介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての陳情書(2013年9月10日)

2013年9月10日

愛知県知事 大村秀章 様

(陳情団体)愛知自治体キャラバン実行委員会
代表者  森谷 光夫
名古屋市熱田区沢下町9-7
労働会館東館3階301号

【趣旨】
昨年8月に野田内閣のもとで民主・自民・公明3党合意で強行された社会保障・税一体改革は、年末の政権交代によって発足した安倍内閣に引き継がれました。これによって今年8月からの生活保護費の引き下げ、10月からの年金引き下げを突破口として、いよいよ社会保障の改悪が国民生活に重くのしかかろうとしています。
さらに社会保障制度改革国民会議の報告を盾に、2013年度は70~74歳の高齢者の医療費一部負担引き上げや、介護保険からの軽度者の切り離しなどの介護保険の給付範囲の縮小が推し進められようとしています。
さらに消費税増税がのしかかれば、安倍内閣が目玉とする「アベノミクス」は国民の所得を増やすことにつながらず、多国籍化した大企業と一部資産家に富を集中させ、国民の「格差」を一層大きくするものとしかなりません。
安倍内閣が進める社会保障改革の基本は、国の責任を放棄し「自助」「共助」の名の下に、その責任を国民と地方自治体に押し付けるものです。
私たちは県民の暮らしを守り改善する要求を掲げ、市町村に要請し、多くの要望を実現していただきました。特に愛知県の福祉医療への一部負担金と所得制限の導入に向けての見直しについて、県民世論や多くの自治体の意向を反映し、「一部負担金を導入しない」と決断されたことは歓迎します。
ひきつづき政府の社会保障改悪に反対し、住民の命とくらしを守るため以下の要望事項について、実現いただきますよう要請します。

【陳情事項】
【1】自治体の基本的あり方について
①憲法、地方自治法などをふまえて、住民1人1人が人間としての尊厳が保障され、健康で文化的な生活を送れるように自治体の施策を進めてください。
②「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の目的に沿って、国の施策に左右されることなく、住民の利益への奉仕を最優先してください。
③徴税を強める愛知県地方税滞納整理機構については、徴税は自治体の業務であることをふまえて、滞納整理機構に税の徴収事務を移管しないでください。参加していない市町村は今後とも参加しないでください。税滞納世帯の解決は、住民の実情をよくつかみ、相談にのるとともに、地方税法第15条(納税緩和措置)の適用をはじめ、分納・減免などで対応してください。

【2】以下の事項を実現し、市町村の福祉施策を充実してください。
1.生活保護について
①生活保護の相談・申請にあたっては、憲法第25条および生活保護法第1条・第2条に基づいて行い、申請書を渡さない、親族の扶養について問いただすなどして相談者・申請者を追い返す、違法な「水際作戦」を行わないでください。生活保護が必要な人には早急に支給してください。
②埼玉県三郷市での裁判判決も踏まえ、申請権を保障してください。申請時に、違法な助言、指導実態を無視した就労指導の強要はしないでください。就労支援の一環として自治体で仕事を確保してください。また、枚方市自動車裁判判決をふまえ、生活および仕事で自立のために必要な場合は保有を認めることを「しおり」等に記載してください。
③国による生活保護費の引き下げに対しては、自治体の責任で受給者の生存権を守る措置を講じてください。
④就労支援や生活指導を個別に丁寧に行うために、ケースワーカーなど専門職を含む正規職員を増やしてください。担当者の研修を充実してください。
⑤弱者の生存権侵害につながりかねない警察官OBの生活保護申請窓口等への配置はやめてください。
⑥国による生活保護費の引き下げに対して、生活保護費と連動する諸施策の基準引き下げが起こらないよう措置を講じてください。

2.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
①一般会計からの繰り入れで介護保険料を引き下げてください。なお、介護保険料段階は、多段階に設定して、低所得段階の倍率を低く抑え、応能負担を強めてください。
②低所得者に対する介護保険料の減免制度を実施・拡充してください。
③低所得者に対する利用料の減免制度を実施・拡充してください。
④介護保険による介護予防サ-ビス及び地域支援事業を充実してください。要支援者を介護保険からはずす「介護予防・日常生活支援総合事業」は実施しないでください。
⑤行き場のない高齢者をなくすために施設の基盤整備については、民間の高齢者サービス住宅等より特別養護老人ホームや小規模多機能施設など施設・居住系サービスを大幅に増やしてください。基盤設備が円滑に進むよう、低所得者・医療依存度の高い利用者の入所が確保できるよう助成制度を設けてください。
⑥地域包括支援センターを中学校区毎に設置し、最低1カ所は市町村直営としてください。また委託されたセンターの職員が責任もって働き続けられるよう委託費を引き上げてください。
⑦介護・福祉労働者を確保するために、適正な賃金・労働条件および研修について、財政的な支援をしてください。

(2)高齢者福祉施策の充実について
①高齢者が地域でいきいきと生活するために、以下の施策を一般会計で実施してください。
ア.ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策を充実してください。
イ.高齢者や障がい者などの外出支援のため地域巡回バスや福祉バスなどの施策を充実してください。
ウ.宅老所、街角サロンなどの高齢者の集まりの場への助成金制度を拡充し、高齢者がねたきりにならないよう多面的な福祉施策を実施してください。
エ.高齢期になっても住み続けることができるバリアフリーの高齢者住宅を公営で整備してください。
②配食サービスは、最低毎日1回は実施し、助成額を増やし自己負担額を引き下げてください。また、閉じこもりを予防するため会食(ふれあい)方式も含め実施してください。
③住宅改修費、福祉用具購入費、高額介護サービス費の受領委任払い制度を実施してください。

(3)障がい者控除の認定について
①介護保険のすべての要介護認定者を障がい者控除の対象としてください。
②すべての要介護認定者に「障がい者控除対象者認定書」または「障がい者控除対象者認定申請書」を個別に送付してください。

3.福祉医療制度について
①福祉医療制度(子ども・障がい者・母子家庭等・高齢者医療)を縮小せず、存続・拡充してください。
②子どもの医療費無料制度を18歳年度末まで現物給付(窓口無料)で実施してください。
③障がい者医療の精神障がい者への補助対象を、一般の病気にも広げてください。
④後期高齢者医療対象者のうち住民税非課税世帯の医療費負担を無料にしてください。当面、福祉給付金(後期高齢者福祉医療費給付)制度の対象を拡大してください。

4.高齢者医療などの充実について
①後期高齢者及び国保の高額医療・高額介護合算療養費は、該当者に個別に申請書を送付してください。
②後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対し、生活実態を無視した保険料の徴収や差押えなどはしないでください。また保険証の取り上げ・資格証明書の発行をしないでください。短期保険証は、発行しないでください。
③後期高齢者医療制度を選択しない65~74歳の障がい者にも、障がい者医療費助成制度を適用してください。
④後期高齢者の健康診査事業の補助金を増額して出してください。

5.子育て支援などについて
①妊産婦健診は、初回の健診はもちろんのこと、産前14回、産後1回を無料で受けられる恒久的な制度にしてください。
②就学援助制度の対象を生活保護基準額の少なくとも1.4倍以下の世帯までとしてください。生活保護基準引き下げにより、現在の対象者が縮小とならないようにしてください。申請の受付は、学校だけでなく市町村の窓口でも受け付け、申請手続きに民生委員の証明が必要な場合はなくしてください。また、年度途中でも申請できることを周知徹底してください。支給内容を拡充してください。
③義務教育は無償の立場から学校の給食費は無料にしてください。
④放射線被ばくから子どもを守るため、食の安全管理を万全にしてください。
⑤女性、特に妊産婦や高齢者に配慮した避難所に改善してください。
⑥児童虐待の未然防止、早期発見に努めてください。そのために効果的な対策を講じると同時に必要な職員を配置してください。

6.国保の改善について
①国民健康保険制度の都道府県への運営移譲に反対してください。
②保険料(税)について
ア.これまで以上に一般会計からの繰り入れを行い、保険料(税)の引き上げを行わず、減免制度を拡充し、払える保険料(税)に引き下げてください。
イ.18歳未満の子どもについては、均等割の対象としないでください。当面、一般会計による減免を実施してください。
ウ.前年所得が生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対する減免制度を設けてください。生活保護基準引き下げにより、現在の対象者が縮小とならないようにしてください。
エ.所得減少による減免要件は、「前年所得が1,000万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」にしてください。
③保険料(税)滞納者への対応について
ア.資格証明書の発行をやめてください。とりわけ、18歳年度末までの子どものいる世帯、母子家庭や障がい者のいる世帯、病弱者のいる世帯には、絶対に発行しないでください。なお、義務教育修了前の子どもについては、窓口交付だけでなく、郵送も含め1枚も残すことなく保険証を届けてください。
イ.滞納者に対し給付の制限をしないでください。滞納があっても施行規則第1条「特別な事情」であることを申し出れば保険証を即時発行してください。
ウ.保険料(税)を支払う意思があって分納している世帯には正規の保険証を交付してください。万一「短期保険証」を発行する場合でも、有効期限は最低6カ月としてください。
エ.保険料(税)を払いきれない加入者の生活実態の把握に努め、加入者の生活実態を無視した保険料(税)の徴収や差押えなど制裁行政をしないでください。また、無保険者の調査を実施してください。
④一部負担金の減免制度については、生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対しても実施してください。生活保護基準引き下げにより現在の対象者が縮小とならないようにしてください。また、一部負担金の減免制度を行政や医療機関の窓口にわかりやすい案内ポスター、チラシを置くなど住民に制度を周知してください。

7.障がい者・児施策の拡充について
①障がい福祉サービス・自立支援医療・補装具の利用料負担、施設での食費・水光熱費などの自己負担、市町村が行う地域生活支援事業の利用料負担を、課税世帯を含めてなくす補助制度を創設してください。
②障害程度区分にかかわらず、障がい者・児が必要とする時間を支給できるよう市町村へ伝えてください。
③市町村の実施する移動支援を、通所・通学にも利用できるよう、県として市町村に事業補助してください。
④65歳以上の障害者や16疾病のある40歳以上の障害者が、それまでの生活を維持・継続できるよう介護保険サービスを一律に優先させることなく、本人意向にもとづいた障害福祉サービスが利用できるようにしてください。
⑤65歳以上の障害者や16疾病のある40歳以上の障害者が障害福祉サービスから切り替えられる介護保険サービスの利用料を、障害者総合支援法の軽減措置と同様に、住民税非課税世帯からの利用料徴収をやめてください。
⑥避難所のバリアフリー化をすすめてください。集団での避難生活が困難な障がい者・児、特別な介護を含む援助が必要な障がい者・児や高齢者を対象とした、個室対応も可能とする福祉避難所を設置してください。
⑦地域の防災関係者が「災害時要援護者」の情報共有ができるようにするとともに、一定の条件の下に、障がい者団体や支援団体等にも情報を開示してください。また、地域での情報喪失も想定し、福祉圏域間での共有、県との共有を考えてください。

8.健診事業について
①特定健診、がん検診、歯周疾患検診は、年1回無料で受けられるようにしてください。また、対象者へ個別通知をしてください。
②40歳未満の住民を対象に、特定健診に準じた一般健康診査を、年1回無料で受けられるようにしてください。

9.予防接種について
①高齢者用肺炎球菌、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、B型肝炎、ロタウィルスワクチンの予防接種を無料で受けられるようにしてください。
②妊娠を希望する夫婦及び妊婦の夫を対象とした風疹ワクチン接種は、無料で受けられるようにしてください。

10.県民の医療を守るために
①コロニー中央病院を障がい者・児の専門医療機関として拡充してください。また、県東部地域にも同様の医療機関を設けてください。
②南海トラフ巨大地震に対し、県内の災害時医療体制を確立・充実してください。とりわけ、災害拠点病院がその機能を発揮できるように、財政的援助も含め充実してください。
③平均在院日数の短縮を名目とした機械的な退院の押し付けや在宅化はやめてください。
④補助金の充実も含めて、救急医療体制の充実をはかってください。
⑤県立病院については、民間病院や他の公立病院との機能分担、役割分担ではなく、県民医療全体に対する役割を堅持し、より一層充実させてください。
⑥厚労省通知「看護師等医療従事者の『雇用の質』の向上のための取組について」に基づいて看護師等医療従事者の勤務環境の改善を図るとともに、看護師の大幅増員を図ってください。

【3】国および愛知広域連合に、以下の趣旨の意見書・要望書を提出してください。
1.国に対する意見書・要望書
①平均6.5%とされる生活保護基準の引き下げは行わないでください。生活保護申請者を役所の窓口で追い返す「水際作戦」を合法化し、親族の扶養を要件にし、孤立死、餓死を増大させる生活保護法の「改正」をしないでください。
②消費税増税を中止してください。
③年金2.5%切り下げをやめてください。高齢者も若い人も共に役立つ最低保障年金制度をつくってください。当面、国庫負担部分の3.3万円をすべての高齢者に支給し、無年金者を無くしてください。社会保険庁職員の分限免職をすべて取り消してください。
④国民健康保険の都道府県への運営移譲は行わず、国庫負担を増額してください。70~74歳の医療費の窓口負担2割への引き上げをしないでください。医療保険の患者負担を軽減してください。また、後期高齢者医療制度を廃止し、元の老人保健制度に戻してください。
⑤介護保険への国庫負担を増やして、負担の軽減と給付の改善をすすめてください。軽度者外しはやめてください。生活支援の「45分」への時間短縮を元に戻してください。介護・福祉労働者の処遇を改善し、働き続けられるようにしてください。
⑥子どもの医療費無料制度を18歳年度末まで現物給付(窓口無料)で創設してください。現物給付による子どもの医療費助成に対し国民健康保険の国庫負担金を減額しないでください。妊産婦健診の補助金を拡充し、恒久措置としてください。
⑦東日本大震災で明らかとなった公立病院・公的病院の役割が充分発揮されるよう、病院の統廃合・病床削減をやめて、ペナルティーなしの地域医療再生のための交付金を支出してください。また、地域医療充実につながるような診療報酬改定を行ってください。
⑧障がい者・児が生きるために必要な福祉・医療制度の利用料負担、実費負担を撤廃してください。障がい福祉サービス利用者が、介護保険で要支援と認定された場合、従来の障害福祉サービス利用が大きく制限されることなどから、介護保険制度を優先する仕組みを改め、障がい者本人の必要性に応じて障がい者施策と介護保険制度を選択できるようにしてください。
⑨高齢者用肺炎球菌、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、B型肝炎、ロタウィルスワクチンの任意予防接種を定期接種としてください。

2.愛知県後期高齢者医療広域連合に対する意見書・要望書
①愛知県に健康診査事業への補助を増額するように要請してください。
②低所得者に対する保険料および一部負担金の独自の減免制度を設けてください。
③保険料滞納者への保険証取り上げ・資格証明書の発行は行わないでください。
④高齢者用肺炎球菌ワクチンへの助成を増額してください。
⑤後期高齢者医療制度に関する懇談会の委員に公募枠を設けてください。

以上

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