2008年 愛知自治体キャラバンのまとめ概要

2009年1月/愛知自治体キャラバン実行委員会

1.名 称                      

「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」

2.主 催                      

愛知自治体キャラバン実行委員会
 ≪事務局団体≫
  愛知県社会保障推進協議会
  愛知県労働組合総連合
  日本自治体労働組合総連合愛知県本部
  新日本婦人の会愛知県本部

3.日 程                      

2008年10月21日(火)~24日(金)
※東浦町は当局側の関係で10月30日(木)に実施
※愛知県とは11月13日(木)に、名古屋市とは12月12日(金)に実施

4.要請相手とコース日程               

愛知内61市町村を5コースで実施

コース 主な地域 責任団体 宣伝カー
第1 尾西・海部 年金者組合 名古屋市職労
一宮・稲沢 一宮社保協
第2 尾北・尾東・尾中 自治労連 自治労連
岩倉 一宮社保協 民医連
第3 知多・尾東 社保協 保険医協会
第4 西三河 愛労連 愛労連
新婦人
第5 東三河 自治労連 豊橋市職労
東三河労連
事務局4団体

5.参加状況                     

※(  )内は昨年参加者数

①各コースの参加者総数は延べ合計806人(851人)の参加であった。そのうち共産党議員は89人(90人)が参加した。自治体側の参加者は507人(515人)となった。首長1人、副首長5人、部長は24市町村34人(19市町村19人)が参加。他は主に、福祉・保健・医療の課長・次長など担当者が対応した。

②各団体の参加状況は、延べ参加数で多い順に並べると次の表のとおり。

団体名 延べ人員
年金者組合 167(139)
自治労連(名古屋市職労含む) 136(158)
新婦人 107( 70)
保険医協会 100(104)
愛労連(医労連・地域労連含む) 74(109)
民医連 54( 62)
愛商連 43( 70)

③昨年同様、自治労連、年金者組合や地域労連はじめ新婦人、愛商連など地域で運動している団体からの参加が定着してきている。
年金者組合、新婦人がキャラバンを位置づけ取り組んだ結果、地域からの参加者増になった。
東三河山間部は事務局団体と東三河労連が協力し取り組んだ。

6.事前学習会の取り組み               

事前学習会は、要請事項の学習や地域の具体的要求の検討をするため全地域での開催を目標に取り組んだ。結果、昨年の14地域から今年は16地域で開催し、125人(昨年168人)が参加した。
後期高齢者医療制度問題の学習会とも重なって日程調整が大変だったが、陳情書への文書回答・アンケート回答も準備され、地域の到達状況もつかんだ学習会になった。
岡崎は事務局との連絡が不十分で事務局が参加できなかったなど地域の学習会に応えられなかった。
今後、回答の検討など準備も進め、地域での学習会を増やしていくために、準備と連絡の改善をはかることが必要である。さらに、キャラバン以外でも学習会や宣伝行動など共同の取り組みが求められている。

開催地域(開催地) 開催日 参加者数
東三河(豊橋) 10/17 19人
西三河(知立) 10/ 1 10人
(豊田) 10/ 6 10人
(西尾) 10/ 7 12人
(岡崎) 10/14 7人
知多(半田) 10/ 3 7人
(東海・知多) 10/11 10人
尾張東(瀬戸) 10/ 4 10人
(長久手・日進) 10/14 10人
尾張中部(春日井) 10/ 3 12人
尾張北(江南) 10/15 7人
(岩倉) 10/ 1 11人
(犬山) 10/ 2 5人
尾張西(一宮) 9/30 9人
海部津島(津島) 10/ 2 11人
合計 16地域・125人

※安城市は独自に実施。

7.懇談の重点項目とアンケート・回答         

①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように重点項目を決めた。要請事項もすでに多くの市町村が実施している施策はアンケートにまわした。

②さらに、住民が安心して暮らしていける自治体の施策の充実、特に2009年4月「見直し」の介護保険の保険料の引き下げや利用料の減免、2008年4月より実施された後期高齢者医療制度にともなう改善を要請した。また、国保の保険料(税)の未納者に対する資格証明書発行問題では、子どもや病弱者に対しては「特別の事情」で直ちに正規の保険証の交付を要請した。

③要請項目についてのアンケート・文書回答について、今回もキャラバンの事前学習会で活用できるように約1カ月早く準備した。アンケートはすべての市町村から、文書回答は昨年同様97%の市町村から提出されたが、3市(昨年11市町村)が事前に届かず懇談当日配布となった。豊田市と三好町は、昨年同様文書回答がなかった。

8.要望項目に対する到達点              

29年をむかえた自治体キャラバンや地域の運動で高額療養費や出産育児一時金の受領委任払いの実施、子どもの医療費無料制度の拡大、妊婦健診の無料回数拡大、福祉給付金制度の窓口無料化など市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たすとともに、国や愛知県の制度を前進させてきた。

1.安心できる介護保障について

(1)介護保険について
2005年10月からの介護保険施設での居住費や食費の全額自己負担化(所得による軽減あり)や、2006年4月からの予防重視の見直しで介護用ベッドや通院・生活支援などのサービスの利用制限による「介護の取り上げ」で利用者の生活が困難になっている。介護の実態はいっそう深刻な状態になり、「崩壊の危機」に直面している。このままでは、利用者は懐具合で利用が制限され、低所得者には「選択」の自由もない。
また、事業所も慢性的な人手不足と経営難で介護施設の閉鎖が相次いでいる。介護福祉士の養成も、施設が定員割れを起こすのみでなく、入学者が激減し廃校となる学校もでている。介護職員の人員確保は急務の課題になっている。
この間の取り組みでの到達点と今後の課題は以下通りである。

①介護保険料について
2006年4月から県内平均で月額2,900円から3,700円へと32%(全国24%)も引き上げられた。介護保険料は引き上げられたがサービスの利用制限で国も各市町村も「黒字」になっている。
2009年度の見直しで介護保険の「黒字分」を保険料の引き下げや減免制度の改善など制度改善に還元するよう要請した。
保険料の引き下げについては、各自治体とも「黒字」であるが2009年度の見直しについては「検討中」の回答が多かった。
新たな減免制度の実施はなく減免実施市町村は33市町村(54.1%)となっている。一宮市のような減免制度を広げていくことが求められている。
減免に対する「3原則」の撤廃とあわせ国の負担をせめて「20%+調整金5%」から「25%+調整金5%」に早急に改善させることが必要である。

②利用料減免について
利用料の単独減免も新たな実施の自治体はなく25市町(41.0%)になっている。
減免実施の市町村の対象条件が厳しく、多くの自治体では対象者がごく少数になっている実態は改善されていない。
そのなかで、豊橋市(低所得者の利用料限度額の引き下げ)や江南市・阿久比町(非課税世帯への訪問介護の利用料軽減)などの制度が優れており、他の市町村に広げていくことが必要である。

③軽度の要介護者に対するサービスや同居家族がいる場合の利用制限について
2005年10月から実施された介護保険施設の居住費や食費の全面自己負担化や2006年4月からのサービス利用の制限などによって利用者も事業者も深刻な状況が生じている。
また、要支援、要介護1に対する介護用ベッドなどの貸与等について全国で30万台(第23回介護給付費分科会)の貸しはがしが行われ、愛知でも県内の車いすや特殊寝台など福祉用具の貸与状況は、2005年122,171件に対し3,936件と大幅に減少している。
厚労省は、介護現場や利用者の声に押され「機械的・一律に福祉用具を回収しないように」の事務連絡を出し、同居家族の利用制限についても2回にわたり「個々の利用者の状況に応じて具体的に判断」としている。今回のキャラバンで各自治体は「機械的な制限はしていない」と回答しているが具体的な事例で改善を迫っていくことが引き続き求められている。

④特別養護老人ホームなどについて
特別養護老人ホームの建設のテンポは遅く、入所待機者は19,371人で前回の17,697人より増え、なかなか入所できない。
また、低所得者や医療依存度が高いと「施設から選択」され、「利用者が選択」の自由はなく、入居できない実態は変わっていない。とくに、居住費・食費の全額自己負担化(有料老人ホーム)のなかで経済的状況によって利用が制限される事態がいっそう進行している。必要な整備計画も進まず、療養病床の縮小・廃止で、有料老人ホームなど経済的にゆとりがある階層しか入所できない施設の建設が一段と進んでいる。
また、小規模多機能型居宅介護・夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護など地域密着型サービスは計画どおりすすんでいない。
介護・医療療養病床の廃止・縮小をやめさせ、特別養護老人ホーム、老人保健施設など介護保険3施設の増設、地域密着型サービスの推進など身近で、誰でも安心して施設・在宅サービスが利用できるようにしていくことが必要である。

⑤介護労働者の確保について
深刻な人材確保問題について「国の動向を見守る」の回答が大半で自治体としての特別な措置を講じていない。そのなかでもヘルパー養成研修受講料の助成(春日井市)、訪問介護養成講座受講料の一部助成(幡豆町)などを実施と回答している自治体もある。
また、事業所の実態把握や労働者確保について前向きな自治体もあったが具体的な対応はしていない。

⑥住宅改修と福祉用具の受領委任払い制度
アンケートで「住宅改修と福祉用具の受領委任払い制度」の実施状況を調査したところ、「住宅改修の受領委任払い制度」は、新たに11自治体で実施され、32市町村(52.5%)の実施となった。
「福祉用具の受領委任払い制度」も、新たに8自治体で実施され、25市町(41.0%)の実施となった。

(2)高齢者福祉施策の充実について

①配食サービス
自立支援事業となり、「自立支援につながっているか」などの調査実施や施設での食事の自己負担化のなかで、負担増や実施回数の減少などの動きがはじまっている。
配食サービスは、59市町村(96.7%)が実施し、毎日実施は大口町が新しく実施し16市町村(26.2%)となった。依然として未実施となっているのは七宝町と南知多町である。

②敬老パスや地域巡回バス
新たに豊川市、稲沢市、清須市、北名古屋市、設楽町で実施し、名古屋市の敬老パスを含め39市町(63.9%)の実施となった。そのうち無料は、14市町(23.0%)である。

③宅老所など高齢者のたまり場等への援助
宅老所や街角サロンなどへの助成実施自治体は21市町村(34.4%)となった。
介護予防が日常の暮らしのなかで進められ、高齢者がいきいきと暮らせるようこれらの施策を住民が必要とする内容に改善させていくことが必要である。
老人保健事業の健診など従来の保健事業は、高齢者医療制度でも実施される。しかし予防給付の名で軽度の要介護者の利用が制限されることなく、現行の自治体の施策を守らせることが大切だ。さらに高齢者の生活や介護支援、介護予防など高齢者福祉の充実にむけて具体的な取り組みの強化が求められている。

④ゴミ出し援助
アンケートで「ゴミ出し援助」の実施状況を調査したところ、25市町村(41.0%)の実施となった。

(3)障害者控除の認定などについて

①障害者控除の認定書発行について
認定書の発行は、2006年の10,466人から2007年13,171人へと増えている。しかし、要介護認定者からみるとまだ少ない。
「寝たきり」や「認知症」しか認めない市町村があるなかで「要介護1以上の要介護認定者」をすべて「障害者控除」の対象としているのは、14市町村から18市町村(29.5%)に広がった。また、要介護者全員に認定書を送付しているのは、知立市、扶桑町につづいて、美和町、阿久比町で実施された。
認定書または申請書の個別送付を実施しているのは、12市町から17市町村(27.9%)に広がった。市町村によって対応が異なっている実態を改善させるため、引き続き対象を広げ、全ての要介護者に障害者控除の認定書・申請書を送付させるとりくみが必要である。

2.高齢者医療の充実について

①後期高齢者福祉医療費給付制度(福祉給付金制度)
愛知県は2008年4月から「福祉給付金制度」を「後期高齢者福祉医療費給付制度」と名称を変更し「ひとり暮らしの市町村民税非課税者」を対象から外す改悪をおこなった。
キャラバン実行委員会は、県への「撤回」要請とあわせ独自の継続を要請した。
県が外した「ひとり暮らし非課税者」を引き続き対象(縮小も含む)としているのは、53市町村(86.9%)である。愛知県の施策が否定されたことを意味しており、県は直ちに外した対象を元に戻すべきである。
県の基準より何らかの拡大をしているのは、「ひとり暮らし非課税者」を含め、55市町村(90.2%)ある。

②後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対する資格証明書の発行について
後期高齢者医療制度の発足にともなって長期の滞納者は、保険証が取り上げられ資格証明書が発行されるようになる。
名古屋市は、2000人程度の未納者があることが明らかになっているが、各市町村に、保険証の取り上げ・資格証明書の発行は絶対しないよう求めた。
対象者は2009年になってから明らかになることもあり「悪質」「高額所得者」以外には発行しないという対応になっている。

③後期高齢者医療制度に加入しない65~74歳の障害者医療助成制度の適用について
愛知県は、65~74歳の障害者が後期高齢者医療を選択しないと医療費助成が打ち切られる7道県の一つである。
後期高齢者医療に加入しない65~74歳の障害者に直ちに障害者医療の適用をする制度に改めるよう求めた。適用制限をしていない自治体は、七宝町と豊根村のみである。

④人間ドック、温泉などの保養施設補助などの後期高齢者に対する適用
国保の加入者が受けられる保健施策や福祉施設補助などについて、今までと同様に後期高齢者にも実施するよう求めた。
人間ドック、脳ドックなどの健診を受けられないまたは補助が受けられない自治体が15市町(24.6%)あった。また、宿泊費補助を受けられない自治体は3市町(4.9%)あった。

3.子育て支援の要請が大きく前進

①子どもの医療費助成制度
愛知県が2008年4月から通院を就学前、入院を中学校卒業まで(小中学生は償還払い)に拡大、名古屋市も県内で唯一実施していた所得制限を廃止し、子どもの医療費助成制度は大きく前進した。
通院・入院とも「中学卒業」まで自己負担なしでの実施は、昨年の5市町村から18市町村(29.5%)へ広がった。また、「小学校卒業」までへの拡大は、9市町村から34市町村(55.7%)に大きく広がり、5割を超す実施となった。
制度は前進したが、1割の自己負担問題では大口町は改善したが、高浜市・一色町の2市町で残されている。また、入院で償還払い制度を残しているところが42市町村(68.9%)ある。
1割の自己負担や償還払いを実施している市町村は窓口での支払いが必要になる。早急に改善すべきである。

②妊婦無料健診の拡大
妊婦健診の無料回数の拡大は、2003年以来毎年要請し、厚労省の指導文書や厚労大臣の発言もあり、全自治体で5回以上が実現した。
14回以上を無料にしている市町村は9市町村(14.8%)となった。産婦無料健診の実施も12市町(19.7%)となった。

4.国保の改善について

①保険料(税)について
国民健康保険は憲法25条に基づく社会保障の柱であり、国民健康保険法のどこにも「相互扶助」の文言はない。法に基づかない考え方は改めさせていく必要がある。
加入者の2割近くが払いきれない保険料(税)は高すぎる。保険料(税)の滞納者が増えるなかで、払える保険料(税)にしていくために、昨年に続き以下の要請をした。
イ)就学前の子どもは均等割の対象から外す
ロ)前年所得が生活保護基準の1.3倍以下の減免制度の新設
ハ)所得激減の要件を「前年所得1,000万円以下で、当年の見込み所得500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」に
その結果、収入減の減免要件で春日井市が300万円以下を400万円以下に、江南市が100万円以下を400万円以下に改善した。引き続き国に対し、国庫負担を38.5%から45%に戻すとともに各市町村で払える保険料(税)にしていくための取り組みが必要である。
65歳からの年金からの保険料天引きは、2008年4月から19市町村が実施し、10月からは38市町村の実施となった。2009年からの実施は名古屋市、半田市、新城市である。飛島村は予定していない。

②資格証明書・短期保険証
資格証明書の発行だけでなく、短期保険証発行の期間や制裁措置についても調査した。
資格証明書の発行は、愛知県合計で3,072件と他府県と比べてかなり低い数に抑えている。資格証明書を1枚も発行していない自治体は27市町村(44.3%)ある。
資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは19市町村(31.1%)。「独自に配慮」は26市町村(42.6%)である。
なかでも中学校以下の子どもに対して資格証明書の発行は9市町であったが、厚労省の調査(2008年9月)では12市町178世帯279人であった。
キャラバン要請では、「無保険の子どもをなくす」よう強く求め、各自治体もその解消をすすめた。その後の実行委員会の調査では、2008年12月末までに8市町が無保険の子どもに短期保険証を交付し、無保険の子どもを残しているのは、名古屋市、瀬戸市、豊川市、東海市の4市のみとなった。そのうち名古屋市は71世帯111人を残し、県内の86.7%を占めている。
子どもの無保険をなくす取り組みは国も動かし、2009年4月から「短期・6カ月」の条件付きであるが改善させた。機械的な発行を許さない取り組みが引き続き重要である。
短期保険証の発行件数は、63,987件から55,909件へと微減している。有効期間は1カ月が14市町村で1,385件(昨年3,247件)、3カ月が28市町村で8,655件(昨年11,490件)になっている。
また、未交付11,101件、留め置きも14,620件となっている。
滞納者の差し押さえ件数は2006年の3,458件31億円から、2007年は5,817件20億円になっている。差し押さえ物件は不動産、預金が多いが給与もある。「悪質」のみの差し押さえなのか、きちんとした実態調査が必要である。

③一部負担金減免
一部負担金の減免制度は、新たに5市町で実施され、合計44市町村(72.1%)となったが、未だに未整備のままの自治体が17市町村(27.9%)も残っているのは問題である。
2007年度の減免実績は、2市23件のみに留まっている。減免基準も「生保基準の1.3倍」は15市町村増えて32市町村(52.5%)の実施となった。
制度を活用する申請の促進運動と制度の拡充が必要である。

④出産育児一時金の受領委任払い
出産育児一時金の受領委任払いはこの間の運動もあり、豊根村を除いて全ての市町村での実施となった。

5.障害者施策の充実について

①障害者自立支援法の抜本的見直しに向けた緊急措置について
2007年12月に国は、障害者運動や関係者からの声を受け「障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置」を打ち出した。ホームヘルパーやケアホーム.グループホームの利用料、通所施設の利用料を更に軽減し、低所得1(障害基礎年金2級受給者)で1,500円、低所得2(障害基礎年金1級受給者)で3,000円、所得割16万円未満で4,600円の利用料上限額設定し、2008年7月から実施した。
しかし、障害ゆえの福祉サービス利用を「益」とする応益負担制度を温存し、補装具.自立支援医療の負担金、入所施設での手持ち金の制限、食費などの実費負担などの経済的負担が改善されたわけではない。
こうした中、利用料軽減について独自の負担軽減をおこなっているのは17市町(27.9%)である。しかし、地域生活支援事業を含めて何らかの負担軽減策を講じているのは41市町(67.2%)あり、この中で利用料を合算し負担上限額を設けているのは16市町(26.2%)である。春日井市.豊川市.豊田市などは国の緊急措置で軽減された金額を利用料上限としている。

②ホームヘルパー.ガイドヘルパーの利用時間の要望について
「ヘルパーは足りているため、要望に応えられている」と答えたのは37市町村(60.7%)だが、隣接市では「応えられない」と回答するところや、当事者の「ヘルパー不足で利用できない」との声の中、本当に要望にこたえられるヘルパーがいるのだろうか疑問が残る。また、「状況を掴んでいない」と11市町(18.0%)が答え、状況を掴まずに第2期障害福祉計画をどのように策定するのか危惧される。
今回の回答でも、市町村格差の広がりが明らかになった。特に、住むところで経済負担が異なる点、地域生活の状況把握での格差は問題といえる。愛知県や市町村が障害者.児の要望.状況を把握し、地域での生活を確保できるようにすることが望まれる。

6.健診事業について

①特定健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と制度変更された。健診の実施に責任を持つのが自治体から保険者へと変更され、病気の早期発見に主眼がおかれなくなった。
今回のキャラバンは、特定健診への移行後の実施状況をつかみ、住民の健康を重視し福祉の後退に繋がらないよう要請した。
すべての自治体が、特定健診を集団・個別医療機関委託のどちらかで実施している。しかし、個別医療機関委託では、自己負担無料での実施は31市町村(実施市町村の60.8%)であり集団検診で自己負担無料は22市町村(同61.9%)だった。
各種がん検診は、項目ごとに実施のばらつきがあり、すべての自治体ですべての検診を実施する必要がある。特に前立腺がん検診を実施していないのは名古屋市のみであり、社保協との懇談の場で「厚労省のガイドラインに従い、実施しない」と冷たい対応である。住民の健康を守る立場からも早期の実施が望まれる。。

②歯周疾患検診
歯周疾患検診を毎年受診できるのは18市町村(29.5%)である。年齢基準が国基準より対象を拡大している自治体は44市町村(72.1%)である。

9.今後の課題                    

(1)自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~これまでの貴重な成果を踏まえ~

国の社会保障の連続改悪が進められるなかで住民の負担増はいっそう強まっているだけでなく「雇用と貧困」問題など、かつてない状況が大きな社会問題になっている。
すでに病院や老人福祉施設、保育所、児童福祉施設など公的施設の民営化だけでなく、2009年4月からの介護保険の見直し、療養病床の廃止などがすすめられている。
この間の自治体キャラバン要請の貴重な成果を地域住民に知らせるため、2007年1月に「知ってトクする!医療・介護・税金の負担軽減策(略称:知っトクパンフ)」を発行した。2009年2月には、この改訂版を発行する。愛知社保協のホームページの活用も含め、制度を知らせる活動をいっそう強め、国の悪政に対し、自治体が住民のいのちと暮らしを守る砦となるよう、「草の根」からの運動強化がいっそう求められている。

(2)地域ごとの運動課題を明確にした運動を

国保改善や高齢者福祉など、地域ごとの中心課題や「水準の引き上げ」などを求め、県内市町村の各制度を明らかにしていくことが大切である。
また、介護保険料や国保保険料(税)の引き下げ、独自減免など現行のサービスを後退させない取り組み、高齢者の生活を総合的に支える地域づくりなど継続的な取り組みの強化が必要である。そのためには、①キャラバンの事前学習会をこれまで以上に多くの地域で開催していくこと、②事前学習会では事前に回答を分析し、具体的な事例で改善をめざす準備をする、③重点陳情事項をできるだけ絞り込む――など引き続き改善をしていくことが求められる。
キャラバン時の懇談だけでなく継続的な取り組みにしていくために、地域社保協などの運動体づくりが不可欠である。

(3)国の悪政に地域から連携したたたかいを

世界金融危機にはじまった景気悪化の中でトヨタをはじめ大企業が率先して「期間工切り」や「派遣切り」を行い、深刻な雇用破壊が生じている。雇用悪化に対する取り組みは大きな世論となり、「反貧困」の連帯の動きが政府・国会を動かしはじめている。
また、後期高齢者医療制度の「廃止」や地域医療を守る取り組み、「無保険」の子どもを無くすなど私たちの運動が情勢を動かしてきている。
派遣社員や期間工の解雇に対し、国の責任で緊急対策させるとともに、社会保障予算削減や消費税増税反対、後期高齢者医療制度など、国の悪政をやめさせ、医療・福祉・保育などの「危機」に対し、いのちと暮らしを守り、安心して暮らせる社会保障制度を活用し、改善させる地域から連携した大きなたたかいを広げていくことが求められている。

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