介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての要請書(2006年10月19日)

2006年10月19日

名古屋市長  松原 武久 様

愛知県社会保障推進協議会
議 長   徳田 秋
名古屋市熱田区沢下町9-7
労働会館東館3階301号

介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての要請書

 小泉内閣がすすめた「構造改革」路線により、医療、福祉、介護、年金など社会保障が毎年改悪され、格差が拡大し、国民のいのちと暮らしが脅かされています。
05年10月からの介護保険の見直しで介護保険施設の居住費や食費の全額自己負担による大幅な負担増の結果、施設より退所する利用者がでています。また、06年4月からの家事援助サービスなどの縮小や新たな介護予防施策による車いすや介護用ベッドの利用制限で、日常生活での移動が不自由になり、閉じこもりなど介護の予防や自立支援から逆行している実態もでています。
障害者も06年4月からの障害者自立支援法による「応益負担」によって、障害者の福祉サービスの断念・抑制によって生活の危機を招いています。
名古屋市は、これまで福祉日本一といわれた福祉施策を「外部評価」によって、次々と廃止・削減し、さらに大幅な福祉の後退をすすめようとしています。私たちは、名古屋市が医療や福祉の切り捨てや民間委託など自治体リストラを元に戻し、住民のいのちと健康、くらしを守るため以下の事項について改善を要請します。

【要請事項】
【1】地方自治法第1条を踏まえて「住民の福祉の増進」を行財政の基本にすえて、医療・介護・福祉など社会保障・福祉の施策充実にむけての基本姿勢を堅持してください。
【2】以下の事項を実現し、福祉施策を充実してください。
1.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
(1)05年10月からの居住費・食費の自己負担に対し、国の軽減措置の拡充と市独自の減免制度を設けてください。また、名古屋市として05年10月以降の介護保険施設退所者の実態調査を実施してください。
(2)要支援、要介護1の方に対する車いすや介護ベッドなど福祉用具の貸与について独自の制度で継続して利用できるようにしてください。
(3)地域包括支援センターへの委託料を公的責任が果たせる水準に引き上げてください。
(4)介護予防のケアプランをたててもらえない利用者を出さないために、地域包括支援センターを日常生活圏(人口2万人から3万人に1ヶ所)に1ケ所設置してください。
当面、「分室」は、介護予防のケアプラン作成など介護予防マネジメントだけでなく、認知症や老人虐待、経済的事由などの困難事例の対応など、地域における高齢者の生活をささえるセンターとして市が分室として、市が責任をもった体制を確保し、運営できるようにしてください。
(5)介護老人福祉施設(特別養護老人ホームなど)の建設など、施設・在宅サービスの基盤整備を早急におこない、介護サービスが必要な人すべてにゆきわたるようにしてください。
(6)介護労働者の研修の実施や処遇が適正におこなわれるよう名古屋市として必要な施策を講じてください。
(2)高齢者福祉施策を充実してください。
(1)住宅改修費への独自の助成制度を実施してください。
(2)高齢者が地域でいきいきと生活し、要介護状態にならないようにするため、地域ではじまっている宅老所やミニデイーサービスなど高齢者の集まりの場など多面的な介護予防のとりくみに対しての財政援助をしてください。また、外出支援のため区内巡回バスを充実してください。
2.国の税制改正に伴う負担増の軽減措置について
(1)公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止など、国の税制改正に伴う国民健康保険料、介護保険料などの負担増を軽減する緊急対策を名古屋市独自でおこなってください。
(2)市独自の減免制度が、同様の理由で受けられなくなった人に対しては、引き続き受けられるようにしてください。
(3)高額医療費や高額介護サービス費などの激変緩和措置については、申請がなくても自動的に実施してください。
3.介護保険の要介護認定者に「障害者控除」の対象者であることを周知徹底するとともに「障害者控除対象者認定書」を個別に送付してください。
4.高齢者医療について
(1)2008年4月から2割負担に引き上げられる70歳以上の高齢者の医療費負担を1割にすえ置くために、医療費助成を実施してください。
(2)福祉給付金の対象者を元に戻すとともに、せめて、市民税非課税世帯のひとり暮らしの老人と介護保険1号被保険者の第1~第3段階の対象者を早急に対象者にしてください。
(3)老人保健制度の「現役並み所得者」の認定にあたっては、課税所得が145万円以上であっても、収入基準(夫婦520万円、単身383万円)に満たない高齢者については、申請がなくても、自動的に「現役並み所得者」から除いてください。
5.子育て支援について
(1)乳幼児医療費無料制度の所得制限を撤廃するとともに、対象を小学校卒業まで拡大してください。
(2)妊産婦の無料健診制度を拡充し、無料の回数を増やしてください。
(3)妊産婦の医療費無料制度を新設してください。
(4)病児保育への助成制度を設けてください。また、病後児保育制度を拡充してください。
(5)就学援助制度を拡充し、申請の受付は、学校だけでなく区役所の窓口でも受け付けください。
6.国保の改善について
(1)保険料の引き上げをおこなわず、減免制度を拡充し、払える保険料にしてください。
(2)国保の資格証明書発行はおこなわず、加入者すべてに正規の保険証を発行してください。
また、むやみに短期保険証を発行しないでください。
(3)保険料を払いきれない加入者の生活実態の把握に努め、加入者の生活実態を無視した保険料の徴収や差し押さえなど制裁行政をしないでください。
(4)加入者の人権やプライバシーを侵害する保険料の通信会社など民間企業への徴収委託はしないでください。
(5)国保の世帯主3割負担を2割負担に戻してください。
(6)国保の一部負担金の減免制度(国保法第44条)を拡充し、区役所や医療機関の窓口に制度のチラシなどをおくよう周知徹底してください。
(7)国保法第58条第2項に基づいて、傷病手当、出産手当制度を新設してください。
7.生活保護にたずさわる経験のある専門職員を増やすともに、市民の申請権を保障し、救済漏れのないようにしてください。
8.障害者施策の充実について
(1)障害者自立支援法による利用者負担に対し、施設での給食費など実費負担を含め独自の減免制度を設けてください。
(2)地域生活支援事業について、移動支援事業での余暇利用時間制限の廃止、相談支援事業の委託先の拡大、日中一時支援事業・作業所型地域活動支援事業への補助金は日中個別給付と同額とすることを含め、サービスの確保を市の責任で実施してください。また、利用者負担を軽減するため独自の制度を設けてください。
(3)障害者医療費無料制度の対象に、精神障害者保健福祉手帳2級も加え、精神疾患以外の医療を含め医療費を無料にしてください。
(4)障害児施設(入所・通園)の利用料、給食費などの負担をなくしてください。
(5)学齢障害児の児童デイーサービスや移動支援などを充実するとともに、利用料負担を軽減してください。
9.健診事業について
(1)基本健康診査およびがん検診の自己負担額を無料にしてください。
(2)子宮ガン・乳ガン・前立腺ガン検診を年1回受けられるようにしてください。
【3】国および愛知県に、以下の趣旨の意見書・要望書を提出してください。
1.国に対する意見書・要望書
(1)年金改定を元に戻し、全額国庫負担による「最低保障年金制度」を創設し、安心してくらせる年金制度を確立してください。また、国民年金保険料滞納者に対し、短期保険証の発行など制裁措置をしないでください。
(2)介護保険への国庫負担を増やして、保険料・利用料減免制度を国の制度として実施するなど負担の軽減と給付の改善をすすめてください。また、介護保険施設入所者などへの居住費・食費の利用者負担を元にもどすとともに、軽度者の車いすや介護用ベッドなど福祉用具の取り上げをやめてください。
(3)医療保険への国庫補助金を増やして、国民および地方自治体の負担を軽減してください。また、条件整備もなく療養病床の廃止・削減をすすめる計画は撤回してください。リハビリの日数制限を撤廃してください。
(4)子育て支援として就学前までの医療費無料制度の創設と妊産婦の健診制度を拡充してください。また、現物給付による乳幼児医療費助成に対し国民健康保険の国庫負担金を減額しないでください。また、就学援助への国の予算措置を復活し、増額してください。
(5)生活保護に対する基準額を引き上げ、「適正化」など申請に対する締め付けをしないでください。
(6)障害者自立支援法の利用者負担の軽減措置を拡充するとともに、施設・事業者に対する報酬単価を改善してください。
(7)健診を保険者任せとせず、国が責任をもって実施してください。子宮がん・乳がん・歯周疾患検診は年1回受けられるようにしてください。
(8)医師、看護師の養成数を増やすとともに、働きやすい条件を確保して医療提供体制を充実してください。
(9)公的年金等控除の縮小や老年者控除の廃止などを元にもどし、消費税の引き上げはおこなわないでください。
(10)地方交付税制度の財源調整機能及び財源保障機能を堅持し、充実させてください。
2.愛知県に対する意見書・要望書
(1)福祉給付金制度を70歳から実施してください。
(2)乳幼児医療費助成制度の対象を就学前まで拡大してください。
(3)削減した国民健康保険への県の補助金を元にもどし、増額してください。
(4)障害者自立支援法の実施に伴う負担軽減策を設けてください。
(5)精神障害者を現行の障害者医療費助成制度の対象に加え、医療費を無料にしてください。

以上

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