2015年 愛知自治体キャラバンのまとめ概要

2016年2月/愛知自治体キャラバン実行委員会

1.名 称

「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」

2.主 催

愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部

3.日 程

2015年10月20日(火)~23日(金)、26日(月)、30日(金)
※愛知県11月13日(金)、名古屋市11月5日(木)に。

4.要請相手とコース日程

愛知内54市町村を6コースで実施

コース 主な地域 責任団体 宣伝カー
第1 尾西・海部 年金者組合 名古屋ブロック
一宮・稲沢 一宮社保協
第2 尾北・尾東 自治労連 自治労連
第3 知多・尾東 愛労連・社保協 愛労連
第4 西三河 社保協・新婦人 保険医協会
新婦人
第5 東三河 自治労連 豊橋市職労
東三河労連
事務局4団体
第6 大治・蟹江・幸田・長久手・尾張旭 社保協

5.要望項目への対応と到達点

2015年4月から「改正」介護保険制度と介護報酬の改定が実施された。
5月27日には、医療保険制度等の見直し関連法が成立し、入院給食自己負担、「患者申入れ療養制度」の名による混合診療の大幅拡大、大病院への紹介状なしの受診時定額負担の導入、国保の都道府県運営化など、国民・患者負担増の医療保険制度改悪が、順次進められることになる。
安倍内閣は、「戦争できる国づくり」と「企業が一番活躍しやすい国づくり」最優先に、社会保障における国の役割は「自助・自立のための環境整備」とし、「自然増も含め聖域なく見なおし、徹底的に効率化・適正化していく」としている。
6月30日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」は、16年度から18年度までの3年間を「集中改革期間」と位置づけ、さらに社会保障の歳出見直しに「重点的に取り組む」と明記した。
さらに、「日本再興戦略改訂(新成長戦略)」によれば、「法人税実効税率の2割台への引き下げ」と「社会保障費の自然増抑制」とともに、戦略市場創造プランの第1に「健康長寿社会」をビジネスの拡大チャンスと位置づけ、公的保険外のサービス産業活性化をめざし、医療・介護・福祉の分野を営利企業の市場として開放するとしている。弱者の切り捨てが懸念される。
アベノミクスと消費税増税および社会保障改悪によって格差は拡大し、今や6割以上の人が「生活が苦し」く、社会保障制度の拡充を求めている。今こそ、憲法、地方自治法などをふまえて、国の施策に左右されることなく、住民のくらし守る施策を最優先する自治体の役割発揮を求め、懇談を行った。

【1】県民の要望である福祉政策の充実を
1.安心できる介護保障について

(1)介護保険料・利用料について
①介護保険料の引き下げ

第6期(2015~2017年度)の愛知県の介護保険(加重平均)は5,191円で第5期と比べ、423円の値上げとなった(値上げ率8.9%)。値下げは1市、据え置きが1町のみ。他52市町村が値上げとなった。保険料段階は国基準の9段階2、10段階8、11段階21、12段階15、13段階4、14段階3、最高16段階1と、52市町村が国の基準を超えている。第1段階が基準より低いのは4市、最高倍率を基準の2倍以上にしているのは23市町村。
介護保険料は月5万円程度の年金で暮らす家計には大きな負担である。介護保険料は、サービスの利用が増えれば増えるほど、保険料に跳ね返る仕組みである。従って保険料を引き下げるには、一般会計からの繰り入れや基金の取り崩しによる繰入等が必要であり、国の負担をせめて「25%(現行20%)+調整金5%」に引き上げることを求める。保険料の段階を「世帯ごと」でなく本人所得に対する「応能負担」に改善し、更なる多段階設定と最高倍率を高く設定し保険料の基準額を引き下げる努力を続けることが大切である。
②減免制度の拡充
保険料減免は24市町村(44%)で、減免実績は3,710件、3,527万円である。利用料減免は21市町村(39%)、減免実績は7,581件、8,240万円である。2015年8月からの利用料2割負担は利用者と家族に重くのしかかっているもとで、減免制度の拡充が求められる。
③補足給付の見直し
「補足給付」の見直しによる資産要件等の書類作成に利用者家族や職員から改善要求が出されている。厚労省は「書類提出が間に合わなくても支給決定は可能」と通知しており、今後も自治体の柔軟な対応を求める必要がある。

(2)特養などの基盤整備
特別養護老人ホームの待機者は、2014年9月調査20,857人に対して2015年9月調査では17,277人であった。2015年の介護保険制度改定で入所基準が「原則要介護度3以上」とされたことですでに要介護1・2の希望者は、対象から外している市町村もある。要介護1・2の待機者が3割を占めることから、自治体による状況把握と対策は必要である。
愛知県は、「第6期愛知高齢者健康福祉計画において、入所者待機者のうち特に必要度の高い要介護度3以上の7,285人の解消を図るため、平成27年度から29年度までの3年間で、特養老人ホームや介護老人保健施設、認知症高齢者グループなどで6,537人分の整備を計画し、また、第5期計画に基づく整備で平成26年度以降に開所する3,332人と合わせ9,869人分の定員増を図る」と説明している。この県の計画では、各自治体の待機者17,703人には遠く及ばないものであり、県に計画の補強を求める。
また、施設の増設と同時に、人材の育成と定着が重要な課題となっており、対策が求められる。

(3)新しい総合事業について
2014年7月末に「新しい総合事業」についての「ガイドライン案」が、県及び市町村に示された。要支援の訪問介護・通所介護については、今後は市町村の地域支援事業に移し、サービス内容、単価、利用者負担等については各市町村任せとされた。
しかし、参議院の附帯決議にあるように「専門職によるサービス提供が相応しい利用者に対して、必要なサービスが担保される」ことが必要である。また、専門職によるサービスの代替として「多様な主体による多様なサービス」を提供するとしているが、認知症の方への対応も含めて、現行サービスを後退させるべきではない。
国の「ガイドライン案」が示したサービス利用の流れでは、「まず市町村または地域包括支援センターの窓口に被保険者が相談に来てから、明らかに要介護1以上と判断される場合や非該当の場合等を除き、基本チェックリストを活用して振り分ける」とされた。窓口対応によっては、要介護認定を受けさせない「水際作戦」が危惧される。介護保険利用希望者については、すべて要介護認定の対象にすることが求められる。
キャラバンの懇談では、多くの市町村で「介護保険の利用を申し出た場合は、要介護認定申請を受け付ける」と回答があった。介護保険の利用が妨げられることのないよう強く要望した。
①愛知社保協および保険医協会の共同調査
調査では、「新総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)の開始は、高浜市のみが2015年4月から、2016年度4月からが春日井市・北名古屋市・弥富市・豊山市の4市、同6月が名古屋市、同10月が日進市。未定の阿久比町・設楽町を除く45市町村(83.3%)が実施期限の2017年度からであった。
また、「多様なサービス」の確保について、「できる」回答は5市のみであり、「見通しが立たない」13市町(24.1%)。「その他」33市町村あるが、その内容は「検討中」「今後検討」「未定」であり、小規模な自治体にとって「多様な主体による多様なサービスの確保」は困難な状況にある。
②総合事業への移行
総合事業への移行にあたっては、要支援者の意向を十分に反映し、介護保険はずしを押し付けてはいけない。「一律な対応をするものではない」(安城市)、「期限を区切った卒業を押し付けるというような考えはない」(小牧市)、「実態に即した必要なサービスが受け続けられるよう留意する」(知立市)など、要支援者本位のはっきりした回答もみられた。
総合事業では利用者の希望に基づく選択の保障が重視されるべきである。多くの回答が「利用者の意見をきき」「意向を尊重」「状態等を踏まえる」などとしている。なによりも、「従来通りのサービス」が優先されることが必要である。
③「緩和した基準によるサービス」の導入
「緩和した基準によるサービス」の導入はサービスの低下につながる危険性が大きいが、多くの自治体が2017年4月の実施であり「検討中」とした回答が多かった。国のガイドラインどおりの姿勢の回答もあり、利用者本位の計画を求める。
また、多くの自治体が「住民ボランティアなどによる多様なサービス」の見通しは整っていない。現行サービスを自治体が維持し、多様なサービスは上乗せのサービスとするべきである。「移行に伴いサービス低下を招かないことが大切」(岩倉市)、「新たなサービスや資源をつくることは数年の期間がかかると考えている」(清須市)、「単純に多様なサービスに置き換えることは考えてない」(飛島村)など、自治体の判断で利用者本位かつサービス低下を招かない計画をつくらせていくことが重要である。介護保険利用の際の手続きや必要な事業費の確保を利用者本位の姿勢で計画策定させていくことが必要である。

(4)高齢者福祉施策の充実について
①高齢者が地域でいきいきと生活するために

「ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策」「高齢者や障害者などの外出支援のための施策」「宅老所・街角サロン施策、運営費用助成施策」などの充実を求めた。
安否確認は、ほとんどの市町村で実施されているが、方法はばらつきがある。「緊急通報システムの設置」、民生委員、老人クラブ、配食業者、乳酸菌飲料配達など。在宅介護支援サービス事業やボランティアが行っている。
生活支援についてもほとんどの市町村で実施している。その内容は在宅介護支援サービス事業の利用やボランティアの活用などとしている。
バスは43市町村(80%)の実施。タクシー代助成は50市町村(92.6%)で実施され、未実施は瀬戸市、あま市、大治町、設楽町となっている。両方未実施自治体はなくなった。
宅老所・街角サロンへの助成は23市町村(42.6%)で実施、2増えている。老人クラブ、ふれあいサロン運営費や備品費助成、ボランティア団体への助成がある。ごみ出しは26市町村(48%)で実施している。
②配食サービスの毎日実施と利用者負担の引き下げ、会食方式の実施
配食サービスは全自治体で実施され、毎日実施は2増で23市町村(42.6%)が実施。利用者負担額は250円~676円となっている。会食方式は12市町村(22.2%)で実施されている。
③住宅改修費、福祉用具購入費、高額介護サービス費の受領委任払い制度の実施を
住宅改修の受領委任払い制度は、みよし市が新たに実施し、43市町村(79.6%)となった。実績は昨年より206件増加し、16,456件となった。福祉用具の受領委任払い制度は、35市町村(65%)となった。実績は、昨年より222件増加し、12,129件となった。
高額介護サービス費の受領委任払いは、昨年同様、豊田市のみの実施に留まっている。

(5)要介護認定者の障害者控除の認定について
介護保険の要介護認定を受けている人は「障害者等に準ずる」と考えることができ、「障害者控除対象者」とすることが妥当である。
県内での障害者控除認定書の発行数は、2013年の42,322件から2,814件増え、45,136件となった(前年比107%)。調査開始の2002年からは12倍と発行数は増加している。
これは、「要介護認定者に障害者控除認定書を」と毎年粘り強く要請してきた成果の表れである。しかし、要介護認定者数と比べて依然として少数であり、制度の拡大と周知の徹底で住民の利益を守る必要がある。
認定書を要支援2以上に発行するのは8市町あり、要介護1以上に発行する28市町村と合わせ、39市町村(72%)が要支援2以上。
障害者控除はあくまで税法上の措置であり、要介護認定者を「市町村長が身体障害者等に準ずる」と認めれば対象とすることができる。ただでさえ重い介護保険料・利用料負担をしている要介護認定者及びその家族の税負担を軽減することは、何ら違法ではない。全市町村で、最低でも要介護1以上を障害者控除認定書の発行対象とすることが妥当と考えられる。
要介護認定者に障害者控除認定書を自動的に送付しているのは、一宮市、春日井市、江南市、小牧市、稲沢市、知立市、岩倉市、日進市、東郷町、豊山町、扶桑町、阿久比町、武豊町、幸田町、豊根村、瀬戸市、江南市、大口町、長久手市、常滑市の20市町村(37%)。また13市町村(24%)が介護認定者に個別の案内や申請書を送付している。これにより認定書または申請書を送付しているのは33市町村(61%)へと広がっている。
介護保険認定申請時の「障害高齢者自立度」や「認知症高齢者自立度」の結果を参考に、障害者控除の対象としている自治体もある。申請主義ではなく、自治体が持つ要介護認定者のデータを元に、自動的に対象とし個別送付すべきである。

2.生活保護について

生活保護引き下げは社会保障改革推進法実施の最初の標的として、平均6.5%引き下げが2013年8月、2014年4月、2015年4月と3回に分け引き下げ、加えて住宅扶助費や冬季加算の引き下げも実施された。
生活保護引き下げの取り消しを求め、全国各地で「取消」をもとめ裁判が始まった。愛知では、2014年7月13日に原告16人が、名古屋市、豊橋市、刈谷市、高浜市を相手取り生活保護基準の引き下げ取り消しを求め、また国の責任を問う国家賠償請求も合わせて提訴した。現在全国では27県から854人が裁判を闘っている。
①生活保護が必要な人にただちに支給を
2015年7月分の被保護者調査の結果を発表した。それによると、7月時点の生活保護受給世帯は前月比2,964世帯増の162万8,905世帯となり、3カ月連続で過去最多を更新した。前年同月比では1万9,911世帯増加した。
世帯別にみると、高齢者世帯(男女とも65歳以上の世帯、またはこれらに18歳未満の未婚者が加わった世帯)が全体の49.3%に当たる79万8,609世帯で最多。
厚生労働省は「高齢者の単身世帯において、年金が足りずに生活が苦しくなって生活保護を受給する世帯が増えている」と分析している。
日本の生活保護の受給者は、人口の1.7%。この割合は、ほかの先進諸国に比べても非常に低いレベル。ドイツでは、この割合は9.7%、フランスでは5.7%、アメリカでは食費扶助を受ける割合が15%(2014年)となっている。日本の生活保護受給率は、世界的に見ると、大変低いと言える。実際、捕捉率はわずか16.8%に止まっている。
生保申請者が増える中で福祉事務所の窓口では、「働けるのだから働け」等と追い返す「働けるからムリ」型、口頭でも有効な申請を「書類を一式全てそろえなければ申請は受け付けない」という「申請煩雑化」型など、申請させない「水際作戦」の実態が多数報告されている。愛知県全体で、2014年度の相談件数35,442件、申請件数11,614件、保護開始10,871件。受給件数は、2015年4月現在60,483世帯79,171人となっている。
2013年4月に生活保護法改悪が行われたが、運動の成果によって、2014年8月には口頭でも申請を受け付けることや、扶養義務等は従来通りの取り扱いとする通達も出されている。
自治体キャラバンではこれを踏まえて、申請書を渡さない、親族の扶養について問いただすなど、相談者・申請者を追い返す違法な「水際作戦」を行わないこと、生活保護が必要な人には早急に支給することを求めた。
懇談ではほとんどの自治体が、そのようなことがないよう努めているとの回答であった。
また、親族による扶養義務の強化などを盛り込んだ2013年生活保護法改悪後、申請者の意向に反して親族に扶養義務照会が行われ、申請を断念したケースも出ている。このような福祉事務所の対応は、申請権を侵害するものであり、「改定後も、いままでと運用は変わらない」とした政府の国会答弁にも反することから、厳に戒めなければならない。
②生活保護費引き下げに連動する諸施策に独自の対策を
生活保護基準は、住民税非課税限度額の算定、就学援助など国民の生活を支えるさまざまな制度の“物差し”となっている。厚生労働省は、生活保護基準の引き下げに伴い、38の制度に影響が出るとしていたが、独自に影響調査した北海道帯広市の場合では、市独自の制度を含め51もの制度に影響することが明らかにされている。
2013年12月の閣議により、所得税の課税最低ラインを生活保護基準引き下げに伴って下げることを「1年間棚上げ」する方針がとられた(3000万人近くに影響があったという試算もある)。但し、棚上げは当面1年間に過ぎず、2015年度以降は切り下げられた。政府は自治体に対して、さまざまな制度利用者に生活保護基準「見直し」の影響が及ばないよう「依頼」したものの財政支援はない。
就学援助をめぐっては、文部科学省がおこなった2014年度の就学援助実施状況調査の結果では、生活保護の基準引き下げに伴い、全国の4%にあたる71自治体で、これまで就学支援を受けていた児童・生徒が対象外となる可能性があることがわかっている。
キャラバンでは、生活保護費と連動する諸施策の基準引き下げが起こらないよう要請、多くの自治体が「できる限り影響を受けないよう配慮」するとしているが、中には「制度ごとに判断していくもの」など、具体的に手が打たれないままのところも多い。
またアンケートで、引き下げに伴って連動する制度の有無について尋ねたが、26自治体が無回答であった。生活保護の担当課だけではその影響について全体を把握することは難しく、自治体の責任として影響を調査し具体的に手当てすべきである。
③ケースワーカーなど専門職正規職員の増員を
ケースワーカーの数は社会福祉法によって規定され、ケースワーカー1人あたりの生活保護受給世帯数は「市部で80世帯」・「郡部で65世帯」を受け持つことを標準的なケースとしている。、県下でのケースワーカー一人あたりの担当数は、2015年4月段階で春日井市113世帯162人や名古屋市の109世帯140人など市部で12市が基準を超え、ている。
国は福祉職員の配置基準を2013年より改め、「人口10万人の市では15人(2人増)」・「人口20万人の郡部では22人(3人増)」に増員するとした。これに伴う経費は地方交付税により捻出されるが、交付税の使途は各自治体で決めることができるため、ケースワーカーの増員は各地方自治体の判断次第となっている。
また、受給後の就労支援や自立に向けたきめ細かな支援には、ケースワーカーの数だけでなく、豊富な経験と知識を持つ職員が必要だが、平均在任年数が3年を超えるのは3市、1福祉事務所(郡部)しかなく、経験豊かな職員の配置や研修の充実が必要である。
厚生労働省は2012年3月、「警察官OB等を福祉事務所内に配置すること」を積極的に検討するよう指示。アンケートでは、13自治体に22人が配置されており、2自治体が検討中となっている。しかし前年に比べ、海部福祉事務所で配置がなくなっており、昨年「検討中」と回答していた常滑・知立・清須市では配置されなかった。
社会福祉行政と警察行政とはもともとその目的、性格を全く異にしており、これを単純に一本化しては社会福祉の目的を達することができない。市民と直接やりとりする現業に元警察官が社会福祉主事の資格もなく従事することは、市民の生存権行使を阻害する事態をもたらす危険性がある。社会福祉主事の資格を有しない警察官OBを生活保護の現業業務に従事させることは生活保護法第21条、社会福祉法第15条に違反し・違法であることが明らかである。
④生活困窮者自立支援事業は自治体直営で
生活困窮者自立支援事業については、町村を除く38市で2015年度からの準備検討が進められているが、直営を明確にしているのが10市、直営と委託両方が1市、委託が4市となっている。委託を決めている4市の内、名古屋市以外は社会福祉協議会が委託先となっている。自治体が庁内連携を強め、住民の福祉要求を把握し満たした制度設計を行うためにも自立支援事業等は直営で行うのが望ましい。
また、この事業が「沖合作戦」とならないように就業支援に偏らず生存権保障を求めたことについては、「適切に対応」「生活相談窓口に繋ぐ」としており、不当な扱いが発生しないように注視していく必要がある。
⑤「住宅扶助」「冬季加算」引下げに対し
厚生労働省は、2015年7月から生活保護の住宅扶助基準の改定を実施。多くの地域で下がり、年間190億円の削減効果が見込まれている。厚生労働省は、削減の影響を受ける世帯が44万世帯(生活保護世帯の約3割)に及ぶことを明らかにしている。
しかし、厚生労働省は、通知(平成27 年4 月14社援発 発0414 第9号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について」)を発出し、新基準を適用しなくてよい、幾つかの例外取扱いを示しており、この例外措置について具体的な事例を記載したお知らせ文書を全生活保護世帯に送付・周知すること、当事者が望まない地域や劣悪な物件など、意に反した勧奨を行わないよう求めた。38市中29市が周知を実施したと回答し、実施しなかったとする9市においても、陳情に対する回答を見ると田原市は該当者がいなかったためで、6自治体では該当者に個別周知された。豊田市とみよし市は文書回答がなく不明。
冬季加算については、一部地域では支給月数が増やされる一方、各月の支給金額は大幅に減らされ、単年度で30億円の削減効果が見込まれている。このため、特に寒冷地では暖房費を削らざるを得ず、高齢者や傷病者等の健康に悪影響が出ることが懸念されている。
厚生労働省社会・援護局保護課長は、「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について(平成27年5月14日付)」という通知を出して、重度障害者加算を算定している人や要介護度が3以上または傷病・障害等による療養のため外出が著しく困難であり常時在宅をせざるを得ないなどの場合に1.3倍基準を設定できることを記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知するよう求めた。全保護世帯への文書通知や、該当世帯への個別対応など対応は様々であるが、周知については概ね実行されるようであった。ただ、中には今回の改訂によって引き上げにあることを理由に周知しないとした市もあり、1.3倍基準設定の趣旨が正しく理解されていないと思われる市もあった。

3.税の徴収、滞納問題への対応等

①滞納整理機構へは不参加を
徴税を強める愛知県地方税滞納整理機構(以下、機構)について、「徴税は自治体の業務である」ことをふまえて、機構に税の徴収事務を移管しないこと。参加していない市町村は今後とも参加しないことを求めた。
機構は、市町村民税の滞納整理を推進すると共に、市町村の税務職員の徴税技術の向上を図ることを目的に県内6カ所に設立され、2011年4月から税金等の徴収及び滞納整理をおこなっている。当初3年間の予定だったが、市町村の要望が強いとのことで2017年3月まで延長された。
機構送りになった事案について、市町村窓口は「機構送りになった事案だから」と「相談」の対象から外されるなど、住民に不利益が生じている。機構まかせにせず、市町村が責任を持って相談に乗ることが重要であると要請した。
2014年度は豊明市が脱退し、機構には47市町村が参加している。参加していないのは名古屋市(独自の「債権回収室」設置)、岡崎市、春日井市、豊田市、豊明市、大口町、幸田町の7市町である。
2014年度「約47億41百万円の滞納金額の引継ぎを受け、24億88百万円を徴収(徴収率52.5%」「4年連続で50%超える実績」と評価している。
機構への引き継ぎ基準は、「滞納額50万円以上かつ徴収困難」などあるが、一方で「少額でも引き継ぐ」としたのが24市町村(参加市町村の50%)あり、「100件を機構に引き継ぐ」と回答している自治体もあり、機械的な対応がされていないかの調査が必要だ。機構送りになった事案には国保税も含まれており、その滞納者に保険証が届いているか定かでなく、医療を受ける権利が奪われていないか懸念される。
②税の滞納世帯の解決は、住民の実情をよくつかみ、相談にのるとともに地方税第15条(納税の緩和措置)①納税の猶予②換価の猶予③滞納処分の停止の適用をはじめ、分納・減免などで対応するよう求めた。また、児童手当を差押えた鳥取県の処分を違法とした広島高裁判決を踏まえ、差押え禁止財産の差押えをしないことも求めた。整理マニュアルがあるのは14市町村のみであった。
今回初めてアンケートで滞納している税の科目を聞いた。科目、自治体によっては5割近くの世帯が滞納しているものもある。払いきれない税金が課せられているのではないか。積極的に地方税法第15条(納税緩和措置)①納税の猶予②換価の猶予③滞納処分の適用をはじめ、減免、分納などでの対応が求められている。

4.国保の改善

(1)国の財政支援の強化で国保財政の安定化と保険料の大幅引き下げを
国は、国保制度改革(2015年)のなかで、今年度は低所得者の保険料負担軽減などのために市町村に「保険者支援制度」として1,700億円の公費を投入する。しかし、国庫負担の定率負担を引き上げるのではないことと、市町村が現状で実施している一般会計法定外繰入(3,900億円)と比べると少ないことなど不十分なものとなっている。国保には「所得水準が低い」「保険料負担が重い」などの「構造的問題」が数多くあるが、国の財政支援を定率負担部分で拡充するなどの対策が不可欠である。
1,700億円の「保険者支援制度」の財政改善効果について、政府は被保険者一人あたり年額約5,000円(引き下げられる)としている。しかし、一般会計法定外繰入を実施している市町村は、法定外繰入を減らすために活用し自動的には保険料引き下げにはならないことに留意が必要である。名古屋市は保険者支援制度を活用し、2015年度の一人あたり平均保険料を3,213円引き下げた。
その他、32市町村が一人当たり調停額を引き下げた。また、35の市町村が一般会計からの一人あたり法定外繰入額を増額した。法定外繰入額を増額し国保料(税)を引き下げた市町村は、20市町村あった。
2015年の国保法改正で「都道府県は、当該都道府県内の市町村とともに、国民健康保険を行う」とされた。市町村は、保険者として被保険者の資格取得・喪失に関する事項、保険料の徴収、個々の事情に応じた窓口負担減免などは継続する。
高すぎる国民健康保険料の引き下げにむけ、一般会計からの繰り入れや独自減免制度の拡充を求め、県民の世論を高める必要がある。

(2)国保料(税)と減免制度
2014年6月1日現在、愛知県内の国保加入世帯数は1,125,791世帯で、そのうち約15%に当たる157,322世帯が保険料(税)を滞納し、短期保険証が47,339件、資格証明書が4,990件発行されている。加入者の15%が滞納となる保険料(税)はそもそも高すぎる。
モデルケースでの国保料(税)のアンケートを行った。①現役40歳代夫婦と未成年の子ども2人の4人世帯、②65歳以上74歳以下で年金生活高齢者夫婦のみ2人世帯、③65歳以上74歳以下で年金生活者・独居世帯―の3つで、世帯所得100万、200万、300万をモデルにおこなった。①のケースに世帯所得100万で国保料(税)が10万円を超える市町村が51市町村であるなど、とても払える保険料(税)ではないことがよくわかった。国に対し国庫負担を元の45%に戻すよう要望するとともに、保険料(税)の引き下げ、市町村独自の低所得者減免の拡充などが求められる。
「低所得者向けの減免」は、23市町村(42.5%)が実施している。新規は江南市、資産割廃止に伴う激変緩和を知立市が行った。また、「収入減の減免要件」は引き続き阿久比町を除く53市町村(98%)で実施しているが、要件の緩和が必要である。
また、各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。国の制度改善と合わせ、自治体の努力で保険料(税)の引き下げ等の改善を求めたい。

(3)保険料(税)滞納者への対応について
ア.資格証明書・短期保険証など
2015年6月1日現在、( )内は前年数字。
短期保険証は、47,399件と291件の微減となった。滞納世帯に対して、蒲郡市78.3%、大府市78.6%、北名古屋市74.9%、大治町90.2%が高い割合で発行している。
資格証明書は、愛知県合計で4,990件と587件減少したが滞納世帯の3.2%に発行されている。資格証明書を1枚も発行していないのは34市町村(63%)になった。資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは20(17)市町村37%、「独自に配慮」は18(20)市町村33%である。
証の発行はしているが、本人に証が渡っていない「留め置き」は5,870(5,182)人、そもそも証(短期証も資格証明書も)を発行していない(作成していない)「未交付」は3,197(3,096)人、合計9,067(8,278)人が無保険状態にある。
滞納世帯であっても子どもの無保険をなくすということで2009年4月から、6カ月の短期保険証を発行している。愛知県で資格証明書世帯に18歳年度末までの子どもがいるのは、527(558)世帯あり、うち短期保険証が渡っていない「未解消」は昨年に引き続き名古屋市の29(38)世帯である。保険証が渡らないと、子ども医療費助成制度が利用できず、必要な医療が受けられなくなる事態も生じるため一刻も早く解消することが求められている。
資格証明書世帯にあっても、「病気などで一時的に支払いが困難」「受診の必要がある」場合は申し出によって短期保険証を交付することが2009年1月20日付事務連絡で示されている。
医療を受ける権利を奪いかねない1カ月の短期保険証など、6カ月未満の短期保険証は発行するべきではない。
各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。
イ.滞納者の差押え
滞納者世帯数157,322に対し差押え件数・金額は、12,735件(前年▲687件)、4億8千万(前年1億2千万増)。
差押え物件は、不動産1,360件と預貯金8,513件、生命保険983件、その他1,929件。なかでも名古屋市の差押えは2008年164件から増加し2014年3,286件となっている。
滞納世帯の多くは、払いたくても払えないという世帯が圧倒的であると考えられるが、収納率アップのための差押えを含めた徴収強化というのは、国保法第1条「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とする」との定めからみても許されない。
なお、国税徴収法第48条は、「超過差押え及び無益な差押え禁止」を明記し、また国税徴収法153条および地方税15条7項では、「滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させる恐れのあるときは、差押えをおこなっていけない」としている。
憲法25条、国保法1条の精神にそった対応が強く求められる。
ウ.一部負担金減免
一部負担金の減免制度を設けているのは50市町村(93%)となった。未整備は新城市、豊根村の2市村であり設楽町、東栄町は検討中である。生活保護基準を基にした減免は、安城市・小牧市・岩倉市が新規参加で49市町村(91%)となった。
2014年度の減免実績は、10市町で126件、金額14,186,463円である。
引き続き、住民にわかりやすいリーフの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度の拡充と申請の促進運動が必要である。

5.福祉医療制度について

(1)福祉医療制度を縮小せず、存続拡充を
愛知県は福祉医療助成制度に一部負担金の導入を目指したが、県民や社保協・医療関係者の反対にあい、2013年6月に断念を表明した。しかし、所得制限の導入については「研究を引き続き深めていく」とし、2017年度に向けた福祉医療制度の見直しを進めている。この動きは各市町村へも影響を及ぼし、子ども医療費助成制度で、一部負担を導入していた一部市町村が現物給付を表明した。
福祉医療制度については、「現行制度維持・存続」とする回答が多かった。
精神障害者医療費助成制度は、愛知県基準が精神障害者保健福祉手帳1・2級所持者で、かつ、自立支援医療受給者証(精神通院)所持者に対する精神疾病(入・通院)のみとなっている。
しかし、精神疾患が医療計画の5疾病・5事業に位置付けられた2013年以降、各市町村で精神障害者医療費助成制度の対象拡大が相次いだ。
今年度も精神障害者保健福祉手帳1・2級所持者に対して、江南市・新城市・弥富市(2015年4月1日)、津島市(2015年8月1日)が全疾病へ対象拡大、美浜町が現物給付化(2015年10月)、瀬戸市が、精神障害者保健福祉手帳1・2級所持者で、かつ、自立支援医療受給者証(精神通院)所持者に対して、2015年10月1日から全疾病へ対象拡大するなどの前進が見られた。
今後も引き続き、対象者の拡充を各市町村に、また愛知県へは、県基準の拡大(一般疾病も対象、入院医療費助成の現物給付化)を求めていく。キャラバン実施後も大口町で「福祉医療助成に対する国民健康保険の国庫負担金減額措置の廃止を求める意見書」が採択されるなど、改めて廃止を求める声が挙がっている。
これら福祉医療制度は、今後も各市町村へ存続・拡充を要望するとともに、愛知県に対して、所得制限の導入断念、対象者の拡充を求めていく必要がある。

(2)子ども医療費助成制度
愛知県制度は通院で義務教育就学前、入院で中学校卒業まで(2008年4月実施)となっている。
昨年のキャラバン要請行動以降、稲沢市が2015年4月から中学校卒業まで自己負担なしへ拡大した。この現物給付への流れは加速している。
通院では、一宮市が「小学校の1割自己負担(2割を償還払い) 市内医療機関は現物給付」、江南市が「小学校4年生以上の1割自己負担(2割を償還払い)」、犬山市が「小学校4年生以上中学校卒業までの1割自己負担(2割を償還払い)」を、2016年4月から1割の自己負担を廃止し、自己負担全額分の現物給付化を表明した。
また、半田市は「中学校の1割自己負担(2割償還払い)」を、2016年4月から現物給付化すると表明している。
これらにより、通院で中学校卒業まで現物給付による助成を行う市町村が2016年4月時点で46市町村(85.1%)となる見込みだ。
入院では、一宮市、半田市、犬山市、江南市が償還払いの対応を廃止し2016年4月以降中学校卒業まで現物給付化することが検討されている。
入院でも県基準の「中学校卒業」まで現物給付により対応する市町村は46市町村(85.1%)に拡大の見通し。なお、県基準を拡大して実施しているのは7市町村(13.0%)である。
愛知県内で全市町村が県基準より拡大し、通院で中学校卒業まで助成が52市町村(96%)、うち全額助成が49市町村(90.7%)に、18歳年度末まで助成が6市町村(11%)、うち入院通院とも全額助成が東郷町・飛島村・設楽町、入院のみ全額助成が安城市・南知多町と拡大している。
しかし、津島市と北名古屋市では、所得制限が導入されている。また、愛知県の補助基準を超える部分への自己負担も、一宮市、犬山市の見直しがされれば、豊橋市、半田市、常滑市、江南市、北名古屋市、あま市、南知多町の6市町が残り、改善が求められる。
全市町村が県制度から拡大したいま、全市町村が18歳年度末まで対象とするためにも、県制度を通院も中学校卒業までを対象とすることが必要であり、国の制度としてせめて義務教育就学前までの医療費助成制度を創設することが強く求められている。
国は、2015年9月から「子どもの医療制度のあり方に関する検討会」を開始し、2016年春をめどに報告を取りまとめるべく、動き出している。厚労省の唐沢局長は、「少子高齢化が一層進行する中で、今後の重要課題である子育て支援や地方創生、地域包括ケアの構築など今日的観点から」また、「地方自治体による子どもの医療費助成が年々拡大される」ことなどを踏まえ幅広い議論が進められている。福祉医療助成制度に対する国保の国庫負担削減については、全国知事会・全国市長会からも廃止の要請がなされている。

6.子育て支援などについて

①ひとり親世帯に対する生活支援施策の具体化
2013年に「子どもの貧困対策推進法」が成立し、14年8月に「子どもの貧困対策に対する大綱」が決定され、2015年はこれにもとづき地方自治体での具体化の推進が求められた。
2012年調査で日本の貧困率は、全体16.1%に対し子ども16.3%で、1985年の統計開始以来で初めて、子どもの貧困率が上回った。なかでもひとり親世帯は54.6%となっている。子供の貧困率は2003年の13.7%から2.6ポイントも上昇、その数は305万人にもなる。
2013年調査でとりわけ就労母子家庭の就労は、非正規が47%にのぼり母自身の平均年収は223万円(就労収入は181万円)となっている。世代間での「貧困の連鎖」は、特に母子世帯で顕著であり、これをいかに断ち切るかが優先すべき課題となっている。
「大綱」では貧困対策の当面の重点施策として、教育の支援、生活の支援、保護者の就労の支援、経済的支援を掲げ、「貧困世帯」について、高校等進学率、大学等進学率、就職率などの低い現実の指標を示し、その克服を課題としている。
またこれまでのひとり親家庭等の自立支援策の拡充を求めているが、厚生労働省の2013年度実績のまとめで愛知県は、市を対象とする自立促進計画を持ったのは18/38市、全市町村を対象とする生活向上事業を実施しているのは10/54市に止まっている。しかし自立支援(教育・高等教育職業訓練)給付金事業は全市、日常生活支援事業は30/54市町で実施している(アンケート項目に入れていないため、その後増加は見込まれる)。
自治体キャラバンへの愛知県の文書回答では、これまでの自立促進計画の推進に加えて、教育・学習支援ついて市町村へ取り組みを促すと答えている。学習支援は豊橋市、半田市、常滑市で実施され、春日井では実施に向けて検討中と文書回答で記している。
また多くの市町で児童クラブの負担金減免が行われているが、児童・生徒の「居場所づくり」が必要である。NPOなどで取り組まれている、「無料塾」や「こども食堂」のとりくみと、自治体がどうタイアップするかが課題である。「こども食堂」について、厚生労働省は2016年4月から運営費補助を予定している。
②就学援助制度の改善
県内の就学援助の認定制度は、生活保護基準の1.5倍以上としているのが4市町(7.4%)、1.4以上が8市町(14.9%)、1.3以上が21市町村(38.9%)。2013年以降生活保護引き下げへの対応もあって、岡崎市、半田市、豊川市、碧南市、東海市、大府市、知多市で基準を引き上げた。半数以上が1.0~1.27倍となっているが、これでは支給対象となるのが、生活保護家庭よりも可処分所得が低い家庭となる事態がでてくる。
申請窓口は、「市町村窓口」14、「学校」7、両方を利用できるのが33市町村(61%)になっている。民生委員の証明等が必要な自治体は、稲沢市がその他経済的に困窮している者に対してのみとしている以外は、不要となった。
支給項目の基準では2010年から「クラブ活動費、生徒会費、PTA会費」も対象となったが、拡大しているのはまだごくわずかである。引き続き、就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等と義務教育の無償化を求める。
就学援助の2015年度見込みは63,064件(受給割合7.89%)と、前年の2014年度の7.93%をしたまわっている。
最も高いのは豊橋市で5,479件(16.9%)、名古屋市24,360件14.8%、津島市687件12.6%などだが、10%を超えているのはわずか8市町である。愛知県7.93%は全国15・64%にたいし、その半分に過ぎない。
これまでの受給者がひきつづき受給できるように、生活保護基準引き下げ後も、引き下げ以前の基準や児童扶養手当の基準で対応するなどの自治体も多いが、「何もしない」と言う自治体もあり、一層の改善が求められる。
就学援助予算の2015年度見込みは63,064件(受給割合9.71%)4,418,786千円と、前年の127件216,904千円増である。
③「義務教育は無償」の立場から学校の給食費無料化を
子どもの「貧困」が社会問題となっているなかで給食費が払えず食べられない事態が生まれており、貧困がすすむなか、給食が子どもの命綱となっている例もみられる。
消費税増税の影響などで、2013年度比で給食費の値上げが、2014年度の19自治体から2015年度は23自治体に広がり、一食当たり全県平均小学校で5.56円、中学校で6.5円値上がりしている。消費税増税分公費で負担との自治体も増えている。
給食費無償に向けては、岡崎市では「意義、目的を整理し、どのような手法が考えられるか」検討を進めているとしている。大口町は給食費半額補助、大治町は1人月額200円補助、飛島村は1人月額600円補助、長久手市は1食21円補助、愛西市は1食10円補助と、補助する自治体も増えている。岩倉市では義務教育の第3子以降を無料にしている。
給食費未納者が増えているなか、就学援助をすすめる自治体は増えているが、児童手当からの天引きや、督促状の発送に加え、法的措置もとるとしている自治体もある。名古屋市では2014年度から保護者に対し、給食費を期日までに納入することを約束する「申込書」を入学時に提出させているところもある。
全国でも給食費の無料化を実施する自治体(北海道三笠市、山口県和木市、茨城県大子町、山梨県早川町など)があり、「給食費無料に」の要求は高まっている。憲法26条「義務教育は、これを無償とする」の立場から、学校給食を無償とすることが求められており、少なくとも、給食費未納で給食が食べられない子どもを、早急になくすことが求められる。
また2013年度比で給食のセンター方式が小学校58.8%から60.4%へ、中学校62.8%から62.9%へ増加。なかでもセンター方式での委託は小学校30.1%から37.7%へ、中学校32.6%から38.5%へ、急速に増加している。こうした中で名古屋市の小学校が自校直営を守ってきているが委託化の動きもある。
④公的保育による保育実施を
児童福祉法第24条1項に基づく、保育を希望する児童には公的保育による保育実施を。認定子ども園、保育所、地域型保育事業による小規模保育や家庭的保育等施設形態の違いによって受ける保育に格差がないように求めた。
保育実施義務については、待機児童解消を行うことによって果たしているとする回答もあるが、保育を必要とする・保育所を希望する児童に保育所に入所させることで市町村が24条1項の保育実施義務を果たしているとする回答もあった。24条1項を形骸化させないためにも、「保育所」での保育を希望する保護者には、自治体の保育責任として「保育所」での保育を受けさせることが必要という認識に立つよう、自治体に求め続けることは重要。
ほとんどの自治体が、施設形態の違いによる保育格差が生じないように努めるとの回答。実現するための内容として、国の基準どおりだから、市の条例で定めたから、格差は生じないとする市町村が多い中、犬山市が、「地域型保育事業も公立の基準に合わせた」、江南は「一部国より上乗せして条例に」、岩倉は「事業所内保育で一部国を上回る基準」等と具体的に回答があった。
認定子ども園や地域型保育事業などを設置していないと明記した回答は、稲沢市、尾張旭市、田原市、愛西市、大口町、扶桑町、阿久比町、南知多町、の8自治体。弥富市は地域型なしと明記。本来は、保育を希望するすべての子どもが認可保育所で保育される権利がある。認可保育所との同等の基準を求め続ける必要がある。
また、育休取得時の上の子の保育については、年齢に関わらずそのまま通園を保障している自治体は、名古屋市・豊橋市・一宮市・津島市(希望者は)・田原市・東郷町・大治町・蟹江町・美浜町・東栄町・豊根町、の11自治体。2歳以上はそのままの自治体は3自治体。3歳以上児はそのままという自治体は28自治体。定員に余裕があれば、という条件が付くところもある。退園させる自治体は豊田市、稲沢市の2自治体。保育時間認定のところでは、32自治体は中途変更や混乱はないと回答。混乱があるとした自治体は、14自治体。保護者の就労形態などなどにより中途変更があるが、混乱はないという自治体が7自治体となっている。
⑤児童虐待の現状と対応、早期発見、未然防止対策について
児童虐待については。ケースが多様化・複雑化し増加傾向にあり、専門知識を持ち経験ある職員の配置や関係機関との連携が引き続き課題となっている。早期発見、未然防止対策としては、ほどんどの市町村で要保護児童対策地域協議会が設置され、毎月の会議が開催されている。また、職員研修、ホームページ・広報での啓発、保健センターや民生委員による赤ちゃん訪問、保育所・幼稚園・小中学校・学童保育等との連携が実施されている。今後とも、虐待を増やさないよう、対応強化が求められる。
⑥小中学校にカウンセラーや相談員の配置
多くの自治体で配置されている。また、いじめ防止のための基本方針も半数近くの自治体で策定され、学校・教育委員会等との連携が図られている。学期毎にアンケートを実施する、「一日観察日」を設ける、「いじめ対策人権サポート委員会」を年2回開催するなど、より踏み込んだ対応策を実施している自治体もあり、今後とも、早期発見・早期対応のための様々な対策が求められる。

7.障害者・児施策の拡充について

昨年度に引き続き、福祉サービスがどのように広がったかを確かめた。また、障害者が65歳になると居宅介護が障害福祉サービスから介護保険優先とされている実状も確かめた。
① 訪問系各サービスの支給状況について
愛知県内の主要市で「居宅介護」の支給状況を比較すると、支給者数では春日井市以外は増加。平均時間では、岡崎のみ10時間増加し、名古屋では1時間減、その他は微増・減だ。名古屋では「支給時間の締め付けが強化されている」との声も上がっている。
重度訪問介護・行動援護・同行援護の支給者数状況をみると重度訪問介護:11市12町村・行動援護:8市6町村・同行援護:1市9町村で支給者が「0」となっている。重度訪問介護の支給者が「0」の市が2市増えている。また、重度訪問介護の支給者「1人」が11市町村と昨年と変わりがない。2014年度から重度訪問介護の対象者が知的・精神障害に対象拡大されているが、名古屋市でも重度訪問介護の支給者が1,514人から1,449人へと減っている。利用者条件の制限に加え重度訪問介護の報酬の低さもあり、利用できる障害者が少ないとともに、対応できる事業所も少ないことが背景にある。行動援護・同行援護の支給者数も大きな変化はなく、そもそも利用できる体制・基盤がない。こうしたことに対して、愛知県は「参入を促す」に終わっている。
② 地域生活支援事業の移動支援
平均支給時間が豊橋:8.8時間、半田:9.7時間、刈谷:9.8時間、犬山:2.6時間など、月に1~2回の余暇を楽しむこともできない。市町村格差が端的にあらわれている。
③ 計画相談支援の利用実績
2014年度中の完全実施について昨年の回答では8市4町が「完全実施の見込なし」と回答していたが、18市7町が「完全実施のできていない」と回答。「あり」とする中にも「計画相談事業所が少ない」「相談員不足」が昨年と同様に指摘され、県や国の意向どおりにはすすんでいない。
④ 障害福祉サービスと介護保険サービスの併給
併給者数では名古屋が昨年比121.8%と大幅に増加している。他市でも増加傾向にあるが、併給についてはケアマネが障害福祉サービスを理解していないことから増加の歩みが遅い。
障害者の高齢化への対応は、介護保険の枠にはおさまらない。訓練等給付支給決定者が少なからずいる点も障害福祉サービスだからといえる。
厚生労働省は1月20日、65歳以上の障害者が介護保険サービスを受ける際に支払う利用料について、減免措置を行う方針を決めた。
今国会に提出する障害者総合支援法の改正案に盛り込み、成立すれば2018年度から実施する。
障害福祉サービスは利用者の多くが無料で使えるのに対し、介護サービスでは1割の自己負担が発生する。障害者総合支援法には障害者でも65歳以上になると介護サービスが優先適用される「介護優先原則」があり、障害者団体がこの原則を外すよう求めていたものである。 しかし、「介護保険優先」は維持されるため、障害者支援法等見直しでの改善が求められる。
⑤ 通院時の院内介助及び入院時のヘルパー派遣について
通院時の院内介助は、介護保険で2013年度28市町(51.9%)は2014年度33市町(61.1%)、障害福祉サービスで2013年度23市町(42.6%)は2014年度25市町(46.3%)といずれも増加している。
入院時のヘルパー派遣は、介護保険で2013年度8市町(14.8%)が、2014年度7市町(12.9%)、 障害福祉サービスで2013年度2市町(3.7%)が2014年度2市町(3.7%)と横ばいである。
⑥ 障害者・児の相談支援事業について
障害者・児の相談支援事業について、国にむけて拡充を要望しているところは、名古屋市・豊川市・犬山市・稲沢市・新城市・扶桑町の6自治体。幸田町は県へ要望。国の制度内で行い、動向を見守る、国へ要望する予定がないなどは、岡崎市・瀬戸市・安城市・東海市・江南市・豊山町・大治町・南知多町の8自治体。独自補助(金)を実施しているとはっきりわかる自治体は、名古屋市・弥富市・東郷町の3自治体。ほとんどの自治体が、自治体直雇用(公務員)の職員で対応するのではなく、事業委託して実施しているようである。
相談支援事業は、国の報酬では不十分と考えている自治体が複数あるような実態。引き続き、自治体から国へ制度充実の要望を上げてもらうこと、自治体独自補助の追及が必要である。

8.予防接種、健診・検診

① 任意予防接種助成事業
任意予防接種助成事業は、定期接種化を見据え様子見と回答する市町村が多くみられた。
しかし、この間、名古屋市、豊橋市(B型肝炎)、豊田市・みよし市(おたふくかぜ、ロタ、B型肝炎)、田原市・設楽町(ロタ)が助成を開始している。また津島市は、子育て応援事業の子育て応援券でこれら予防接種に利用が可能としている。
定期接種化を待たず、「ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐ」の考えの下で、全市町村での助成制度実施が求められる。
ア. おたふくかぜ
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチンの任意予防接種への助成は、この間、豊田市・みよし市が新たに実施し、名古屋市・豊橋市・豊田市・小牧市・みよし市・飛島村・東栄町・豊根村の8市町村(14.8%)となった。小牧市・東栄町・豊根村が窓口負担なしで実施している。
重症化すると、無菌性髄膜炎や重度の難聴、合併症を引き起こすこともある。世界の国々と同様、2回の接種を定期接種化することが求められる。
イ. ロタウイルス
ロタウイルスワクチンの任意予防接種への助成は、この間、豊田市・田原市・みよし市・設楽町が新たに実施し、名古屋市・豊橋市・豊田市・安城市・田原市・北名古屋市・みよし市・設楽町・東栄町・豊根村の10市町村(18.5%)となった。窓口負担なしでの実施は、東栄町・豊根村のみ。
ロタウイルスワクチンの接種で重症化を90%防ぐことができる。WHOはこのワクチンを、子どもが接種する最重要ワクチンの一つに位置付けている。
ウ. B型肝炎ウイルスワクチン
B型肝炎ウイルスワクチンへの助成を実施する自治体は現れてこなかったが、この間、名古屋市・豊橋市・豊田市・みよし市の4市(7.4%)が助成を開始した。窓口負担なしで実施する市町村はまだ無いが、徐々にその必要性が認識され始めてきている。
B型肝炎ウイルスワクチンは、1992年にWHOが世界中の子ども達に生まれてすぐに接種するよう指示しており、既にほとんどの国で定期接種化されている。わが国においても定期接種化への動きが見られるが、各市町村では定期接種化を待たず、助成することが求められる。
エ. 高齢者用肺炎球菌ワクチン
高齢者用肺炎球菌ワクチンは、2014年10月から定期接種化された。しかし、対象年齢が5歳刻みとされ、定期接種から漏れた人は任意予防接種となる。定期接種の対象者を拡大する形で任意接種を独自に実施している市町村は、41市町村(75.9%)となっている。被接種者の自己負担額は、豊根村が村内診療所で接種する場合は無料としている他は、すべての実施市町村で1,000円から5,220円とばらつきが見られる。
定期接種から漏れた人を対象とした任意接種の実施・継続と、接種をためらうことの無いよう自己負担額の引き下げを求めていくことが必要だ。
② 健診・検診事業 
特定健診・各種がん検診・歯周疾患検診を「毎年」「無料」で受診できるようにすることは、早期発見・早期治療に繋がる。
また、個別方式・集団方式ともに実施することが受診機会を増やし、受診率向上に寄与する。
これらのことから、全市町村で毎年自己負担なしでの健診・検診を、個別方式・集団方式両方で実施することが必要だ。
ア. 特定健診
自己負担なしで受診できるのは、個別方式で38市町村(70.4%)、集団方式で26市町村(48%)であり、個別方式・集団方式のどちらかで無料受診できるのは41市町村(75.9%)である。
個別方式で無料受診できる割合は昨年と比較し微増に留まるが、3分の2の市町村が実施しており、全自治体での無料化が期待される。
イ. 各種がん検診
自己負担なしで受診できるのは、肺がん検診の集団方式を除くとほとんど実施されていない。毎年受診に関しても実施は横ばいが続いている。
ウ. 歯周疾患検診
自己負担なしで受診できるのは、個別方式で41市町村(76%)、集団方式で15市町村(28%)と、2014年と同様であった。
個別方式・集団方式どちらかで毎年受診できるのは、21市町村(38.9%)と、3分の1を超える市町村で実施されている。
各市町村でも口腔の健康づくり推進条例が定められるなど、口腔の状態が健康と結びつくことが認識されてきており、今後更に無料実施する市町村を増やすことが求められる。

6.今後の課題

2016年度予算では、「社会保障費が国の財政を悪化させる」と世論を煽り、医療機関の収入となる診療報酬を1.43%引き下げ、消費税増税に伴う「低所得者対策」として実施された福祉給付金は半減、子育て給付金は廃止する。その結果、社会保障予算は4997億円増に抑制された。さらに、社会保障費の増額分を5000億円程度に抑え込むための「改革工程表」を作成し、子育て支援の地域自治体での具体化、障害者福祉の「保険」化、公的年金の給付削減など日時分野を区切って実行する計画である。一方で軍事予算は、過去最高5兆円を超えた。
格差と貧困の解消のためには、本来、「税の徴収」と「所得の再配分」の両機能を果たすのが、国の役割であり、なかでも、社会保障による住民の命と暮らしへの支援が求められるが、安倍政権は大企業と富裕層への優遇税制の拡大と社会保障制度の切り捨てを推進し、一層格差を拡大している。
本来の国や自治体の役割発揮を求める自治体キャラバン行動の役割はますます重要となっていることを踏まえ、今後の課題を押さえたい。

1.自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~制度改悪に地域住民の目線で~

(1)安心安全の介護の実現
介護保険制度が大きく変わる。「保険あって介護なし」という事態がより一層進むことが懸念される。高齢者の保険料・利用料の負担は極めて重く、介護保険への「公費投入」が必要になっている。
さらに、「介護保険外サービス」「新しい総合事業」が拡大されようとしているが、実施主体となる自治体の多くが「見通しが立たない」という状況である。
特養待機者の解消のために、国や県の責任による増設は引き続き必要である。
介護保険の実施主体は行政単位である。地域の実態やニーズに合わせた第6期・第7期介護保険事業計画の具体化など、地域住民が主体となった計画づくりがますます求められている。

(2)生活保護問題
政府は2015年度予算で、生活保護の住宅扶助と冬季加算をそれぞれ30億円減額した。住宅扶助は2017年度には約190億円減額となる。3年計画で引き下げてきた生活扶助の減額約260億円も合わせると、約320億円の減額となり、受給者の生活を圧迫している。政府が貧困問題を解決するのではなく貧困を拡大・深化する政策を一貫してとっており、転換を求めるものである。
愛知県の生活保護世帯数・人数は、2014年は60,030世帯79,011人、2015年は60,483世帯79,171人。2014年度の保護開始件数は10,871件と、相談件数35,442件の30%、申請件数11,614件の94%に過ぎない。「格差と貧困」の拡大の中で、受給を必要とする人が、もれなく受給できているのかどうか検証の必要がある。
生活保護基準の引き下げは、社会保障制度の基盤を切り崩すもので、最低賃金や年金、就学援助などに波及するものであり、すべての国民の問題である。県民の共通の理解に広めたい。

(3)国保改善・福祉医療制度拡充を
2015年5月27日に、医療保険制度等の見直し関連法が成立し、2018年度から国民健康保険制度の都道府県単位化にむけた具体化がすすめられている。1958年に国民皆保険制度として、現在の「市町村運営」である国民健康保険制度が誕生して60年。その運営主体が変わる大改革が行われることになる。国民皆保険制度の中核であり、最後のセーフティーネットである国保制度を持続可能なものとしていくためには、国保制度の運営主体は市町村におき、市町村が運営しやすい環境を、財政面でも人材面、運営システム面でも作り上げていくことが求められている。
知事会は、国保を協会けんぽ並の保険料にするためには1兆円必要としていたが、2015年度は3400億円で妥協した。2015年度国は1700億円の財源を確保し、国保財政の安定化のために投入した。2016年、17年にも財政財政が投入される。
国が財政を投入することを受け、名古屋市は一人あたり平均3,213円引き下げた。他に、27市町村で国保料が引き下げられている。引き下げの理由として、「国の保険者支援を反映」「基金の取り崩し」「毎年度料率を変えるわけでないので、前年の医療費があまりかからなかった場合に保険料が下がることがある」等の事情が示されている。引き続き「高すぎる国保料」の引き下げを求めた住民運動が重要になる。
国保への愛知県独自の補助金が2014年に廃止されたが、少なくとも1997年の水準(約28億円)に戻すことが必要だ。

(4)子育て支援、就学援助など

①子どもの貧困化対策計画を全自治体で
2013年に「子どもの貧困対策推進法」が成立し、14年8月に「子どもの貧困対策に対する大綱」が決定され、2015年はこれにもとづき地方自治体での具体化の推進が進められている。
自治体キャラバンへの愛知県の文書回答では、これまでの自立促進計画の推進に加えて、教育・学習支援ついて市町村へ取り組みを促すと答えている。学習支援は豊橋市、半田市、常滑市で実施され、春日井では実施に向けて検討中と文書回答で記している。「無料塾」や「こども食堂」のとりくみと、自治体がどうタイアップするかが課題である。
子どもの貧困化対策計画を全自治体が持つことが課題である。

②子どもの医療費助成の拡大
子ども医療費助成制度の拡大は、ますます強い要求になっている。愛知県は「通院」が「義務教育・就学前」、「入院」は「中学校卒業」までとなっている。国は就学前の窓口2割負担に留まっている。
愛知県内全市町村が県基準を拡大している。通院で、「小学校卒業」までは48市町村(89%)。「中学校卒業」までは46市町村(85%)。18歳年度末までは3町村(6%)ある。
県が制度として「通院」の「中学校卒業」まで引き上げることが、緊急に求められている。また、国にも制度として「義務教育就学前」までの医療費助成制度創設を強く求めたい。

③子ども・子育て支援新制度
2015年4月からは「子ども・子育て支援新制度」が実施され、保育分野にも直接契約が持ち込まれた。「児童福祉法第24条第1項」に定められた自治体の保育実施義務は私立保育園のみ残っている(直接契約ではない、重要なこと)が、公立保育所というスタンダードがなくなり、今後、私立保育園の認定こども園化が進めば自治体の保育実施義務の空洞化が進む。
自治体の保育実施責任を放棄させない観点から、愛知県内の自治体が「新制度」にどう対応しているか注視と運動が必要である。
また、県が廃止した「第3子以降の保育料無料制度」の復活が求められる。

④就学援助受給者の拡大
就学援助は63,064件(受給割合7.93%)と、横ばいであるが、全国平均15.64%の半分程度の受給に留まっている。「生活保護対象者の制度」などと間違った理解が広まっている。正しい広報、具体的な対象者の基準などを広める必要がある。

⑤学校給食費の無償化
子どもの貧困が拡大する中で、「学校給食の無償化」要求が強まっている。県内の要求運動ともに重点要求としての位置づけが求められている。

(5)障害者施策の充実を
障害のあることを「自己責任」とし「応益負担」を課した障害者自立支援法成立(2005年10月31日)から10年が経過した。この10年で障害者が地域で暮らし続けることの困難さは拡大しているともいえる。
その第一原因は、人材不足だ。地域での生活を支えるヘルパーや職員の報酬が低く、辞めていく人はいても、なり手がなく、特に小規模事業所が深刻だ。
一方、障害者の高齢化、介護を担ってきた親の高齢化への対応も急務になっている。
「障害福祉サービスと介護保険サービスの適用」では、国が幾度も通知しているように、本人希望を市町村の障害福祉担当が聞き取り、少なくとも介護保険サービスと障害者福祉サービスを併給(横出し・上乗せ)すべきである。また、介護保険利用に伴う利用料1割負担軽減対策が求められる。なお、国が通知を繰り返すのではなく、総合支援法第7条を即刻廃止すればこうした問題は解決する。

2.地域での要求実現共同行動の重視

①事前学習会とともに事後学習のとりくみを
事前学習会の開催が広く定着してきている。情勢認識や共通の要求内容について理解を一致させるとともに、独自要求についても検討し提出することを引き続き取り組む。またキャラバンのまとめをもとにした、事後学習にも取り組む。

②地域要求の把握、請願・陳情書への反映
議会への「請願・陳情書」は、重点項目を絞りつつも全体を網羅することから、項目も多く、中にはすでに実施済みのものも含まれる。自治体ごとの到達をふまえ、提出する請願・陳情項目の精査が引き続き求められている。
請願・陳情書の訂正や分割・再提出を行っているのは15自治体である。「実施済み項目の削除」が豊明市・刈谷市・東郷町で、その他、各委員会ごとに分割するなどある。
実行委員会は事前学習に間に合うように、自治体からのアンケートと回答を求めている。各回答・アンケートをもとに、懇談でのポイントを地域ごとに設定することができる。個別の自治体対応を具体的に検討するためにも、さらに自治体単位での開催も実現させたい。

③キャラバン訪問時の懇談の充実
重点陳情事項をできるだけ絞り込み集中的な受け応えを準備する。発言も事前の打ち合わせの中で、内容や発言者の分担など具体的な相談がされることによって改善が進んできている。
また、懇談について、評価や改善点など意見交換し、次に生かすまとめの報告会なども課題としたい。

④地域社保協の確立を
キャラバン要請行動のまとめと実現に向けた地域運動の推進に向け、事後の報告会を開催する。
提出した要求の実現にむけ、懇談以降の進捗をつかみ、首長や議会への要請を強めるなど、継続的な働きかけが欠かせない。
また、地域を主体とした行動のセンターとして、「地域社保協」等を各自治体・行政区に1つを目標に、関係者の協力を得たい。自治体キャラバンの要求を支持する議員を増やすことや、住民目線に立った自治体づくりが大切である。

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