社保協ニュース : No.172– 2018.8.15

要介護認定事務センター化と民間委託化の問題―名古屋市健康福祉局懇談

認定事務遅延に謝罪の言葉を並べるも 要請には、ほぼゼロ回答

愛知社保協は7月18日(水)、名古屋市役所本庁舎で、要介護認定事務のセンター化による認定事務の大幅な遅延について、健康福祉局との懇談を行いました。懇談には、名古屋市から6人、社保協からは10人が参加しました。日本共産党名古屋市議団から3人が同席しました。
懇談の冒頭、名古屋市側から、市の出席者について簡単な紹介と挨拶があり、続いて、武田社保協副議長から、要介護認定事務集約化について、社保協として要請した内容や、市側の回答も含め経過が確認されたのち、市側の回答および懇談となりました。
社保協では、利用者・事業者の損失を具体的に調査し、集団損害賠償請求も視野に取り組んでいきたいと考えています。


要請事項
1.要介護度認定事務の遅延が全市的に介護事業所と市民に悪影響を及ぼしています。「広報なごや」、および、名古屋市のホームページで謝罪と今後の改善策を明らかにしてください。
2.今もなお遅延が解消されておらず、対応の業者任せは許されません。名古屋市として早急に現状を掌握し、責任を持って遅延解消の期限と具体的な改善策を示してください。
◆名古屋市回答◆
口頭で謝罪の言葉があるものの、広報などへの掲載は無回答
遅延原因は、センター立ち上げ時の態勢不足が主因。電話本数・人員体制を増強

<名古屋市> 実施1年前にも懸念を伝えられていたにもかかわらず、混乱を招いてしまった。まずは、お詫びを申し上げたい。
多くの事業者、実際には介護サービス利用者が不便な思いをしていることは、申し訳ないという思いだ。現在、認定期間が、大幅に伸びているが、短縮に向けて取り組んでいるところだ。前回懇談でも指摘されたが、「電話がつながらない」という事案は、委託事業者の方で当初12回線の電話回線を大幅に増やした。5月末に46回線、7月当初にも10回線増設し、現在56回線で対応している。(回線増設前の)何度かけてもつながらないということは、解消されている。人員も当初の80名程度から、現在127名、1.5倍程度にし、それに加えて他地域から応援も入っている。まだ遅いというご指摘もあると思うが、(遅延)解消に向け進めているところだ。

<社保協>前回懇談では、認定結果の遅延原因を調べるということだった。どこに問題があるのかということをチェックすると。そのあたりはどうか。

<名古屋市> 体制が上手く回らなかった。(4月からの委託化では)すぐには体制ができず、クレームを招いたと考えている。中でも認定決定をしても、そのあとの流れが上手く流れない。回らない。認定審査で区役所で審査会を開いて審査するが、4月、5月は審査件数が多くはかけられなかった。
審査会の資料、認定書、一次判定の書類、主治医意見書といったものが、中身をチェックしてから審査会にかけるところだが、例えば、担当ケアマネさんに「もう少し詳しく教えていただけないか」などの問い合わせも電話回線数の不足もあり、電話もできないという状況で遅れが生じていた。今は体制も強化し、事務処理も回り始めた。6月11日以降の審査会からは、一度の審査会で審査する上限の45件を審査している。結果がすぐには出ないと思うが、さらなる改善をしている状況です。

<社保協> 名古屋市が遅延の解消に向けて、努力している状況はわかった。しかし、このような混乱が生じた原因、たとえば電話回線は12回線を現在56回線まで増やした。人の体制も応援を含めて、実質1・5倍にした。そうしないと回らなかったということですよね。それは当初の見込みが、どういう設定でそのような大きな食い違いができたのか。

<名古屋市> 遅れをとりもどすということで、委託業者にはより厚い体制にしていると思うので、今の体制をそのまま継続するかどうかは、ある程度遅延が解消してくれば、そこまでの体制は必要ないじゃないかと考えている。今は遅れを取り戻すということで、委託業者の方と話しながら行っている状況だ。一概に比較できないが、他都市での委託実態をみながらやっているが、見込みが大きく違ったためにクレームを招いてしまったと思う。

<社保協> 去年の段階で「自信をもって、利用者に迷惑をかけないんだ」と、(名古屋市当局が)自信をもって言われた。それだけ自信をもって言われたのなら、(私たちは、名古屋市が)万全の体制をとっていると考えていたが、ふたを開けたらこんな結果で、実際にはできていなかった。今後の委託契約は、見直しも含めてどう考えているのか。

<名古屋市> 委託先とは年間申請件数のうち、新規件数、更新件数、区分変更件数の予測、毎年これくらい増えていくという予測を示し、それに対応した体制をとるという契約を結んでいる。4月になって、全然回っていないということなので、回るように遅れを解消すべく体制もとってもらう。

要請事項
3.要介護度決定遅延による“暫定サービス提供プラン”よりも“決定”が下がった場合は、認定日まで以前の介護度利用を認め、市の責任で事業者・利用者に実害が及ばないようにしてください。
◆名古屋市回答◆
謝罪の言葉はあるが、事業者・利用者への実害補償は、否定。

◆要介護から要支援になった事例
<社保協 参加者>ケアマネをしています。私のお客様で、あの後(前回の懇談後)言われまして。4月26日に申請して、本来なら5月中に出るのが、6月12日付で、認定結果、要介護2から要支援2になりました。その間、(要介護2のまま)通常通りのサービスを使いました。6月1日から12日までの間は、要支援2ということで、その方のサービス内容は、毎日のようにヘルパーが入らないとやっていけないからです。この12日間のサービスに対して、どうしてくれるのかということです。
本来、5月31日までに結果が出れば、6月1日以降の結果で、やらせていただくんですが、6月12日に「要支援2」ということが判明し、どうするのかということです。(その方の契約先の)事業所は、「要介護でなければ、私たちは関係ないから、契約しません」とまで言われました。そこで、私は事業課へ連絡して「契約しないと言っているが、契約しなくていいのか?」と確認する必要がありました。
まずは、(認定)結果がなかなか出ないということで、「暫定」で担当者会議を行い暫定プランを作った。認定結果は「要支援」です。だけど区変をかけますので、「要介護」「要支援」両にらみで2つの担当者会議をやることになります。そういうふうに、私たちが非常に時間、手間をかけるようなことが、今起きている。はっきり言って、これだけの回数を私たちがやるというのはいかがなものかと思うが、実際に、6月15日にその方の区分変更をかけていますが遅延しますと返事がきて、「(認定結果は)8月9日です。」と。そういうズレがどんどん、どんどん出て、それに対してケアマネ業務が非常に煩雑になっている。ついでに言わせていただくと、今要介護の方が、要支援に変わってきている。とくにデイケアは要支援は必要ないと、要介護から要支援になる方が、4月以降10人、20人と出ている。それはデイケアで私たちが頑張ったから、要介護から要支援になったということなら仕方ないけれど、それでは説明がつかない方が要支援になっている。ベッドははずせない方なのですが、要支援になってしまい、あわてて「例外給付だ」と(申請を)かけている。そういう負担が事業者にかかっているのは、ご存知か?

<名古屋市> (もうしわけなさからなのか、声も小さく、よく聞き取れない。)ケアマネジャーのみなさんをはじめ事業所の方には、ご迷惑をかけている…。申し訳なく思っている。

<岡田市議> 少なくとも、認定期間中に(間に合って)要支援2(の結果が出た)としても、認定が出ていれば、6月1日からのプランを要支援2に合わせて、つくることができたのに、遅延したことによるこの12日間を誰が責任を持つか。というのは、遅延の責任は名古屋市が委託化したことによるのが原因なので、認定会議に出るというのは(間に合っていても)あるかもしれないので、仕方がない場合もあるのは理解できるが、今回の問題は、期限が過ぎた責任は名古屋市にある。事業者や利用者の負担とならないように検討できないのか。

<社保協> この実害は、名古屋市は考慮してください。と5月にもお話しています。

<名古屋市> 認定日を申請日までさかのぼるというのは、できない。(遅延により、こういう問題が起こり)大変、もうし分けなかったが、今はだいぶ改善してきている。

<社保協 参加者(ケアマネジャーB)> 名古屋市が説明しているように、確かに新規申請は早くなっているという気がするが、ただ、通知が届いてご家族から連絡が入って通知を取りに行く。そこから申請をする。土日にかかるところなので、どうしても通知を取りに行って届け出を出す。で、7月5日(木)くらいに届け出を出して、こちらに届いたのが11日(水)だったんですね。即日と言われていたのですが、やはりこれまでとはそこに差がある。そこから認定調査をしてと、やはり無理がどうしても生じてくる。(これまで)私たちが届け出を出したら、通常は(区役所で)届け出をだせばその日にもらえるというふうに、そのブランクが1週間は必ず出るという状況になっている。通知のやりとりを郵送でするのが、本当にいいのかわからないが、できればそこを速めていただきたい。
「通知を出す」「届け出を出す」そこだけでも速めていただけると、スムースに行くのかなと思う。
例えば7月の末に切れる方々は、7月の初めに結果は「8月になります」「8月になります」と、すでに(遅れるという連絡が)来る状態になるので、やはり1か月、2か月はかかる。ケアマネとしては、暫定プランを立てるしかないということでやっている。2度手間だが、サービスが始まる前にプランをたてましょうというのが決まりなので、しかたがないところもあるが、実際は結果が来て、もし軽度で出たら、もう一回プランを立て直しと、通常ならば7月中に結果が来たら、その結果に基づいてプランを立てて新規のプランで算出したいところだが、本当に2週間、3週間結果が遅れるだけで、ケアマネとしては厳しいところです。月の訪問も含めてということなので、そのあたりを本当に、「速める」「速める」とは名古屋市はおっしゃっていますが、そのあたりの見直し、改善していただけるといいと思う。
「新規」の方は、本当に早く出るようになったという印象がある一方で「更新」に関しては、「新規」「区分変更」「更新」という順番だそうですが、通常の仕事の中では、私たちは「更新」が常日頃の仕事なので、その部分の最初の取り掛かりをなんとか改善してほしい。

◆要介護から要支援になった事例2
私のところでも要介護から要支援になったという方がいました。その方は3月に更新手続きし、通常なら4月末に結果がでる方でした。実際更新申請をして、その時点では、割に軽度だったかなと担当ケアマネは言っていたが、そのあと転倒して圧迫骨折で入院し、一人暮らしなので、やはり状況的には難しいと、いったんそれを取り下げた。圧迫骨折なので入院している圧迫骨折の状態をみて、取り下げた内容から、もう一回4月26日に再更新を出してくださいということで出しました。
入院していて、ギリギリまで状態をみてから申請したが、結果は6月中旬に「要支援2」。びっくりしました。問い合わせると「改善されると思うので、要支援2が妥当」という判定だった。今入院していて介護が必要な状況なのにと、認定調査の結果でも要介護1は出ると時間もかかっている状況だったが、その方は更新だったので、5月から要支援2になってしまった。退院して要介護2のサービスを1カ月半つかってしまっている。そこはヘルパーさんが60分、通常であれば週2回。というプランでした。

<社保協> 去年の3月は、そういう迷惑はかけないと。職員の技術、資質向上に役立って市民のみなさんに喜んでいただけると思うと、前課長さんは回答していた。私たちは、その時に「名古屋市の職員の力量として介護保険に携わる職員が居なくなることは、むしろ不利益の方が大きいのではないか」と申し上げましたけれども、当時の課長さんは「(それを)しのぐ」とおっしゃいました。大変、素晴らしいなと思って聞いておりましたけれど、まぁ、そういうことなんですね。現実にそういう問題が起こっていて、前回の4月29日に参加いただいた、今日は参加してない在宅懇とか、生協の方とかいろいろな団体の方が参加していましたが、共通の問題となっていますので、これは事業者さん、利用者さんともに害を受けると言えますので、河村市長に英断をしてもらいたい。

<岡田市議>  これは、法令上、そういう決まりになっている?

<柴田市議> 全国共通のルール?

<名古屋市> そういうことです。

<社保協>  全国で起こっている問題じゃなく、これは名古屋市で起こっているので、名古屋市独自で判断するのは合理的な判断だと思うが。

<名古屋市> できない。認定が早く出るように努力をしていく。

要請事項
4.更新認定申請の受け付けは、「郵送」だけでなく各区役所での受理もおこない認定調査委依頼書及び暫定保険証を同時に発行してください。
◆名古屋市回答◆
事務が煩雑になるので、難しい。現状はできない。将来的には検討も。
要請事項
5.名古屋市は、今回のセンター化による事態を収拾するため、業者との委託契約を見直し、市の直営にもどしてください。

<社保協>要請4.5にかかわるが、市がもっと弾力的な取り扱いをするべきではないか。将来的にもセンター化を続けていくのか? これまでの名古屋市の良いところは、そのまま引き継ぐことはできないか。人員体制も電話の本数も、今特別な体制でやっている。(委託化・センター化は軌道にのるのだろうか?元に戻すことを)検討していただきたい。

<名古屋市> 団塊世代が介護が必要となってくる2025年問題があり、今後介護認定の申請件数が増大する予測がある。それに対応するためのセンター化であるので、ご理解いただきたい。本当にみなさんにご迷惑をおかけし申し訳ないが、必要な体制を見通して準備をしている。いろいろなご意見があり、そういったご意見をうかがいながら進めていきたい。

要請事項
6.介護職員処遇改善加算の申請に対し、決定通知が遅れ不利益が生じないようにしてください。

<社保協> 最後、6番のところは、調べて回答いただくということでしたが。

<名古屋市> 条件に合致しない限りは、申請を受理しないということはない。
むしろ、処遇改善のために事業者の方に取ってほしい。なるべく、取れるような形でやり取りをさせていただいている。

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