2009年 愛知自治体キャラバンのまとめ
2010年1月/愛知自治体キャラバン実行委員会
1.名 称
「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」
2.主 催
愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部
3.日 程
2009年10月28日(火)~30日(金)
※愛知県とは11月12日(木)に、名古屋市とは11月11日(水)に実施
4.要請相手とコース日程
愛知内58市町村を5コースで実施
(春日町と小坂井町はアンケートのみ)
コース | 主な地域 | 責任団体 | 宣伝カー |
---|---|---|---|
第1 | 尾西・海部 | 年金者組合 | 名古屋市職労 |
一宮・稲沢 | 一宮社保協 | ||
第2 | 尾北・尾東・尾中 | 自治労連 | 自治労連 |
第3 | 知多・尾東 | 社保協 | 保険医協会 |
第4 | 西三河 | 愛労連 | 愛労連 |
新婦人 | |||
第5 | 東三河 | 自治労連 | 豊橋市職労 |
東三河労連 | |||
事務局4団体 |
5.参加状況
※( )内は昨年参加者数
①各コースの参加者総数は延べ869人(805人)だった。そのうち共産党議員は87人(89人)だった。その他、愛知県との懇談に23人参加。自治体側の参加者は547人(507人)だった。首長1人、副首長7人(5人)、部長は15市町村22人(24市町村34人)参加。愛知県は20人参加。主に、福祉・保険・医療の課長・次長など担当者が対応した。
②各団体の参加状況は、延べ参加数で多い順に並べると次の表のとおり。
団体名 | 延べ人員 |
---|---|
年金者組合 | 166(167) |
自治労連(名古屋市職労含む) | 146(136) |
保険医協会 | 122(100) |
新婦人 | 96(107) |
愛商連 | 60( 43) |
愛労連(医労連・地域労連含む) | 56( 74) |
民医連 | 46( 54) |
③昨年同様、年金者組合や自治労連、はじめ新婦人、愛商連など地域で運動している団体からの参加が定着してきている。
地域から地域社保協、介護の会、9条の会など地域の民主団体など延べ90人が参加した。
東三河山間部は事務局団体と東三河労連が協力し今回も取り組んだ。
6.事前学習会の取り組み
事前学習会は、要請事項の学習や地域の具体的要求の検討をするため全地域での開催を目標に取り組んだ。結果、昨年の16地域から今年は17地域で開催し、昨年の倍近い244人(昨年125人)が参加した。
例年より一週間遅れのキャラバン日程であったため、陳情書への文書回答・アンケート回答も準備でき、地域の到達状況もつかんだ学習会になった。
今後、地域での状況にそった学習会を開催するために、地域の到達状況と回答の検討などとあわせ、地域で懇談当日の重点や発言者などの準備をはかることが必要である。自治体毎の学習会の開催、そのために必要な講師団の養成などが求められる。
開催地域(開催地) | 開催日 | 参加者数 |
---|---|---|
東三河(豊橋) | 10/15 | 17人 |
西三河(知立) | 10/20 | 9人 |
(豊田) | 10/14 | 9人 |
(西尾) | 10/23 | 14人 |
(岡崎) | 10/ 8 | 12人 |
(安城) | 10/12 | 14人 |
知多(半田) | 10/15 | 8人 |
(東海・知多) | 10/ 9 | 11人 |
尾張東(瀬戸) | 10/10 | 8人 |
(長久手・日進) | 10/20 | 12人 |
尾張中部(春日井) | 10/ 9 | 15人 |
尾張北(江南) | 10/23 | 9人 |
(岩倉) | 10/20 | 19人 |
(犬山) | 10/21 | 8人 |
尾張西(一宮) | 10/20 | 15人 |
海部津島(津島) | 10/ 1 | 25人 |
名古屋(愛商連) | 10/ 9 | 11人 |
保険医協会 | 10/22 | 18人 |
名古屋地域 | 11/ 5 | 10人 |
合計 | 17地域・244人 |
7.懇談の重点項目とアンケート・回答
①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように重点項目を決めた。要請事項もすでに多くの市町村が実施している施策はアンケートにまわした。
②さらに、住民が安心して暮らしていける自治体の施策の充実、特に2009年10月から介護保険の再度「見直し」による新基準の要介護認定や障害者控除の認定、子育て支援などの改善を要請した。また、国保の保険料(税)の未納者に対する資格証明書や短期保険証発行問題では、子どもや病弱者に対しては「特別の事情」で直ちに正規の保険証の交付を要請した。
③情勢を反映し、就学援助や生活保護問題とあわせて、肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンの接種費用の助成制度を新たに要請した。
④要請項目についてのアンケート・文書回答について、今回もキャラバンの事前学習会で活用できるように約1カ月早く準備した。アンケートはすべての市町村から、文書回答は昨年同様97%の市町村から提出されたが、今回新たに、豊橋市が他団体との整合性を理由に回答書が事前に届かず、懇談後となった。改善が必要である。豊田市と三好町は、昨年同様文書回答がなかった。
⑤国と県に対する意見書採択は、飛島村で、「安心して暮らせる年金制度」と「後期高齢者医療制度の廃止と国保の財政措置を求める」意見書が採択された。また、設楽町では、「安心して暮らせる年金制度」「介護保険の抜本的改善」「安心して子育て出来る制度」「社会保障削減撤回」「障害者自立支援」の各意見書が採択された。
8.要望項目に対する到達点
30年を迎えた自治体キャラバンや地域の運動で高額療養費や出産育児一時金の受領委任払いの実施、子どもの医療費無料制度の拡大、妊婦健診の助成回数の拡大、福祉給付金制度の窓口無料化などの改善とあわせて、障害者控除の認定書発行が前進し、市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たすとともに、国や愛知県の制度を前進させてきた。
1.自治体の基本的あり方
今年は、新しい政権のもとで自治体の基本的あり方について、憲法25条と地方自治法1条をふまえた行政運営と併せて、この間の各種交付金について雇用や介護職員の処遇改善など住民にとって必要な施策の積極的な活用と施策の継続を求めた。
「法の趣旨を踏まえる」としつつも「総合計画で各施策を展開」の回答が多くの自治体でみられた。各種の臨時交付金についても「全国市長会を通じて」「地方6団体を通じて」と回答し、「独自の努力は財政的に無理」の回答が多数であった。
行政サービス制限条例は、東海市、大府市、半田市以外は「考えていない」「予定はない」との回答だった。
2.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
制度発足から10年目を迎える介護保険制度は、この間の居住費や食費の全額自己負担化(所得による軽減あり)、介護用ベッドや通院・生活支援などのサービスの利用制限による「介護の取り上げ」がおこなわれた。
2009年4月からは、利用者不在の要介護認定制度の「見直し」が実施され、現場の改善の声に再度の「見直し」が行われたが、利用者不在の実態は改善されていない。このままでは、利用者は懐具合で利用が制限され、低所得者には「選択」の自由もない。
①介護保険料について
2009年4月から県内平均で月額3,721円から3,766円へと1.2%(45円)の引き上げとなった。2009年度の見直しで介護保険の「黒字分」を保険料の引き下げや減免制度の改善など制度改善に還元するよう要請した結果である。
新たな減免制度の実施はなく減免実施市町村が合併で32市町村(53.3%)となっている。
減免に対する「3原則」の撤廃とあわせ国の負担をせめて「20%+調整金5%」から「25%+調整金5%」に早急に改善させることが必要である。
また、第3期準備基金残高と第4期への繰り入れの実態は、残高と繰り入れ額が22自治体で同額になっている。第4期に残高として残したのは38自治体になっているが、その理由として今後の計画に使うとしている。さらなる分析が必要である。
②利用料減免について
利用料の単独減免も新たな実施の自治体はなく合併で24市町(40.0%)になっている。
減免実施の市町村の対象条件が厳しく、多くの自治体では対象者がごく少数になっている実態は改善されていない。
その中で、豊橋市(低所得者の利用料限度額の引き下げ)や江南市・阿久比町(非課税世帯への訪問介護の利用料軽減)などの制度が優れており、他の市町村に広げていくことが必要である。
③新基準による介護認定について
「案内文書を作成し、自治体の窓口で配布」「調査員やケアマネ対象の研修で制度を指導」「再申請時に連絡」「更新の申請時期に連絡」などの回答が多数であった。
認定基準は見直しされたが、1次判定ソフトの基本的な内容は見直されていない。
2006年の改定で福祉用具の利用制限や同居家族がいる場合のサービス利用制限などに対し、厚労省は、介護現場や利用者の声に押され「機械的・一律に福祉用具を回収しないように」の事務連絡を出し、同居家族の利用制限についても2回にわたり「個々の利用者の状況に応じて具体的に判断」としているが12月25日付けで3回目の通達を出した。
今回のキャラバンでは、「同居家族」について要請をしなかったが新基準での介護認定とあわせて、具体的な事例をつかみ問題があれば、改善させていくことが必要である。
④特別養護老人ホームなどについて
④特別養護老人ホームなどについて (P16参照)
特別養護老人ホームの建設のテンポは遅く、入所待機者は05年13,702人、06年16,433人、07年17,697人、08年19,391人、09年22,298人で連続して増え、なかなか入所できない。
また、低所得者や医療依存度が高いと「施設から選択」され、「利用者が選択」の自由はなく、入所できない実態は変わっていない。とくに、居住費・食費の全額自己負担化のなかで経済的状況によって利用が制限される事態がいっそう進行している。必要な整備計画も進まず、厚労省の整備状況調査でも06年から08年度の達成状況は7割である。愛知県はそれより悪く、6割の達成である。
新政権になって療養病床廃止は中止になったが、小規模多機能型居宅介護・夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護など地域密着型サービスも計画どおりすすんでいない。
「経済危機対策」の一環として設けられた「介護基盤緊急整備等交付金」などの活用も含め、誰でも安心して施設・在宅サービスが利用できるようにしていくことが必要である。
⑤介護労働者の確保について
深刻な介護職員不足問題について「介護報酬3%引上げ」「介護職員処遇改善交付金」に続いて民主党の公約の4万円引き上げなどに自治体は期待を寄せているが、独自の特別な措置を講じるところまでいっていない。そのなかで介護従事者の研修会参加や資格取得費の一部助成(名古屋市・安城市)、ヘルパー養成研修受講料の助成(春日井市)、訪問介護養成講座受講料の一部助成(幡豆町)などが実施されている。
介護従事者の慢性的な人材不足に対し、この間の運動もあり「福祉人材確保支援助成制度」及び「職員研修制度」が不十分ではあるが国で予算化された。しかし、事務が繁雑で全職員対象になってないなどの理由で事業所の申請は低い。
国の「介護職員処遇改善等交付金」の事業所の活用の促進とあわせて、事務の簡素化や全職員対象にするなど交付金制度の改善とあわせ継続した実施を求めていくことが必要である。
⑥住宅改修と福祉用具の受領委任払い制度
アンケートで「住宅改修と福祉用具の受領委任払い制度」の実施状況を調査したところ、「住宅改修の受領委任払い制度」は、新たに4自治体で実施され、36市町村(59.0%)の実施となった。
「福祉用具の受領委任払い制度」も、新たに2自治体で実施され、27市町(44.3%)の実施となった。
(2)高齢者福祉施策の充実について
①配食サービス
自立支援事業となり、「自立支援につながっているか」などの調査実施や施設での食事の自己負担化の動きなかで、利用負担増や実施回数の減少などの動きがはじまっている。
配食サービスは、59市町村(96.7%)が実施し、毎日実施は16市町村(26.2%)となった。
依然として未実施が七宝町と南知多町であるが、南知多町は「2010年度から週5回」で実施を検討している。今後、自治体の助成額を増やし、利用者負担の引き下げが求められている。
②敬老パスや地域巡回バス
新たに瀬戸市、三好町で実施し、名古屋市の敬老パスも含め43市町(70.5%)の実施となった。そのうち無料は、16市町(26.2%)である。
巡回バスがない半田市、江南市、岩倉市などは高齢者の足の確保のためタクシー利用券の配布をしている。
③宅老所など高齢者のたまり場等への援助
宅老所や街角サロンなどへの助成実施自治体は21市町村(34.4%)となった。
介護予防が日常の暮らしのなかで進められ、高齢者がいきいきと暮らせるようこれらの施策を住民が必要とする内容に改善させていくことが必要である。
介護保険の予防重視の動きの中で軽度の要介護者の利用が制限されることなく、自治体の施策を守らせることが大切である。さらに高齢者の生活や介護支援、介護予防など高齢者福祉の充実にむけて具体的な取り組みの強化が求められる。
(3)障害者控除の認定などについて
①障害者控除の認定書発行が大きく前進
認定書の発行は、2007年の13,171人から 2008年18,544人へと増えている。しかし、要介護認定者からみるとまだ少ない。
「寝たきり」や「認知症」しか認めない市町村があるなかで「要介護1以上の要介護認定者」をすべて「障害者控除」の対象としているのは、18市町村(29.5%)から31市町村(50.8%)に広がった。
また、要介護者に認定書を送付しているのは、知立市、稲沢市、扶桑町、美和町、阿久比町の5自治体から新たに一宮市、安城市、西尾市、日進市、豊根村に広がり10自治体(16.4%)になった。
認定書または申請書の個別送付を実施しているのは、17市町村(27.9%)から26市町村(42.6%)に広がった。市町村によって対応が異なっている実態を改善させるため、引き続き対象を広げ、全ての要介護者に障害者控除の認定書・申請書を送付させるとりくみが必要である
2.高齢者医療の充実について
①後期高齢者の医療費を無料に。非課税世帯は医療費が無料となるように福祉給付金(福祉医療費給付制度)の対象拡大を
愛知県は2008年4月から「福祉給付金制度」を「後期高齢者福祉医療費給付制度」と名称を変更し「ひとり暮らしの市町村民税非課税者」を対象から外す改悪をおこなった。
県が外した「ひとり暮らし非課税者」を引き続き対象(縮小も含む)としているのは、52市町村(85.2%)である。
県の基準より何らかの拡大をしているのは、「ひとり暮らし非課税者」を含め、54市町村(88.5%)ある。
②70歳~74歳の医療費負担を1割に
「現在政府が凍結している状況のなかで独自の負担は考えられていない」と回答している自治体が多い。
③後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対する資格証明書の発行について
後期高齢者医療制度の発足にともなって長期の滞納者は、保険証が取り上げられ資格証明書が発行されるようになった。愛知県広域連合は、「悪質」「高額所得者」以外には発行しないという対応になっており、発行は「かぎりなくゼロ」と回答している。
④後期高齢者医療制度に加入しない65~74歳の障害者医療助成制度の適用について
愛知県は、65~74歳の障害者が後期高齢者医療を選択しないと医療費助成が打ち切られる7道県の一つである。
後期高齢者医療に加入しない65~74歳の障害者に直ちに障害者医療の適用をする制度に改めるよう求めたが、適用している自治体はなかった。
⑤肺炎球菌ワクチンの接種費用助成
肺炎球菌ワクチンの接種費用を助成しているのは、現在、小牧市、東海市、日進市、長久手町の4自治体である。検討していると回答したのは、半田市、春日井市、飛島村の3自治体であった。
3.子育て支援の要請が大きく前進
①子どもの医療費助成制度
愛知県が2008年4月から通院を就学前、入院を中学校卒業まで(小中学生は償還払い)に拡大、名古屋市も県内で唯一実施していた所得制限を廃止し、子どもの医療費助成制度は大きく前進した。
通院・入院とも「中学卒業」まで自己負担なしでの実施は、昨年19市町村(31.1%)から22市町村(36.1%)へ広がった。また、「小学校卒業」までへの拡大は、34市町村(55.7%)から40市町村(65.6%)に大きく広がり、7割近い実施となった。
制度は前進したが、1割の自己負担問題では大口町は改善したが、一宮市、北名古屋市で導入され、昨年から実施の一色町を含め3市町が自己負担を設けている。また、入院で償還払い制度を残しているところが38市町村(62.3%)ある。
1割の自己負担や償還払いを実施している市町村は窓口での支払いが必要になる。早急に改善すべきである。
②妊婦無料健診の拡大
妊婦健診の無料回数の拡大は、2003年以来毎年要請し、厚労省の指導文書や厚労大臣の発言もあり、全自治体で14回の助成が実現した。
産婦健診の助成も12市町(19.7%)から16市町村(26.2%)となった。
超音波検査は、年齢制限なしが8市町。助成回数が4回は清須市、豊山町、春日町、2回は名古屋市である。
厚労省の指導や県医師会の動きもあり、来年度から「助成費の引き上げ、超音波検査の年齢制限廃止・4回実施」の方向で調整が進められている。
③ヒブワクチンの費用の助成を
「国の動向や近隣市町村の動向を見て検討」との回答が多い中で一宮市、飛島村は「医師会等とも協議し検討」と実施の方向で検討されている。
④就学援助について
就学援助の認定基準を40自治体(65.6%)が明記している。そのうち、生活保護基準の1.5倍が6自治体(9.8%)、1.3~1.4倍が11自治体(18.0%)、1.0~1.25倍が23自治体(37.7%)である。
申請窓口は、「市町村窓口」と「学校」の両方利用できるのが32自治体(52.5%)になっている。
支給方法は、58自治体(95.1%)が銀行口座になっている。
広報は、早い時期に保護者に知らせるようになっているが、対象者の所得がわかる内容で広報がされているかは定かでない。
引き続き、就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等と義務教育の無償化を求めていくことが必要である。
4.国保の改善について
①保険料(税)について
国民健康保険は憲法25条に基づく社会保障の柱であり、国民健康保険法のどこにも「相互扶助」の文言はない。法に基づかない考え方は改めさせていく必要がある。
加入者の2割を超え払いきれない保険料(税)は高すぎる。保険料(税)の滞納者が増えるなかで、払える保険料(税)にしていくために、昨年に続き以下の要請をした。
ア)就学前の子どもは均等割の対象から外す
イ)前年所得が生活保護基準の1.3倍以下の減免制度の新設
ウ)所得激減の要件を「前年所得1,000万円以下で、当年の見込み所得500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」に
その結果、「低所得者向けの減免」を実施は、17市町村(27.9%)になっている。
また、「収入減の減免要件」は、豊川市が前年所得300万未満(7/10以下に減少)、愛西市、田原市が新たに前年所得300万円以下(1/2以下に減少)で実施した。
さらに、岡崎市で300万円以下を500万円以下に、豊橋市で500万円以下を600万円以下に改善した。
引き続き国に対し、国庫負担を38.5%から45%に戻すとともに各市町村で「低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善とあわせて払える保険料(税)にしていくための取り組みが必要である。
②資格証明書・短期保険証
資格証明書の発行だけでなく、短期保険証発行の期間や制裁措置についても調査した。
資格証明書の発行は、2009年8月1日現在、愛知県合計で3,801件と他府県と比べてかなり低い数に抑えている。資格証明書を1枚も発行していない自治体は27市町村から30市町村(49.2%)になった。
資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは16市町村(26.2%)。「独自に配慮」は27市町村(44.3%)である。
子どもの無保険をなくす取り組みは国も動かし、2009年4月から「短期・6カ月」の条件付きで改善させたが、中学校以下の子どもに対して資格証明書の発行は、2009年8月現在12市町259世帯であった。機械的な発行を許さない取り組みが引き続き重要である。
短期保険証の発行件数は、55,909件から63,155件と増えている。
有効期間は1カ月が18市町村で3,379件(昨年14市町村1、857件)、3カ月が28市町村で 7,497件(昨年28市町村8,656件)になっている。
また、保険証や短期保険証が国保加入者に届かないまま留め置かれているのが12,266件とあることが分かった。
滞納者の差し押さえ件数は2007年5,817件約20億円から2008年7,086件約39億4千万円になっている。差し押さえ物件は不動産、預金が多いが給与もある。「悪質」のみの差し押さえなのか、きちんとした実態調査が必要である。
③一部負担金減免
一部負担金の減免制度は、新たな実施はなく合計44市町村(72.1%)となったが、未だに未整備のままの自治体が16市町村(26.2%)も残っているのは問題である。
2008度の減免実績は、2市23件から10市町 148件に広がった。
減免基準を「生保基準を基に実施」は、新たに江南市で実施し33市町村(54.1%)となった。
引き続き、住民にわかりやすいリーフの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度を活用する申請の促進運動と制度の拡充が必要である。
5.障害者施策の充実について
障害者自立支援法の廃止を掲げ発足した鳩山政権だが、現在も障害福祉サービス利用を「益」とする利用料の負担は続いている。新年度予算案で2010年4月から市町村民税非課税の低所得者を対象に、福祉サービス・補装具の利用を無料にする措置がとられようとしている。
しかし予定する措置から、「自立支援医療」を外し、障害児の利用料問題や配偶者の収入認定などの基本的課題も現状のままである。加えて、入所施設での手持ち金の制限、食費・ホーム家賃などの経済的負担問題も放置されている。地域間格差が激しい地域生活支援事業予算も自公政権下の2009年度と同額の440億円しかなく、改善の方向が見えない。
①障害福祉サービスなどの市町村独自の負担軽減について
愛知県は、障害福祉サービスのうち作業所や就労関係施設の利用者に奨励金を支給し、利用料の軽減をはかっている。また、障害者医療費を身障3級まで・IQ50以下・自閉症状群については無料、精神障害1・2級については精神科通院診療のみ無料にしている。
こうした中、県制度への上乗せや市町村独自で福祉サービスなどの利用料軽減をおこなっているのは21市町(34.4%)となっている。
②地域生活支援事業(移動支援・地域活動支援センター・日常生活用具等)の利用料について
負担軽減策を講じているのは32市町(52.5%)にとどまっている。
福祉サービスと移動支援(地域生活支援事業)それぞれの利用料軽減しているのは名古屋・豊橋・江南の3市。
福祉サービスと移動支援・地域活動支援センター(地域生活支援事業)の利用料を合算した上限をもうけているのは14市町(23.0%)となっている。
地域生活支援事業について、田原市が文書回答で「国、県からは補助金という形で費用負担は行われているが、実際支出額と比較すると約6割の補助であり、市の負担が4割という大きなもの」としている点を、愛知県は文書回答で「国から市町村への交付額は市町村の前年の実績等を基に算出しているため、対象経費満額の補助になっていない状況にある」と国の予算を問題にしている。
③ケアホーム・グループホームの建設・設置費補助、運営費補助について
ケアホーム(共同生活介護)・グループホーム(共同生活援助)への独自補助を設けているのは 16市(26.2%)となっており、県補助に自治体独自に上乗せ補助するところが少なく、障害者の生活を地域で積極的に作り出す姿勢が見えないものとなっている。
なお、愛知県では「市町村と共同して共同生活介護・共同生活援助事業費補助金を2007年度から創設し、運営費に対する補助を実施」と文書回答している。
「利用料」の扱い、ホーム建設・運営費補助の扱いからも地域間格差は大きいと言える。新しい制度までの間にも、福祉サービスの低所得者の無償化と係って地域生活支援事業の利用料無料化をどのようにすすめるのかが大きな課題となる。また、地域生活支援事業の拡充には政府予算の拡充とともに、愛知県が積極的に地域間調整と調整のための予算措置が必要だ。
6.健診事業について
①特定健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と制度変更された。健診の実施に責任を持つのが自治体から保険者へと変更され、病気の早期発見に主眼がおかれなくなった。
今回も、特定健診への移行後の実施状況をつかみ、住民の健康を重視し福祉の後退に繋がらないよう要請した。
特定健診を集団・個別医療機関委託のどちらかで実施し、大きな変化はなかった。
個別医療機関委託も、自己負担無料での実施は32市町村(実施市町村の62.7%)であり集団健診で自己負担無料は23市町村(同63%)だった。
各種がん検診は、項目ごとに実施のばらつきがあるが、すべての自治体ですべての検診を実施する必要がある。また、全てのがん検診を受けようとすると多額の負担になる。自己負担をなくし、費用負担の心配なく検診が受けられるようにしていくことが必要である。
特に前立腺がん検診を実施していないのは名古屋市のみであり、社保協との懇談の場で「厚労省のガイドラインに従い、実施しない」と冷たい対応であった。
②40歳未満の住民健診について
特定健診と同じ内容で実施している自治体は 26、異なる内容で実施している自治体は30だった。未実施は、名古屋市、津島市、豊田市、東海市、七宝町、幡豆町の6自治体であった。1日も早く実施をさせていくことが必要である。
③歯周疾患検診
歯周疾患検診を毎年受診できるのは18市町村(29.5%)である。年齢基準が国基準より対象を拡大している自治体は44市町村(72.1%)である。
7.生活保護について
リーマンショック以降トヨタなど大企業の派遣切りが相次ぎ、職と同時に住居を失う労働者が急増している。また、自営業者も仕事が急減し、正規の職員にもおおきな影響をあたえ生活保護以下の生活を余儀なくされている実態が生じている。
08年度と09年度を比べると保護開始件数08年11,899件が09年の4月から6月の3カ月で5,765件(48.4%)となっている。
トヨタ自動車関連企業が多数存在する岡崎・豊田・西尾市などは09年1月~3月の申請件数が08年度全体に占める割合の50%以上になっているのが特徴である。また、名古屋市の申請3,493件は中村区に県内外から申請を求めてきた結果である。
9.今後の課題
(1)自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~これまでの貴重な成果を踏まえ~
国の社会保障の連続改悪が進められるなかで住民の負担増はいっそう強まっているだけでなく「雇用と貧困」問題など、かつてない状況が大きな社会問題になっている。
すでに病院や老人福祉施設、保育所、児童福祉施設など公的施設の民営化だけでなく、2009年4月からの介護保険の見直しなどがすすめられた。新政権になり、社会保障費2200億円の削減や療養病床の廃止などは撤回、生活保護の母子加算の復活や障害者自立支援法廃止など大きく政治を動かしてきたが、母子加算も障害者自立支援も財政的な保障は十分でない。後期高齢者医療制度は廃止を先延ばししただけでなく、国保と統合し、都道府県単位の運営ですすめようとしている。
新たな情勢のなかで制度を知らせる活動をいっそう強め、自治体が住民のいのちと暮らしを守る砦となるよう、「草の根」からの運動強化がいっそう必要になっている。
(2)地域ごとの運動課題を明確にした運動を
国保改善や高齢者福祉など、「水準の引き上げ」などを求め、子どもの医療費無料制度や障害者控除の認定書の発行などで大きく前進させた。
さらに、介護保険料や国保保険料(税)の引き下げ、独自減免など現行のサービスを改善させる取り組み、高齢者の生活を総合的に支える地域づくりなど継続的な取り組みの強化が必要である。そのためには、①キャラバンの事前学習会とあわせて「まとめ」の学習会も自治体毎に開催し次年度のとり組みにつなげていくこと、②事前学習会では事前に回答を分析し、具体的な事例で改善をめざす準備をする、③重点要望事項をできるだけ絞り込む――など引き続き改善をしていくことが求められる。
そのためにもキャラバン時の懇談だけでなく地域が中心になって継続的な取り組みにしていくように、地域社保協などの運動体づくりが不可欠である。
(3)新しい政治実現めざし、地域から連携したたたかいを
世界金融危機にはじまった景気悪化の中でトヨタをはじめ大企業が率先して「期間工切り」や「派遣切り」を行い、深刻な雇用破壊が生じている。雇用悪化に対する取り組みは大きな世論となり、「反貧困」の連帯の動きが政府・国会を動かしている。
また、障害者自立支援、後期高齢者医療制度の「廃止」や地域医療を守る取り組み、国保の「無保険」の子どもを無くす制度の改善も私たちの運動で情勢を動かしている。
この動きをいっそう前進させるために、いま民主党が進めようとしている国会改革や改憲・消費税の引き上げなどを許さず、雇用確保、いのちと暮らしを守り、安心して暮らせる街づくりを地域から連携した大きなたたかいを広げ、創りあげていくことが求められている。