.6%が見通しをもてていないという結果でした。
(2)報酬引き下げで、「要支援者を受けない」30.1%、「事業の縮小」16.2%、「事業から撤退」13.7%
報酬が下がった場合の対策では、「要支援者を受けない」とする回答が最も多く全体の30.1%を占めました。
また、「事業を縮小する」(16.2%)、「事業から撤退する」(13.7%)を合わせると3割もの事業所にのぼりました。軽度の人たちへの受け皿不足にもつながり、影響は重大です。名古屋市には3万4千人以上の要支援者がおり、サービス提供に大きな影響を及ぼしかねないことは深刻です。
(3)事業所運営、介護職員不足にも影響が
他に、「その他の経費を削る」21.6%、「人件費を削る」18.4%、という結果も介護職員の人材難=サービス提供体制の維持に深刻な影を落としかねません。制度の見直しが必要なことは明らかです。

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