2007年 愛知自治体キャラバンのまとめ概要

2008年1月/愛知自治体キャラバン実行委員会

1.名 称                      

「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」

2.主 催                      

愛知自治体キャラバン実行委員会
 ≪事務局団体≫
  愛知県社会保障推進協議会
  愛知県労働組合総連合
  日本自治体労働組合総連合愛知県本部
  新日本婦人の会愛知県本部

3.日 程                      

2007年10月16日(火)~19日(金)
※西尾市は当局側の関係で22日(月)に実施、御津町・音羽町はアンケートのみの実施

4.要請相手とコース日程               

愛知内61市町村を5コースで実施

コース 主な地域 責任団体 宣伝カー
第1 尾西・海部 年金者組合 名古屋市職労
名古屋市職労
一宮・稲沢 一宮社保協 民医連
第2 尾北・尾東・尾中 自治労連 自治労連
岩倉 一宮社保協 民医連
第3 知多・尾東 社保協 保険医協会
第4 西三河 愛労連 愛労連
新婦人
第5 東三河 自治労連 豊橋市職労
東三河労連
事務局4団体

※愛知県と名古屋市は別途話し合いをした。

5.参加状況                     

※(  )内は昨年参加者数

①各コースの参加者総数は延べ合計852人(880人)の参加であった。そのうち共産党議員は90人(88人)が参加した。自治体側の参加者は523人(546人)となった。首長2人、副市長4人、部長19人が参加。他は主に、福祉・保健・医療の課長・次長など担当者が対応した。

②各団体の参加状況は、延べ参加数で多い順に並べると次の表のとおり。

団体名 延べ人員
自治労連(名古屋市職労含む) 158(169)
年金者組合 139(161)
愛労連(医労連・地域労連含む) 110(79)
保険医協会 104(97)
新婦人 70(85)
愛商連 70(72)
民医連 62(60)

③昨年同様、自治労連、年金者組合や地域労連はじめ新婦人、愛商連など地域で運動している団体からの参加が定着してきている。
愛労連は、医労連が医師・看護師不足問題を位置づけ取り組んだ結果、参加者増になった。
東三河山間部は事務局団体と東三河労連が協力し取り組んだ。

6.事前学習会の取り組み               

事前学習会は、陳情事項の学習や地域の具体的要求を検討するため全地域で開催を目標に取り組んだ。結果、昨年の15地域から今年は14地域で開催し、168(昨年190人)が参加した。
後期高齢者医療制度問題の学習会とも重なって日程調整が大変だったが、陳情書の回答も準備され、地域の到達状況もつかんだ学習会になった。
今後も開催地域を増やし、回答の検討など準備を進めるとともに、キャラバン行動以外でも学習会や宣伝行動など共同の取り組みが進められるようにしていくことが必要である。

開催地域(開催地) 開催日 参加者数
東三河(豊橋) 10/11 18人
西三河(知立) 10/ 3 11人
(豊田) 9/25 7人
(西尾) 10/11 11人
(岡崎) 10/ 3 9人
(安城) 10/14 16人
知多(半田) 9/19 8人
尾東(瀬戸) 9/30 13人
尾中(春日井) 10/ 4 18人
尾北(江南) 10/12 8人
(岩倉) 10/10 16人
(犬山) 10/ 3 10人
尾西(一宮) 9/25 10人
海部津島(津島) 10/ 1 23人
合計 14地域・168人

7.懇談の重点項目とアンケート・回答         

①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように重点項目を決めた。要請事項も市町村が住民サービス向上の視点に立てば実施可能な住宅改修の受領委任や障害者控除の認定などの陳情事項をまとめその実施を求めた。
さらに、住民が安心して暮らしていける自治体の施策の充実、特に2008年4月実施予定の後期高齢者医療制度と高齢者医療の2割負担実施(1年くりのべとなった)にともなう改善を要請した。また、愛知県が福祉給付金制度を改悪する動きをキャラバン実施直前につかみ、各市町村に、県への継続の働きかけと、市町村独自の継続を求める緊急要請も同時におこなった。
医療・介護の負担増にともなう独自減免や新たな介護予防実施にともなう市町村の責任ある対応や国民健康保険の保険料(税)の徴収など厳しい対応がすすめられるなかで施策の改善を昨年同様求めた。

②陳情や要請項目についてのアンケート・文書回答や資料要請などについて、今回は、キャラバンの事前学習会で活用できるように約1カ月早く準備した。アンケートには名古屋市を含め昨年同様すべての市町村、文書回答は昨年同様97%の市町村となったが、11市町が事前に届かず懇談当日配布(高浜市のみ後日)となった。豊田市と三好町は、昨年同様文書回答はなかった。

③国と愛知県に意見書を提出するよう求めるとともに、今回は後期高齢者医療制度について広域連合に意見書提出を求めた。

8.要望項目に対する到達点              

(1)市町村での実施が国や愛知県を動かす

この間の自治体キャラバンや地域での継続した運動が反映し、妊婦健診の無料回数拡大・高額療養費受領委任払い・出産育児一時金受領委任払い・福祉給付金自動払い・子ども医療費無料制度の5つの制度については、国または愛知県の制度を大きく変化させた。

(2)子育て支援の要請が大きく前進

①子どもの医療費助成制度
これまでの運動や昨年の知事選挙結果もうけ愛知県は、2008年4月から通院を就学前、入院を中学校卒業までに拡大(就学後は償還払い予定)する予定が出されるなかで、各自治体の子どもの医療費助成制度は、拡大予定も含め31市町村が改善した。
その結果「就学前」までの実施は、通院で61市町村(97%)、入院で62市町村(98%)まで広がった。そのなかで「中学校卒業」まで対象を拡大または予定しているのが、通院で15市町村(24%)、入院で26市町村(41%)となった。
制度改善は前進したが、高浜市が先に改悪した1割の自己負担が大口町につづき一色町でも導入され窓口での支払いが必要になっている。早急に改善し「廃止」すべきである。

②妊産婦無料健診の拡大
厚労省は2007年1月16日付けで「妊婦健診の公費負担回数は14回が望ましい、最低5回実施が原則」との通知を出し、市町村に無料回数の拡大を指導した。
妊婦健診の無料回数の拡大は、この厚労省の指導文書もあり大きく前進した。昨年の13市町村(21%)から37市町村(59%)に広がった。妊婦の歯科健診については、7市町村が未実施になっている。

③就学援助制度の拡充
就学援助の拡大を求め、実態をつかんだ。格差社会が広がる中で就学援助制度を知らせ、活用を広げることとあわせ、金額、支給方法、対象の拡大など今後の改善も必要である。

(3)市町村が住民サービスの視点にたって臨めば実現可能な要望は、大きく前進

①住宅改修等の受領委任払い
住宅改修の受領委任払いの実施については、昨年から6市町増え21市町村(33%)で実施され、実績も151件増加し、6,404件となった。

②障害者控除の認定書発行
障害者控除認定書の発行は、2005年度の7,155人から2006年度は10,466人へと増えている。しかし、要介護認定者からみるとまだ少ない。「寝たきり」や認知症しか認めない市町村もあるなかで、「要介護認定者1以上の介護認定者」をすべて「障害者控除」の対象としている市町村は、14市町村(22%)になっている。
住んでいる市町村によって対応が違っている実態を改善させるため、要介護者への障害者控除の制度の案内や申請書を送付させるなどの改善のとりくみが必要である。

③福祉給付金の支払い
自動払いは、現物給付(窓口無料)も含め新たに6市町村で拡大し、45市町村(71%)での実施となった。愛知県も2008年4月から、医療機関の窓口での支払いを不要とする「現物給付」が予定されている。

④現役並み所得者の取り扱い
2006年10月から70歳以上の高齢者の医療は「現役並み所得者」が2割から3割負担となったが、申請すれば1割負担に戻る対象者が約2割(推計15,000人)いる。
所得基準で3割負担となっても、収入基準で1割となる対象世帯には自動的に1割の受給者証を交付して、対象者の便宜を図っているのが、7市町(11%)ある。他の市町村もぜひ見習って貰いたい施策である。
対象世帯への通知・申請書の送付などほとんどの自治体が実施しているなかで、岡崎市と甚目寺町は通知のみ、何も送付していないのは安城市のみである。一刻も早い改善が求められる。

(4)安心できる介護保障について

2005年10月からの介護保険施設での居住費や食費の全額自己負担(所得による軽減あり)や2006年4月から介護予防などが実施された。
この間の調査で①介護保険実施前と比べ低所得階層の介護サービスの利用抑制がすすんでいる、②介護3施設が入所者を選ぶ「選択」が起こっている、③要介護認定が利用者不在のシステムになっている、④「低介護報酬」が介護に関わる労働者の劣悪な労働条件を生み、同時に質の低下ももたらしている、⑤公的責任があいまいにされ高齢者福祉の「空洞化」がすすんでいる――と指摘したが、実態はいっそう深刻な状態になっている。
厚労省が発表した2006年度の介護給付費実態調査で初めて介護サービス費が減少した。また、不正請求などのコムスン問題や人員不足が社会問題になっている。利用者は、懐具合で利用が制限され、低所得者には「選択」の自由もない。
この間の取り組みでの到達点と今後の課題は以下のとおりである。

①介護保険料減免について
保険料減免制度の実施は、3市町増え、35市町(56%)となった。
減免実施の市町村の対象条件が厳しく、対象者はごく少数になっている実態は改善されていない。2004年から制度の実績を調査した結果、制度があってもその活用の実積に格差があることが明らかになりその改善も求めた。
そのなかで、一宮市は、対象範囲が広く、しかも申請を不要としており、優れた保険料減免制度を設けている。他の市町村に広げていくことが必要である。
また、減免制度を拡充し、保険料を低く抑えるためにも、国の負担をせめて「20%+調整金5%」から「25%+調整金5%」に早急に改善させることが必要である。

②利用料減免について
利用料の単独減免は、新たに弥富市が実施し、25市町(40%)になった。
減免内容では、豊橋市(低所得者の利用料限度額の引き下げ)、江南市(非課税世帯への訪問介護の利用料軽減)などの制度が優れており、他の市町村に広げていくことが必要である。

③食費・居住費の自己負担化、介護用ベッドの取り上げなど
2005年10月から実施された介護保険施設の居住費や食費の全面自己負担化や2006年4月からのサービス利用の制限などによって利用者も事業者も深刻な状況が生じている。
また、要支援、要介護1に対する介護用ベッドなどの貸与等について全国調査で大幅な削減になっているが今回のキャラバンでは実態調査をしなかったため各市町村の実態は明らかにすることができなかった。
県内の車いすや特殊寝台など福祉用具の貸与状況は、2005年122,171件に対し3,936件と大幅に減少している。

④地域包括支援センター
市町村が責任をもって設置し、今後の総合的な介護予防を進めていく地域の拠点となる地域包括支援センターの設置は、2007年4月時点で171カ所設置されたなかで直営が17カ所となっている。
委託料についても1カ所あたり300万円から約5400万円と差があるが対象地域の実態や人口、職員配置などで比較しなければ評価できない。
高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるようにしていくために、介護予防のケアプラン作成のみに終わることなく、本来のセンターの役割を果たしていくために、せめて中学校区毎の設置と専門職の配置が必要である。

⑤特別養護老人ホームなど
特別養護老人ホーム、老人保健施設建設のテンポは遅く、入所待機者は増え、なかなか入所できない。待機者の実態も調査せず成り行き任せの市町村もある。
また、利用者の介護度や経済状況、病状などによって「施設から選択」され、「利用者が選択」できない実態がうまれている。とくに、食費・居住費の全額自己負担化(有料老人ホーム)のなかで経済的状況によって利用が制限される事態が進行している。また、国が補助金を削減し、整備計画が足踏みしている。
さらに、療養病床の縮小・廃止の改悪で、有料老人ホームなど経済的にゆとりがある階層しか入所できない施設の建設が一段と進んでいる。介護・医療療養病床の廃止・縮小をやめさせ、特別養護老人ホーム、老人保健施設など介護保険3施設を増設し、誰でも安心して入所できるようにしていくことが必要である。

⑥地域支援事業について
総合的な介護予防推進を目的に介護予防・地域支え合い事業など高齢者福祉の施策が「改正」介護保険法によって「地域支援事業」などに統合された。
配食サービスも自立支援事業に変わり、「自立支援につながっているか」などの調査実施や施設での食事の自己負担化のなかで配食サービスの負担増や実施回数減などの動きがはじまっている。
「配食サービス」は、61市町村(97%)が実施。うち、毎日実施は15市町(24%)で実施されている。配食サービスが未実施なのは、七宝町と南知多町となっている。
「ゴミ出し援助」については、新たに5市町で実施され、合計26市町村(41%)で実施されている。
「介護手当」は、41市町村(65%)で実施されている。
「住宅改修の独自助成」は、25市町村(40%)で介護保険に上乗せ実施されている。
住民の足を確保する「巡回バス」なども38市町村(60%)で実施され、うち、無料が14市町村(22%)で、最高は200円となっている。
2005年から調査した「宅老所・街角サロンなど高齢者のたまり場事業への助成」は、20市町村(32%)で実施されている。
介護予防が日常の暮らしのなかで進められ高齢者がいきいきと暮らせるようこれらの施策を住民が必要とする路線など内容をより改善させていくことも必要である。
老人保健事業の健診など従来の保健事業は高齢者医療制度の創設がらみで実施されるが予防給付の名で軽度の要介護者の利用を制限させることなく、現行の自治体の施策を守らせ、さらに高齢者の生活や介護支援、介護予防など高齢者福祉の充実にむけて具体的な取り組みの強化が求められている。

(5)国の税制改革に伴う軽減措置

国の税制改革にともない定率減税半減による住民税の増加分は、回答のあった56市町村で約185億円になっている。改悪を元に戻す運動が求められとともに、その使い道にも目を配る必要がある。

(6)高齢者医療の充実について

①老人医療費助成制度(73・74歳)
愛知県が「老人医療費助成制度(73・74歳)」を廃止する方針であることが、自治体キャラバン直前に明らかになった。
老人医療費助成制度は、対象となる73・74歳が、現在は75歳以上の自己負担と同じ1割負担のため、助成金が出ていないが、2008年4月(1年凍結されると2009年4月)から2割負担となれば、1割分は助成の対象となる。ところが、県は1割助成が始まる前に、老人医療費助成制度を葬り去ってしまおうとするのが今回の県の方針だと言える。
県民の知らないところで騙し討ちのような改悪計画は、極めて不当なやり方と言わねばならない。
この改悪計画が決定される前に実施したキャラバンアンケート結果では、19市町村(30%)が、73・74歳の1割分の助成について検討中との回答であった。

②福祉給付金
愛知県は、老人医療費助成制度の廃止とともに、福祉給付金についても、「一人暮らしの市町村民税非課税者」および「老人医療費助成対象者(73・74歳)を福祉給付金の対象から外す大幅な改悪計画を打ち出した
各市町村との懇談の場では、担当者から、「福祉給付金は、低所得者対策の意味合いがあるので、簡単には削れない」「県の担当者は福祉給付金の現場に立つわけではないのでいいかも知れないが、我々は現場で受給している高齢者の顔が目に浮かび、打ち切ったらどんな結果をもたらすかが分かるので、『打ちきります』とは、とても言い出せない」など県に継続を求める意見が多数出された。
キャラバン実行委員会は、県への「撤回要請」とあわせて、各市町村に独自の継続を要請した。各市町村からは「独自に継続する」「継続するように市長に進言する」などの前向きの回答も出された。
また、福祉給付金制度の対象拡大の要望については、県基準より年齢や要件を拡大している市町村が31市町村(49%)あった。
長年にわたり県民から喜ばれ、高齢者のいのちと健康を支えてきた福祉医療制度および福祉給付金制度の後退を許さず、拡充させる運動が必要である。
なお、福祉給付金の自動払いについては、45市町村(71%)まで広がり、2008年度からついに愛知県全体が現物給付方式に改善されることになった。

(7)国保の改善について

①国保制度の基本的な考え方
保険料(税)の徴収が強められているなかで「保険料(税)徴収の民間委託」の計画はなかったが、「国民健康保険は相互扶助の考え方で運営」「国民健康保険が相互扶助で成り立つ社会保険制度」などの回答が今回もあった。
国民健康保険は憲法25条に基づく社会保障の柱であり、国民健康保険法のどこにも「相互扶助」の文言はない。戦前の国保法に基づく「相互扶助」の考え方を改めさせていく必要がある。

②保険料(税)減免
国民健康保険料(税)の滞納者が増えるなかで、払える保険料にしていくために市町村独自に、一般会計から繰り入れて、保険料減免制度を実施・拡充することが重要である。
また、独自減免制度をつくらせるために、今回はじめて、次の具体的な内容で要請した。
イ 就学前の子どもは均等割の対象から外す。
ロ 前年所得が生活保護基準の1.3倍以下の制度の新設。
ハ 所得激変の要件を「前年所得1000万円以下で、当年の見込み所得500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」に。
今回の回答では、「困難」「考えていない」などの回答が多かったが、各市町村の考えを聞くことができた。今後、改善にむけた運動と併せ、学習を深めていくことが必要である。

③資格証明書・短期保険証
資格証明書の発行だけでなく、短期保険証発行の期間や制裁措置についても調査した。
資格証明書の発行は、県合計で2,931件(滞納世帯比1.25%)と他府県と比べてかなり低い数に抑えている。この間の運動で到達した「面談なしには発行させない」などを堅持させ、機械的な発行を許さない取り組みが引き続き重要である。
短期保険証の発行は、前年の51,281件から63,987件へと増えている。有効期間は1カ月が15市町村で3,247件、3カ月までが32市町村で11,490件もあった。
滞納者の差し押さえ件数は、2005年度の2,093件、12億3079万円から、2006年度3,458件、31億6671万円になっている。払いたくても払えないなかで、滞納者に対しての制裁が広がっている。「悪質」のみの差し押さえなのか、きちんとした実態調査が必要である。

④一部負担金減免
一部負担金の減免制度は、新たに8市町で実施され、合計39市町(62%)となったが、未整備のままの自治体が24市町村(38%)も残っているのは問題である。
蒲郡市・日進市・弥富市・飛島村・東浦町で生活保護基準を基にした減免制度を新たに設け、合計17市町村(27%)に広がった。
2006年度の減免実績は、2市16件のみに留まっている。制度を活用する申請の促進運動と制度の拡充が必要である。

⑤高額療養費・出産育児一時金の受領委任払い
高額療養費の受領委任払い制度は、この間の運動もあり、新たに3市町で実施され、24市町(38%)へと広がった。
なお、入院と在宅医療は、医療保険制度が改正され、国保・社保とも、高額療養費の自己負担限度額を超えた額は、医療機関窓口で支払いが不要とされた。(2007年4月実施)
出産育児一時金の受領委任払いは、新たに10市町増え、61市町村(97%)が実施。未実施は、東栄町と豊根村の2町村のみとなった。

(8)障害者施策の充実について

①障害者自立支援法への対応
「応益負担をなくせ」の障害者運動の高まりを受け、国は2006年12月に障害者福祉サービスの利用者負担を通所施設・在宅サービス利用者を中心に更なる軽減策を打ち出した。
これを受けて各市町村も地域支援事業(移動支援・地域活動支援・日常生活用具)の利用料の軽減をおこなった。こうしたなかで、通所施設・在宅サービスなどの負担軽減や「負担軽減策での資産要件なくせ」と求めた。
名古屋市は総合負担の上限を設定し、資産要件も無くすとともに、市民税所得割16万円以上46万円未満も負担軽減した。県内では、25市町村(40%)で地域生活支援事業の移動支援・日常生活用具・地域活動センターの各利用料を統合し負担軽減している(4市は日常生活用具の利用料は除く)。「資産要件」を問わないのは飛島村、幡豆町、幸田町の3町村のみ。
移動支援(ガイドヘルパー)を、通学・通所に使える市町村は、6市町村(10%)。移動支援に21市町村(33%)が上限を設けている。
国や愛知県は、地域支援事業を市町村まかせにした結果、市町村の格差が是正されないまま推移している。
精神障害者の医療費助成は、県制度として精神医療のみであるが助成制度を実施させた。今後、一般疾病を対象とする障害者医療制度の対象にさせる取り組みが必要である。
2007年12月に国は、「障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置」として更なる負担軽減策などを打ち出したが人材確保について具体的な手だてをとっていないなど問題は山積している。地域の当事者の参画をえて真摯な検討が望まれている。

(9)健診事業について

①基本健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と名称変更し、自治体責任から保険者責任へと大幅に変更され、病気の早期発見に主眼をおかれなくなる。今回のキャラバンは、今年度の実態をつかみ、特定健診への移行後も住民の健康を重視し福祉の後退に繋がらないよう要請した。
すべての自治体が、基本健診を集団・個別医療機関委託のどちらかで実施している。しかし、通年実施(6カ月以上実施含む)の自治体は、基本健診で14市町村(22%)である。基本健診を無料実施しているのは17市町村(27%)である。また、各種がん検診は、項目ごとに実施のばらつきがあり、すべての自治体ですべての検診を実施する必要がある。

②歯周疾患・前立腺がん検診
歯周疾患検診の年齢基準が国基準に満たない自治体はゼロとなった。
前立腺がん検診を実施していないのは名古屋市と東栄町のみとなった。名古屋市は、社保協との懇談の場で「厚労省のガイドラインに従い、実施しない」と冷たい対応である。住民の健康を守る立場からも早期の実施が望まれる。

9.今後の課題                    

(1)自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~これまでの貴重な成果を踏まえ~

国の社会保障の連続改悪が進められるなか、福祉給付金など高齢者を中心にいっそうの住民負担増がおこなわれている。すでに病院や老人福祉施設、保育所、児童祉施設など公的施設の民営化だけでなく、2008年の後期高齢者医療制度実施に向けた準備や医療費適正化をめざした計画づくりがすすめられている。
今回は、市町村の「財源」がそれほど伴わなくても「住民福祉の増進」の立場に立って臨めば実施が可能な要請項目を重視し、その実現をめざした。
子どもの医療費無料制度化や妊婦健診の拡大、介護保険料・利用料減免の実施、福祉給付金自動払い、高額療養費・出産育児一時金・受領委任払いなどが前進した。
この間の自治体キャラバン要請の貴重な成果を地域住民に知らせるため、2007年1月「知ってトクする医療・介護・税金の負担軽減策」パンフを発行し、大反響だったが、新たに開設したホームページの活用も含め、制度を知らせる活動をいっそう強め、自治体が国の悪政に対し、住民のいのちと暮らしを守る砦となるよう、「草の根」からの運動強化がいっそう求められている。

(2)地域ごとの運動課題を明確にした運動を

国保改善や高齢者福祉など地域ごとの中心課題や「水準の引き上げ」などを明らかにしていくこと。
また、後期高齢者医療制度の保険料の独自減免など現行のサービスを後退させないとりくみや地域包括支援センターが地域における高齢者の生活を総合的に支える拠点となるよう地域の実態に基づいて具体的に分析・検討、自らも参加するなど地域での継続的な取り組みを強化していくために、①キャラバンの事前学習会をこれまで以上に多くの地域で開催していくこと、②事前学習会では事前に回答を分析し、具体的な事例で改善をめざす準備をする、③重点陳情事項をできるだけ絞り込む――などの改善をしていくことが求められる。
そのためにもキャラバン時の懇談だけでなく継続的なとりくみにしていくために、地域社保協などの運動体づくりが不可欠である。

(3)国の悪政に地域から反撃のたたかいを

不安定雇用の拡大によって所得から健康、老後まで「格差と貧困」が大きな社会問題となり、「反貧困」の動きがはじまっている。
また、薬害肝炎被害者救済、高齢者の医療費負担の一部「凍結」(70~74歳の2割負担の1年先延ばしなど)、療養病床の廃止・縮小の見直しなど私たちの運動が情勢を動かしてきている。
社会保障予算削減や消費税増税反対、後期高齢者医療制度「中止・撤回」など国の悪政をやめさせるたたかいとあわせ、いのちと暮らしを守り、安心して暮らせる「まち」めざし、地域からさらに大きなたたかいを広げていくことが必要である。

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