社保協ニュース : No.170– 2018.7.15

国保改善運動交流集会を開催

時限措置の激変緩和でなく抜本改善を!
愛知社保協は6月30日(土)、愛知県保険医協会伏見会議室で「国保改善運動交流集会」を開催しました。参加者は、49人で、年金者組合からの参加が多くありました。
神奈川県職員労働組合総連合執行委員長の神田敏史氏から「都道府県単位化で、国保制度はどう変わったのか」と題し、記念講演。
愛知社保協国保対策委員会の日下紀生氏から「都道府県単位化問題と地域での国保改善運動の課題」として基調報告を受けたのち、地域・団体から、この間の取り組みなどについて7本の発言を受け、学習を力に、「18歳未満の子どもの均等割減免実施自治体の拡大」や、県へは「国保単独補助の復活」、署名を積み上げ、秋のキャラバンを通じて自治体へ粘り強く働きかけていく決意を固めあいました。


都道府県単位化で国保制度はどう変わったのか(記念講演) 神田敏史氏

遠路、神奈川から駆けつけていただいた、神田敏史氏は、神奈川県医療保険課で市町村の医療保険事務をフォローするお仕事をされている方です。最近、「新しい国保のしくみと財政」という著作を研究者の方と共著で上梓されています。
冒頭、「国民保健制度は、本当にわかりづらい部分があり、今回の制度改定で一層、わかりにくくなったと感じている。実務を通じて感じていることや、国が国保をどんなふうにしていこうとしているのかということを話ししたい」と、先年の制度改革直前のさまざまな動き、2017骨太方針と厚労省の対応、消費税率引き上げの先送りと2018年度の政府予算、都道府県、市町村の動きなどについて、多くの資料の解説も交えながらも、丁寧な解説で、国が、あらゆる方策を使って社会保障費を切り下げ、かつ、国民負担の増大を企図しているかを明らかにしました。

都道府県単位化問題と地域での国保改善運動の課題(基調報告) 日下紀生氏

社保協国保対策委員会責任者の日下氏は、情勢認識として「制度改革による給付費抑制の全面発動を許すのか、制度改善を進めるのか、今、せめぎあいにある」と、国保の現状が「政府がつくった国保の構造的問題」であることを示しました。
国民健康保険は、かつて、農林水産業、自営業が構成(加入者の大部分)だった国保が、今や大多数は無職の年金生活の方が占め、公的年金が切り捨てられ、削減されていく中で、国保の保険料は上がり、「払える保険料といっても限度があるぞ!」という厳しい加入者の実態があり、国も県も、方向としては保険料統一を目指すが、これまで、自治体ごとの保険者が、独自に様々な施策で保険料の独自減免などを行っていることをふまえ、方向性はあるが、簡単には進まないことは認識していて、その認識は、行政文書の表現ににじんでいることなどを紹介し、私たちの運動として重要なのは、「県内の国保の現状の確認」であるとして、「わが町の保険料がどうなのか、一般会計の繰り入れはどうなのか、この辺りを知るという事が、大事で、社保協としても、自治体キャラバン」に取り組んでいくこと。キャラバンの取り組みの中では、市町村の認識が、国保は相互扶助だと、医療費が増えれば保険料が上がるのは当たり前という理論をふりかざしているが、そうではなく、国民健康保険法第1条では、「国保は、社会保障のひとつである」とはっきりとうたっていて、その趣旨は、国や自治体が責任を負うということで、決して助け合いの制度ではないということを確認していきたい。いまだに、そういうことを言う自治体があれば、改めさせていくことを含めて、取り組んでいこう。と基調報告をしめくくりました。
地域・団体からの報告
①一宮市国保の現状と取り組み 佐藤隆司氏(一宮国保をよくする会)

昨年結成した「一宮国保をよくする会」の一年間の取り組みなどを報告したい。9月議会へ「国保引き下げ請願署名」の提出、10月の学習会で「国保の県単一化の問題と地域の運動の課題」を41名で開催、学習を力に自治体キャラバンや、今後の取り組みを練り上げ、福祉健康委員会に属する一宮市議への要請などを行ってきたものの、今年度からの保険料は赤字を理由に3718円(4.2%)の引き上げとなった。一方、国保運営協議会委員の被保険者委員の一人として会員が選ばれたのはグッドニュースだった。
②大府市の国保改定と子どもの減免制度
山口広文氏(市民によりそい希望のもてる大府をつくる会)

2年前の大府市長選挙を機会に会が発足し、様々な問題を学習し取り組んできた。今年は4月に県の単一化で国保が変わるという事で、社保協から講師に来ていただき学習会を開いたり、市の運営協議会の傍聴を重ねてきた。資産割をどうするのか、所得割が高い、などの議論がある中、18歳以下の子どもの均等割り減免を大府市は実施した。子育て中の世帯の負担を軽減して応援したいと市広報でも掲載されていた。人口減少を食い止めたいという市の狙いもあるようだ。国保については、さらに学習を積み、運動していきたい。
③愛知県と市町村の状況と課題
西田静郎 氏(日本共産党愛知県委員会自治体部)

国保は、「年齢構成が高い」「医療水準が高い」「所得水準が低い」「保険料の負担が高い」と愛知県も認めていて、国は3400億円補填しているというが、「それでは少ない」と全国知事会を通じて、要望を出している。県は保険料が高いことを認める一方で、県独自の補助金を削減を続け、平成25年度で廃止してしまった。補助額に対し、事務負担が多いと理由を言っているが、計算上28億以上出せる制度であるのに係数をいろいろかけて削減してきた。全国的には、補助額を増額してきている自治体があり、愛知県政は県民生活に冷たいと言わざるを得ない。
愛知県の国保運営方針は、「当分の間、保険料の統一はしない」という方針で、これは非常に重要。地域医療水準の格差や、自治体独自の軽減策があり、簡単には統一できないと愛知県が認識しているからだが我々の運動如何によるとこともある。
この間、2自治体の国保運営協議会を傍聴したが、5年間で5割近くの値上げをするという資料が出されていても、委員から「上げ過ぎでは?」「おかしくないか」という声が出ない。一宮の運協で公募の話があったが、これからは、そういう取り組みも必要と感じた。
④愛知社保協「国保アンケート」結果から
島崎宏之氏 (愛知民医連)

昨年取り組んだ「国保アンケート」集計結果の報告。「納めている保険料はいくらか」「保険料は、いくらが適切と思うか」「困っていることは」など11項目の質問で、集計結果から、毎日の生活を脅かすような高い保険料や介護保険料、消費税。こういったものは本当に改善してほしい。そんな切実な声が聞こえてくるような集計結果で、国保改善の願いがはっきり見えたと思う。安心できる国保制度をみんなで作り上げよう。
⑤名古屋市国保の現状
柴田民雄氏(日本共産党名古屋市会議員)

名古屋市議団は、国保の都道府県化にあたり、「保険料を上げるな」と「下げろ」と、本会議においても求め続けてきたが、結果的に「現行の水準と変わりない程度の保険料に」ということで、名古屋市が「負荷率92%」と算出しました。一見、名古屋市は行政として努力をしたかのようにも見えるが、直近の2017年度で3500円近くの値上げをし、今年度295円の値下げと言っても、史上最高水準の保険料であることに変わりはなく。あまり市民負担の軽減になっていない。
現在の20政令市で比較しても高い方から6番目。旧5大都市で比較すると高い方から2番目と、名古屋市の保険料は高い方だ。しかも昨年度より独自繰り入れ額を20億円近く減らしているので、昨年度と同額の繰入額をしていれば、もっと保険料を下げられたのではないかということが、問題として残った。
特別軽減の該当者は、自動的に軽減するように言いづけているが、名古屋市は申請主義の立場を変えておらず、引き続き自動軽減を求めていきたい。愛知県下のみなさんと力を合わせて愛知県全体の国民健康保険料が引き下がるような運動を展開していきたい。
⑥名古屋市国保の現状
滝田幸子氏(名古屋市国保推進委員)

国保推進員は、名古屋市で112人。自転車やバイクで国保の集金や初期未納の世帯を回っている。今は梅雨なので雨合羽がかかせない。
昨年1月から、働き方の内容が変わり、保険料未納世帯や初期未納の世帯に制度の案内をして納付を促すことが主な仕事に。6月は、年度の保険料が決定する月で、収入が昨年より少しだけ増えたり、家族が増えたりして保険料が上がることがあり、保険料が上がることに、納得してもらうことがむつかい。国保加入者が、払いやすい、納得できる保険料となったら良いといつも思っている。
⑦名古屋市の国保改善運動について
津田康裕氏(名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会)

昨年度は、市会へ7項目の請願項目の取り組みをした。署名は1万6000筆以上集まりました。
昨年の取り組みで一番、成果があったと思うのは、独自減免や控除が存続できたこと。自動減免も毎年要望を続けているが、制度をわかりやすく案内したことで、申請する方が増えている。
署名4番目に「資格証明書の発行、無理な差し押さえ」という項目がある。数年前、資格証明書交付世帯の緊急時対応で、医療が必要な時は、短期証を交付させると名古屋市に認めさせたが、認めさせた内容の中に「相当な医療費がかかる場合」とあり、「相当な医療費がかかることが」見込まれないと、短期証を発行しない。そういう応対が、一部のところでされ、これは、まだ解決されていない。先ほど推進員の方の発言でもあったが、保険料は、我々が思っている以上に、負担になっていて、全体的に大幅な保険料の引き下げが必要と考えている。
「(国保料を)下げろ」と言ってくる団体は、名古屋市では我々だけで、他は、誰も何も言わない。その点で、我々の運動は、大きな意義がある。
国保加入の方々は、失業されている方、高齢者、病気の方、非正規で社会保険が無い労働者の方で約8割を占めているのに、運動の広がりが、そういう方々に広がっていない。いろいろ知恵を絞りながら広げていく必要がある。ぜひ、広がりを作って進めていきたいと思う。
◆報告のまとめと閉会あいさつ◆
保険医協会日下氏から、神田氏の講演や7つの報告を振り返りつつ、市町村を通じた運動で、保険料がどうなるか。自治体独自の繰入は、減免制度はどうするのか、そういったことを要望していくことが大事であることが強調されました。集会の最後に、年金者組合の小室さんから閉会挨拶があり集会を終えました。

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