2013年2月/愛知自治体キャラバン実行委員会
1.名 称
「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」
2.主 催
愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部
3.日 程
2012年10月23日(火)~26日(金)
※愛知県とは11月16日(金)に、名古屋市とは11月8日(木)に実施
4.要請相手とコース日程
愛知内54市町村を5コースで実施
コース | 主な地域 | 責任団体 | 宣伝カー |
---|---|---|---|
第1 | 尾西・海部 | 年金者組合 | 名古屋ブロック |
一宮・稲沢 | 一宮社保協 | ||
第2 | 尾北・尾東 | 自治労連 | 自治労連 |
尾中 | 新婦人 | ||
第3 | 知多・尾東 | 愛労連・社保協 | 愛労連 |
第4 | 西三河 | 社保協・新婦人 | 保険医協会 |
新婦人 | |||
第5 | 東三河 | 自治労連 | 豊橋市職労 |
東三河労連 | |||
事務局4団体 |
5.参加状況
※( )内は昨年参加者数
各コースの参加者総数は延べ933人(831人)だった。そのうち共産党議員は74人(75人)だった。愛知県に33人(31人)、名古屋市に45人(51人)が参加し、名古屋市には共産党議員が4人(2人)参加。
自治体側の参加者は723人(693人)だった。首長1人(1人)、副首長5人(4人)、部長は17市町村30人(15市町村28人)参加。愛知県は19人(18人)、名古屋市は14人(25人)。主に、福祉・保険・医療の課長・次長など担当者が対応した。
②各団体の参加状況は、延べ参加数で多い順に並べると次の表のとおり。
団体名 | 延べ人員 |
---|---|
年金者組合 | 144(138) |
自治労連(名古屋市職労含む) | 127(122) |
新婦人 | 121(103) |
保険医協会 | 97( 90) |
愛労連(医労連・地域労連含む) | 95(100) |
愛商連 | 71( 70) |
民医連 | 36( 40) |
③昨年同様、年金者組合や自治労連、新婦人など地域で運動している団体からの参加が定着してきている。愛労連は、尾中、東三河の地域からの参加が定着し、今回は医労連が看護師確保など独自の要求を位置づけ参加した。
その他の団体では、一宮社保協、介護の会、生健会、民主団体などから参加があり、延べ168人(90人)が参加した。
東三河山間部は今回も事務局団体と東三河労連が協力し取り組んだ。
6.事前学習会の取り組み
事前学習会は、要請事項だけでなく「社会保障と税の一体改革」の動きや国保の広域化、介護保険の「見直し」等と地域の具体的要求の検討も含め、全地域での開催を目標に取り組んだ。結果、昨年の17地域・231人から、今年は17地域で開催し253人が参加した。
陳情書への文書回答・アンケート回答も準備でき、地域の到達状況もつかんだ交流の場になった。
今後、地域の状況にそった学習会を開催するために、地域の到達状況と回答の検討も含め、地域で懇談当日の重点項目や発言者などの意志統一をはかることが必要である。そのためには、地域での受け皿である地域社保協の立ち上げで市町村ごとの学習会を開催し、回答内容の検討等が不可欠になっている。また、陳情項目の学習をすすめるためにも講師団の養成などが求められる。
開催地域 | 開催日 | 参加者数 | |
---|---|---|---|
東三河 | 豊橋・田原 | 10/19 | 12 (13) |
西三河 | 豊田 | 10/ 3 | 8 ( 8) |
西尾 | 10/17 | 12 (18) | |
岡崎 | 9/25 | 19 (15) | |
安城 | 10/21 | 12 (13) | |
知立・碧南・高浜 | 10/ 2 | 11 (―) | |
知多 | 半田 | 10/12 | 9 (18) |
東海・知多 | 10/13 | 11 (13) | |
尾張東 | 瀬戸・尾張旭 | 10/ 6 | 20 (13) |
長久手・日進・東郷 | 10/15 | 22 (14) | |
豊明 | 10/ 6 | 8 ( 6) | |
尾張中部 | 春日井 | 10/11 | 20 (13) |
尾張北 | 江南・大口・扶桑 | 10/ 2 | 13 (16) |
岩倉 | 10/13 | 11 (16) | |
犬山 | 10/13 | 15 (13) | |
尾張西 | 一宮・稲沢 | 10/19 | 30 (26) |
海部津島 | 津島・愛西・弥富・ あま・大治 |
10/12 | 20 (16) |
合 計 | 17地域 | 253(231) |
7.懇談の重点項目とアンケート・回答
①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように今年も重点項目を決めた。今回は、「福祉医療制度の存続・拡充」を最大の重点とし、他に介護保険、高齢者福祉施策、子育て支援、国民健康保険、生活保護問題を重点に設定した。
②要請事項は、すでに多くの市町村が実施している施策の実施状況については、アンケートにまわした。
③さらに、住民が安心して暮らしていける市町村の施策の充実のなかで介護認定者の障害者控除認定書発行や子育て支援、国保の制裁措置などとあわせて、2012年4月からの介護報酬改定や介護保険料値上げに伴う高齢者の負担の増加と時間短縮等の弊害について実態を伝え改善を求めた。
④要請項目についてのアンケート・文書回答について、キャラバンの事前学習会で活用できるように準備した。
アンケートはすべての市町村から届いた。
文書回答は96%(昨年94%)の市町村から提出されたが、豊田市、みよし市が届かなかった。また、豊橋市は懇談後となった。
⑤国と県への意見書は、3市町で採択(設楽町は趣旨採択)された。
・愛西市…「任意予防接種の定期予防接種化」
・蟹江町…「安心して子育てできる制度の確立」「任意予防接種の定期予防接種化」
・設楽町…「生活保護基準の引き下げはしないこと」(趣旨採択)
8.要望項目に対する到達点
33年をむかえた自治体キャラバンは、地域住民の運動とともに、子どもの医療費無料制度の拡大、高額療養費や出産育児一時金の受領委任払いの実施、妊婦健診の助成回数拡大、福祉給付金制度の窓口無料化、国保一部負担金減免制度の拡充、介護保険料・利用料の減免制度の拡大、障害者控除認定書発行、地域巡回バスなどの外出支援、配食サービスの拡大、Hib・小児用肺炎球菌・HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの全市町村での助成、高齢者用肺炎球菌ワクチンの助成拡大など、市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たしてきている。
2012年のキャラバン行動は、民主党政権が自民・公明党との合意に基づいて消費増税と社会保障制度改革推進法を可決成立し、「社会保障と税の一体改革」の名による、国民への大増税と医療・介護・年金・保育、生活保護基準の引き下げなどが強行されようとしている最中に実施した。
1.自治体の基本的あり方
憲法、地方自治法などを踏まえ、住民一人一人が人間としての尊厳が保障され健康で文化的で平和的な生活が送れるよう、「住民の福祉の増進を図る」という自治体の目的に沿って国の施策に左右されることなく、住民の利益への奉仕最優先を求めた。憲法13条の「個人の尊重」を基礎にし、25条の保障する健康で文化的な生活を実現する自治体をめざすことが求められている。
①②憲法、地方自治法などをふまえた自治体の施策を求めたことに対して、コメントがないのが7市町(名古屋市、豊川市、安城市、蒲郡市、知立市、弥富市、大口町)あった。
こうした基本的なことに対して自治体からコメントがないことは問題である。各自治体は地方自治の本旨に基づいて「住民福祉の増進を図る」ことが要請されており、その趣旨に沿ったコメントをすることが求められる。
③義務付け・枠付けの見直しについては「地域の実情や住民ニーズを踏まえた行政サービスを提供していく上で必要な取り組み」という意見がある。
実際の見直しに当たっては、県条例を基本に現行水準を引き下げないとした自治体がほとんどである。
③また要請項目にはなかったが、「この国のかたち、国と地方のあり方を再構築する」として2012年4月施行予定の「地域主権改革一括法」による、保育所や老人福祉施設などの最低基準の引き下げや人員削減、民営化の促進など義務づけ等の見直しがすすめられる状況のなかで義務付け・枠付けの見直しについて、アンケートで進捗状況を聞いたが、22市町村(40.7%)が「県が条例化してから検討」と回答している。実態をつかみ、現行基準の引き下げをさせず改善のとり組みがすすめることが必要だ。
④愛知県地方税滞納整理機構が、個人住民税をはじめとした市町村民税の滞納整理を推進すると共に、市町村の税務職員の徴税技術の向上を図ることを目的として、県下6カ所に設置され、2011年4月から税金の徴収及び滞納整理をおこなっている。なお、名古屋市は各部局が保有する債権のうち、一定の基準を超えたものを一元的に管理し、徴収する「債権回収室」を設置している。
現在、機構に参加しているのは46市町村。参加していないのは名古屋市、岡崎市、豊田市、犬山市、北名古屋市の5市。検討中は春日井市、清須市、幸田町の3市町である。
機構送りになった事案について市町村窓口は、「その件は機構送りになった事案だから」と相談の対象外とされ、「分納」していても、一定の「滞納額」を基準とした徴収が強化されている。国保料(税)の差し押さえ件数も昨年9,412件から10,871件と1,459件も増えている。国保の滞納者に保険証が届いているかも定かではなく、医療を受ける権利が奪われかねない。
差し押さえなどの強制徴収でなく、地方税第15条(納税の緩和措置)の適用をはじめ、分納・減免などでの対応とあわせて機構へ参加しないよう働きかけていくことが必要である。
2.福祉医療制度の存続拡充を求めて
愛知県は、「子ども・障がい者・母子父子家庭等・高齢者医療」を対象とする福祉医療制度に対する、「行革大綱に係る重点改革プログラム」における「見直し」を受け、2012年度に見直し内容を決め、2014年実施に向け作業を進めている。福祉医療制度は、すべての市町村が県の補助基準を上回る内容で助成事業を実施しており、県の制度は見直すならば、縮小ではなく存続拡充こそ求められる。
キャラバンでは、2011年に続き「存続拡充を求める」要請項目を最重点課題に設定し全自治体での理解と協力を求めた。
自治体からの意見書採択は、2012年6月時点では、名古屋市、半田市、春日井市、稲沢市、豊明市、愛西市、弥富市、東郷町、大口町、扶桑町の10市町であったが、2012年12月には、豊橋市、津島市、犬山市、江南市、小牧市、大府市、知立市、尾張旭市、岩倉市、日進市、田原市、あま市、大治町、飛島村、阿久比町、武豊町、設楽町、東栄町、豊根村を加え29市町村(54%)が採択している。(P97~98参照)
文書回答などによれば、「現行制度の縮小は考えていない」「縮小せず、存続予定」「現行の制度が縮小されることがないよう要望していく」などが多く寄せられている。一方、「国の医療制度改革、県の福祉医療制度見直しの検討が進められており、今後の動向を注視していく」との態度を表明している自治体もある。(P19~21参照)
県民の命に直結する「福祉医療制度」の見直しについて、各自治体では「財政運営」と住民との狭間での苦悩が多くみられるが、住民の目線での制度継続にむけた担当者をはじめとした行政の努力に応える意味でも、存続拡充にむけた県民世論の確立が必要である。
①福祉医療制度の存続・拡充
愛知県の福祉医療制度は、子ども・障がい者・母子父子家庭・高齢者の医療費自己負担を無料にする制度で、全国的に見ても非常に優れた制度である。愛知県内で145万人が対象となっており、いのちと健康を守る上で、かけがえのない制度であり、各市町村・医師会・社保協などの粘り強い取り組みの成果である。
愛知県は、一部負担金の導入、所得制限の新設・強化、対象者の縮小について財政影響の試算を含め検討し、2014年度から見直し後の新制度をスタートさせる工程表を示している。
愛知県と各市町村が築いてきた優れた福祉医療制度については、県民のいのちと健康を守る上で積極的な役割を果たしており、縮小ではなく、存続・拡充を求めていくことが大切である。
②子どもの医療費助成制度
愛知県は、2008年4月から、通院で義務教育就学前、入院で中学卒業まで無料対象を拡大した。この対象範囲は、全国の都道府県でも高い基準であり、長年の運動の成果である。
すべての市町村が県基準よりも対象を拡大している。うち入院・通院とも「中学校卒業まで無料」としているのは、4分の3を超え41市町村(76%)となっている。
一方、愛知県の補助基準を超える部分への自己負担については、すでに導入していた一宮市、豊川市、犬山市、江南市、北名古屋市に加え、豊橋市、常滑市、南知多町が導入した。
なお、子ども医療費の無料化について「コンビニ受診を助長する」との意見も一部あるが、全国で唯一、入院・通院とも中学校卒業まで無料制度を実施している群馬県での調査結果によると、対象拡大を実施する前と比べて、1人あたり受診件数・時間外の受診件数とも減少しているとのデータが明らかになっている。
今後は、入院・通院とも18歳年度末までの医療費無料制度を現物給付(窓口無料)で実施することが望まれる。それと同時に、国の制度として就学前までの医療費無料制度の創設が待ったなしの課題となっている。
③精神障がい者への医療補助対象拡大を
愛知県の障がい者医療では、身体障がい者、知的障がい者は障がい者医療の補助対象として一般の病気も対象となっていが、精神障がい者は、精神疾患の通院のみを対象としており、一般の病気に広げる必要がある。
愛知県内では2012年8月1日現在、通院で29市町村(54%)、入院で33市町村(61%)が一般の病気も同時に対象に加えている。精神障がい者への補助対象を精神疾患に限定している市町村は、一般の病気にも広げることが求められるとともに、愛知県の補助対象も一般の病気にも拡大すべきである。
④後期高齢者医療対象者のうち住民税非課税世帯の医療費無料に、当面福祉給付金制度の対象の拡大を
福祉給付金(後期高齢者福祉医療費給付)制度は、寝たきり・認知症・障がい者などの高齢者の医療費自己負担を無料にする愛知県独自の制度で、高齢者に大変喜ばれている制度である。2012年8月1日現在、対象者は131,177人(うち、ひとり暮らし非課税高齢者10,510人)である。
愛知県は県内各市町村の反対を押し切って、2008年4月1日から「ひとり暮らし非課税高齢者」を対象から除外する制度改悪を行ったが、県が外しても市町村独自に継続することを要請し、現在も45市町村(83%)が「ひとり暮らし非課税高齢者」を独自に継続している点は高く評価できる。
「ひとり暮らし非課税高齢者」を県に追随して対象から除外したのは、瀬戸市、津島市、江南市、あま市、長久手市、東郷町、蟹江町、東栄町の8市町(15%)のみ(名古屋市は従来から対象外)。
従来どおり継続した市町村は引き続き継続を求めるとともに、対象から除外したり、縮小した市町村は、従来の水準に戻すことが求められる。
また、県の基準より何らかの対象拡大をしているのは、「ひとり暮らし非課税者」を含め、49市町村(91%)ある。さらに、後期高齢者の医療費負担を無料にし、高齢者が安心して医療にかかれるように、対象者の拡大が求められる。
3.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
2012年4月には、「改正」介護保険法の施行、介護報酬改定、第5期介護保険事業計画が実施された。
今回の介護保険改定は、2025年の高齢化社会に対応するとして、「自助・互助・共助・公助」を中心にした地域包括ケアシステム実施に向けた具体化であり、公的責任を放棄した内容である。
特徴点は、第1に介護保険制度の矛盾である、介護認定制度、支給限度額、介護予防給付など改善を求める課題には手をつけなかった。第2に、生活援助を介護保険から外す施策を進めるために、介護予防・日常生活支援総合事業(以下・総合事業)を創設し、自治体の判断で実施できるようにした。第3に、医療行為を必要とする重度者への対応を強めるために、社会福祉士及び介護福祉士法を改定し、介護職の医療行為を可能にし、定期巡回・随時サービスや複合型サービスを新設した。第4に、地域区分を見直して、都市部と地方の「格差」をいっそう拡大。第5に、高齢者住まい法を改定し、サービス付き高齢者向け住宅に一本化、ゼネコンなどの営利企業の参入、市場化が更に促進されることになった。
介護保険法の改定では盛りこまれなかった利用料の負担増やケアプランの有料化などの改悪内容は、「社会保障と税の一体改革」に盛りこまれ実施しようとしている。
①介護保険料
介護保険は利用量が増えれば国と市町村の負担が増えないかぎり保険料が上がるしくみになっている。3年ごとの見直しで保険料は毎回大幅に引き上げられ、第5期(2012~2014年度)の保険料は月額平均4,768円へと827円(増加率21%)、年間で約1万円もの大幅引き上げとなった。全国平均は月額4,972円である。
保険料段階設定については、10段階以上の多段階設定をし、応能負担を強めているのは47市町村(87%)ある。多段階の保険料設定をすることは応能負担化になり、最高倍率を高くすることは基準額を引き下げることにもつながる。14段階としているのは津島市のみ、12段階が10市町、11段階が11市町、10段階が25市町村となっている。
また、第1段階(生活保護世帯及び世帯非課税で老齢年金受給者)の保険料倍率は殆どの市町村が0.4倍~0.5倍を設定している中で、低く設定しているのは、刈谷市(0.1倍)、豊明市(0.2倍)、日進市・東郷町(0.3倍)、安城市(0.35倍)がある。第2段階(世帯非課税で課税年金収入と合計所得金額が80万円以下)の保険料倍率を低く抑えているのは、豊明市・東郷町(0.3倍)、刈谷市(0.35倍)がある。第1段階や第2段階など、低所得者の保険料を基準額からいかに低く設定するかも問われている。
また、介護保険料の引き下げのためには、国の負担をせめて「20%+調整金5%」から「25%+調整金5%」に、また保険料の段階を「世帯ごと」でなく、本人の所得に対する「応能負担」に早急に改善させることが必要である。
②保険料減免
介護保険料の独自減免は、新たな実施はなく、江南市が廃止したことにより、減免実施市町村は29市町村(54%)となった。対象が狭く、制度の利用実績は少数である。市町村での独自の減免制度の実施と拡充が必要である。
申請不要の一宮市の実績が総件数8,401件中7,286件となっている。
減免実施の市町村の対象条件が厳しく、一般会計からの繰り入れがない。対象者がごく少数になっており、機能していない自治体も多い。減免対象者や内容の改善が必要である。
また、減免に対する「一般会計の繰り入れの禁止」など「保険料減免に関する3原則」に対する厚労省の厳しい指導をやめさせるとともに、市町村独自の一般会計からの繰り入れで、保険料の実効性ある減免制度の実現が必要である。
③利用料減免
介護保険利用料の独自減免は新たな実施の自治体はなく、春日井市が廃止したことにより、21市町村(39%)になった。
そのなかで、豊橋市(低所得者の利用料限度額の引き下げ)や江南市・阿久比町(非課税世帯への訪問介護の利用料軽減)、半田市・武豊町(非課税世帯への居宅・施設サービスの利用料半額助成)などの制度が優れており、実績も多い。
これらは、一般会計からの繰入で実施されており、他府県と比べても優れた内容で実施されている。他の市町村に広げていくことが求められている。
④介護予防・日常生活支援総合事業
第5期介護保険事業計画において「介護予防・日常生活支援総合事業」の実施で軽度利用者の介護保険外しをしないよう要請した。
2012年3月に愛知県保険医協会と愛知社保協が実施した市町村アンケートでは、「総合事業」を「第5期中に実施」としたのが豊明市と幸田町のみだった。「第5期中に検討」としたのは名古屋市、岡崎市、半田市、高浜市の5市、「第6期計画で検討」としたのは14市町村(26%)ある一方で、「実施しない」と回答したのが34市町村(63%)ある。
軽度の利用者の「保険外し」をさせないためにも引き続き各市町村で実施させない取り組みが必要である。
⑤特別養護老人ホームなど基盤整備
特別養護老人ホームの建設のテンポは遅く、入所待機者は2005年13,702人から連続して増え2010年の26,472人をピークに、2011年21,852人、2012年21,544人と減少している。これは施設の建設が進んだのではなく、新たに名寄せをおこなって正確な数字を出した自治体や待機者の定義を変更した自治体があるためと推測される。
いずれにしても「待機待ち」の実態や、低所得者や医療依存度が高いと「施設から選択」され、「利用者が選択」の自由はなく、入所できない実態は変わっていない。
特別養護老人ホームに代わる「終の住処」として介護付き有料老人ホームの建設が進んでいる。政府は、新たに「サービス付き高齢者向け住宅」制度を設けたが、特別養護老人ホームのように食事や居住費を軽減する「補足給付」はない。居住費・食費の全額自己負担化のなかで、経済的状況によって利用が制限される事態がいっそう進行している。
小規模多機能型居宅介護・夜間対応型訪問介護・認知症対応型通所介護など地域密着型サービスも計画どおりすすんでいない。
誰でもお金の心配なく安心して施設・在宅サービスが利用できるようにするために特別養護老人ホームや小規模多機能型施設の建設を中心に基盤整備を早急におこない、低所得者や医療依存度の高い利用者が入所できるよう独自の助成制度を設けることが必要である。
⑥地域包括支援センターの設置
地域包括支援センターは生活圏(中学校区、概ね人口2~3万人)ごとに高齢者の総合相談、権利擁護や介護予防・支援などの中核的センターとして設置され、今後「地域包括ケアシステム」の中心としての役割が担わされている。
設置数・委託費を増やし、高齢者の身近な相談窓口として介護予防や認知症対応など職員を増やし、責任をもった地域の「包括ケアセンター」としていくことが必要である。
⑦介護労働者の確保
深刻な介護職員不足問題について「介護報酬3%引上げ」「介護職員処遇改善交付金」など国の施策に自治体は期待を寄せているが、独自の財政的支援を行うところまでいっていない。
国の処遇改善交付金は廃止され、介護報酬に組込まれたが、それに見合う介護報酬の引き上げがされておらず、また利用者負担にもなっている。介護職員の定着のため、いっそうの処遇改善を求めていくことが必要である。
(2)高齢者福祉施策の充実
高齢者の「孤立死」や「孤独死」、1人暮らし、高齢者夫婦や認知症の増加などで多様な生活支援が緊急に求められている。
国は、医療や介護の連携を強化し、地域で高齢者の暮らしをささえる配食・買い物・見守りなどの「地域包括ケアシステム」を「自己責任」「市場化」を土台に推進しようとしている。
高齢期になっても安心して暮らしていける地域づくりにむけて、ボランティアや民間任せでなく、国と市町村の公的責任を明確にした取り組みが必要である。
①高齢者が地域で生き生きと暮らしていくために
ア、安否確認、生活支援、ゴミ出し援助
ほとんどの市町村で福祉電話の貸与や配食サービス、民生委員、老人クラブ、配食業者、乳酸菌飲料配達やボランティアなどによる訪問事業など安否確認や生活支援を実施している。しかし、その方法は、市町村によってばらつきがあるだけでなく、地域でネットワーク化されず、民生委員やボランティア頼みになっている。
ゴミ出し援助は、22市町村(41%)で実施されている。実施市町村と活用を増やしていくための取り組みが求められる。
イ、敬老パスや地域巡回バスなど外出支援
巡回バス・福祉バスは38市町(70%)の実施となった。また巡回バスのない豊橋市、半田市、岩倉市、江南市など高齢者の足の確保のため配布をしている市町村を含め、タクシー代助成は46市町村(85%)。豊根村は、村営バスで65歳以上の高齢者と障害者に無料券を発行している。
巡回バスもタクシー代助成もしていないのは東栄町のみである。
ウ、宅老所など高齢者のたまり場等への援助
宅老所や街角サロンなどへの助成は、新たに東海市、豊明市が実施、安城市、豊根村が廃止し、19市町村(35%)となった。なお、検討中は津島市、東浦町、設楽町である。
介護予防が日常の暮らしのなかですすめられ、高齢者がいきいきと暮らせるようこれらの施策を住民が必要とする内容に改善させていくことが必要である。
エ、住宅改修の独自助成制度
住宅改修の独自助成は、介護保険の上乗せで実施が30市町村(57%)、介護保険利用者以外への助成が19市町村(35%)となっている。江南市と大口町が新たに実施した。
オ、住宅改修・福祉用具の受領委任払い
住宅改修の受領委任払い制度は、新たに清須市、豊山町、武豊町の3市町が実施し、41市町村(76%)となった。実績は昨年より1,608件増加し、13,579件となった。
福祉用具の受領委任払い制度は、新たに清須市、豊山町、武豊町の3市町が実施し、33市町村(61%)となった。実績は昨年よりも3,323件減少し、10,010件となった。
②配食サービス
自立支援事業となり、「自立支援につながっているか」などの調査実施や施設での食事の自己負担化の動きなかで、助成額を増やして利用者負担額の引き下げ、食事内容の改善を求めた。
配食サービスは、全市町村で実施している。そのうち毎日実施は20市町村(37%)である。
1食当たりの利用者負担額は市町村格差が大きく、110円~650円の幅がある。自治体の助成額も市町村格差が大きく、100円~700円の助成になっている。
今後、安否確認や閉じこもりを予防していくため対象者の拡大とあわせ、自治体の助成額を増やし、食事内容の改善にむけた取り組みが求められている。
(3)介護認定者の障害者控除の認定
認定書の発行は、2007年の13,171人から2008年18,544人、2009年22,712人、2010年29,955人、2011年32,736人へと年々増えている。ねばり強い働きかけの結果である。
「要介護1以上の要介護認定者」を原則としてすべて「障害者控除」の対象としているのは、39市町村(72%)に広がった。
また、原則としてすべての要介護者に認定書を送付しているのは、一宮市、春日井市、小牧市、稲沢市、知立市、岩倉市、日進市、東郷町、豊山町、扶桑町、阿久比町、武豊町、幸田町、豊根村の14市町村(26%)になった。新たに要介護者への認定書送付を始めたのは小牧市(1,241人)、豊山町(351人)、武豊町(1,074人)の3市町。送付を中止したのは東浦町。
認定書または申請書の個別送付を実施しているのは、合わせて28市町村(52%)になった。
市町村によって対応が異なっている実態を改善させるため、すべての要介護者に障害者控除の認定書・申請書を送付させる取り組みが必要である。
4.高齢者医療・福祉医療の充実
①後期高齢者及び国保の高額医療・高額介護合算療養費の申請書の送付
後期高齢者及び国保で高額医療費と高額介護費の合算制度ができた。しかし、自分が該当するかは通知で知らされるが、払い戻しには市町村への申請が必要である。
申請書を送付しているのは、後期高齢者で7市村(13%)、国保で24市町村(44%)に留まっている。
該当者へ個別に申請書を送付することにより、申請漏れを防ぐことができる。全市町村で、高額医療・高額介護合算療養費の該当者へ、個別に申請書と返信封筒を送付すべきである。
自動払いをするのは、国保で東郷町のみである。
②後期高齢者に対する資格証明書の発行
後期高齢者医療制度の発足に伴い、長期の保険料滞納者は、保険証が取り上げられ資格証明書が発行されるように制度が改悪された。
愛知県広域連合は、私たちの要請に対し「悪質・高額所得者以外には発行しない。発行はかぎりなくゼロ」と回答している。2012年12月現在、資格証明書は発行されていなかった。しかし短期保険証の発行は2010年3月末262件から、2011年3月末482件、2012年3月末577件へと大幅に増加している。資格証明書・短期保険証の発行は行わないよう強く求めたい。
5.子育て支援
①妊婦健診の拡大
妊婦健診は、長年の運動が実り、全市町村で14回の助成が実現した。
産婦(産後)健診の助成は19市町村(35%)で実施している。
②就学援助
就学援助の認定基準を生活保護基準の1.5倍以上が5市町(9%)、1.3倍から1.4倍が11市町村(20%)になっている。申請窓口は、「市町村窓口」と「学校」の両方利用できるのが31市町村(57%)になっている。
民生委員の証明が必要なのは、まだ9市町村(16%)残っている。安城市では懇談の中で、市から「民生委員から証明が必要なのか疑問も出ている」との意見も出された。
2012年度の就学援助の支給割合は7.80%(見込み)となっており、2011年度の7.84%から減少している。引き続き就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等を求めていくことが必要である。
③学校給食の無償化
子どもの「貧困」が社会問題になっているなかで、給食費が払えず給食が食べられない事態が生まれている。懇談では「3カ月未納だと給食を停める」と教員から言われた現状を伝えると、市は「それは間違いなので学校を指導します」と回答があった。
義務教育の学校給食の無償化について要請したが、ほとんどの自治体で「食材費の保護者負担」(学校教育法11条)と回答。「給食無償化」をしているのは、岩倉市(義務教育の第3子以降)、清須市(世帯非課税又は所得割なし第3子以降)のみである。大口町は小・中学校の給食費の半額補助、大治町は1人月額150円の補助を実施している。また、飛島村は給食費負担の軽減を目的に給食部会へ補助金を出している。
6.国保の改善について
①国保の都道府県単位化
後期高齢者医療制度改革を口実にして、国民健康保険を都道府県単位化する動きが強められている。
愛知県でも2010年12月20日に「国保広域化等支援方針」を決め、広域化の方向性と併せて当面、目標を定め収納率向上に取り組み、都道府県単位化に向けての準備をすすめている。
「過去の市町村の合併で保険料(税)が値上げされたが、同じことが起きるのではないか」「滞納者に対する制裁が強化され、医療を受けられない人が増加するのではないか」などを問うとともに、都道府県単位化で、市町村からの一般財源の投入・独自減免制度の廃止などの問題点を明らかにする必要がある。
このような国保の都道府県単位化について「賛成できない」と回答したのは飛島村のみだった。23市町(43%)が「広域化が必要」「広域化すべき」と回答し、「国や県の動向をみて」と27市町(50%)が回答している。広域化が必要の理由に「財政基盤の安定」と言っているが、国が大幅に削減した補助金を増やさない限り基盤の安定はない。
また、2013年度から、保険料(税)の所得割算定方式を旧ただし書き方式に統一することが決まっており、該当する名古屋市・豊橋市・岡崎市では、所得が変わらないにも関わらず、低所得世帯、多人数世帯、障がい者世帯などで急激な保険料(税)の値上げとなる。一般会計からの繰り入れにより、恒久的な減免措置を設けるなどの対応を要請した。
名古屋市の「算定方式の変更」に対しては、保険料の引き下げや「恒久的な緩和措置」を求め緊急署名に取り組み、昨年11月議会に提出した。また、本庁及び各区の国保担当課長との懇談や国保運営協議会の傍聴、国保運営委員への要請行動など、キャラバン行動と連動して取り組んだ。
その結果、障害者世帯や多人数世帯に配慮した「恒久的な独自控除」を設けさせることができた。しかし、「保険料の範囲」を越えるものではなく河村市長は「一般会計からの繰り入れはしない」と表明しており、保険料引き下げをさせるために、一般会計を更に繰り入れさせることが、今後の課題となっている。
②保険料(税)および減免制度
2012年6月1日現在、愛知県内の国保加入世帯数は1,096,341世帯で、そのうちの16.9%に当たる185,517世帯が保険料(税)を滞納し、短期保険証が54,425件、資格証明書が5,404件発行されている。加入者の2割近くが払いきれない保険料(税)は、そもそも高すぎる。国に対し国庫負担を元に戻すよう要望するとともに、保険料(税)の引き下げ、市町村独自の低所得者減免の拡充などが求められる。
払える保険料(税)にしていくために、昨年に続き以下の要請をした。
ア)これまで以上に一般会計からの繰り入れをおこない、減免制度を拡充し、払える保険料(税)にする。
イ)18歳未満の子どもは均等割の対象から外すこと。
ウ)前年所得が生活保護基準の1.4倍以下の減免制度を新設する。
エ)所得激減の要件を「前年所得1000万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」にする。
「低所得者向けの減免」は、19市町村(35%)が実施している。また、「収入減の減免要件」は阿久比町を除く53市町村(98%)で実施しているが、要件の緩和が必要である。
引き続き国に対し、国庫負担を医療費の45%に戻し、払える保険料(税)にしていくための取り組みが必要である。また、各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。
③資格証明書・短期保険証
資格証明書の発行は、2012年8月1日現在、愛知県合計で5,084件と滞納世帯に対する比率を2.7%(全国7.0%)に抑えている。資格証明書を1枚も発行していないのは24市町村(45%)になった。
資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは21市町村(39%)、「独自に配慮」は19市町村(35%)である。
資格証明書の発行は、名古屋市が前年の3,983件から4,129件へと増加している。名古屋市を除く愛知県合計は、前年の1,196件から905件へと減少しており、名古屋市の突出した発行数は異常である。
短期保険証の発行数は、64,139件から54,425件へと減少し、滞納世帯に対する割合は29.3%(全国27.2%)となっている。微減しているが、有効期限が1カ月の保険証が15市町村6,074件から19市町村4,618件(未回答の名古屋市を除く)になっている。1カ月の証を大量発行しているのは、あま市1,129件、豊田市742件、瀬戸市651件。
また保険証の窓口での留め置きも33市町村(61%)8,539件となっており、未交付も24市町村(44%)9,018件となっている。こうした差別措置は、社会保障制度としては許されず、人権問題としてとらえ撤廃する必要がある。
④滞納者差し押さえ
滞納者の差押さえ件数も2008年7,086件、2009年8,151件、2010年9,412件、2011年10,871件へと増加している。なかでも名古屋市は2008年164件、2009年305件、2010年1,254件、2011年2,436件へと急増している。差押さえ物件は不動産もあるが、預貯金が7,031件で64.7%を占め、学資保険も7件あった。
滞納世帯の多くは、払いたくても払えないという世帯が圧倒的である。また、分割納付であっても一定の滞納額以上の対象者への一律差押さえ実施など、各地で行き過ぎた差押えがされており、「人権問題」として捉え、具体的な事例に対する分析と対策が求められている。
収納率アップのための差押えを含めた徴収強化がされているが、国保法第1条「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とする」との定めからみても許されない。憲法25条に沿った対応が強く求められる。なお、国税徴収法第48条は、「超過差押え及び無益な差押え禁止」を明記し、また国税徴収法153条および地方税15条7項では、「滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させる恐れのあるときは、差押えをおこなっていけない」としている。
⑤一部負担金減免
一部負担金の減免制度は、扶桑町、阿久比町の2町が新たに実施し、49市町村(91%)となった。未整備のままは新城市、北名古屋市、設楽町、東栄町、豊根村の5市町村(9%)である。
生活保護基準を基にした減免は、大口町、扶桑町、阿久比町で実施され、43市町村(80%)となった。
2011年度の減免実績は、前年の7市225件から16市472件へと増加しているが、東日本大震災被災者や、原発事故避難者への対応で増加していると考えられる。
引き続き、住民にわかりやすいリーフの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度の拡充と申請の促進運動が必要である。
⑤国保運営協議会
国保運営協議会を公開しているのは30市町村(56%)、非公開は24市町村(44%)である。
運営協議会に公募枠を設けているのは10市(19%)ある。中核市はいずれも公募枠を設けており、名古屋市においても早急に設けるべきである。
国民健康保険の改善のためにも、議会の公開や公募委員の実現が求められる。
7.障害者施策の充実について
国は、2012年4月1日から、相談支援の充実では、新規利用者にはサービス等利用計画作成を必須とし、市町村はサービス等利用計画案を勘案して支給決定を行うこととした。2014年度までにはすべての対象者に実施するとした。
障害児についても、新たに児童福祉法に基づき、市町村が指定する指定障害児相談支援事業者が、通所サービスの利用に係る障害児支援利用計画(障害者のサービス等利用計画に相当)を作成することとされた。
しかし、居宅介護・重度訪問介護・行動援護・同行援護(2011年10月実施)の支給状況をみると重度訪問介護・行動援護・同行援護の3事業で支給者が「ゼロ」の自治体も散見され、サービス基盤の整備が課題と言える。
こうした中で「支給決定時からケアマネジメントを実施」する意味はどこにあるのだろうか。相談支援事業者は、サービスを提供する事業所が無い中で、障害者や家族が希望するサービスを確保できるのだろうか。
結局は、障害者への介助の大部分を家族に依存し、希望しない施設利用とわずかな介護サービス利用を家族に納得させる役割が、自治体から相談支援事業者に転嫁されたことになるのではないか。危惧されるとともに、動きを注視したい。
①要支援の介護認定者への障害者福祉サービスの上乗せについて
10市町が上乗せを実施しているにとどまっている。障害福祉サービスを利用している発達障害者・軽度知的障害者や視力障害者の中には、介護認定で「要支援」とされたことから従来うけていた障害者福祉サービスが利用できない事態も生まれている。
②障害者施策について
昨年と同様に地域間格差が端的に現れた結果となっている。また、人口に比べ支給者数が少ないのではないかと思われる。
居宅介護では、30万人以上の5市で豊橋市:328人/平均26時間、岡崎市:731人/平均33.5時間、豊田市:264人/平均22時間、一宮市:686人/平均36.3時間、春日井市:459人/平均28時間となっており、支給者数では2倍以上、時間では10時間以上の差が見られる。
居宅介護では、積極的な利用をうながす働きかけと身近に相談できる所が求められる。
移動支援の状況は、昨年と大きく変わった自治体は生まれていない。移動支援では、通所・通学を対象とすべきである。
③災害時要援護者―障害者対策について
避難所のバリアフリー化―スロープの設置は、すすめられてはいるものの「今後検討する」「努める」「施設管理者との調整」の回答が目立つものとなっている。
福祉避難所については、高齢者施設と協定を結んでいる自治体がほとんどであるが、個室対応ができるのであろうか。安城・小牧・東海・豊明・東浦では「個室対応ができない」と回答しているが、それが実状ではないだろうか。
要援護者情報の管理、情報開示を含め、災害時要援護者対策は東日本大震災の教訓をいかそうとする姿勢すら見えない回答となっている。
東日本大震災から学び、誰も排除せず協力し合い避難生活を送れるようにすべきである。
8.健診事業
①特定健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と制度変更された。健診の実施に責任を持つのが自治体から保険者へと変更され、病気の早期発見に主眼がおかれなくなった。
今回も、特定健診の実施状況をつかみ、住民の健康を重視し、改善を要請した。
特定健診を個別方式または集団方式の両方またはいずれか一方で無料受診できるのは41市町村(76%)である。個別方式で無料実施は36市町村(実施市町村のうち74%)であり、集団方式で無料実施は26市町村(実施市町村のうち70%)である。
各種がん検診は、項目ごとに実施のばらつきがあるが、全市町村ですべての検診を実施する必要がある。また、すべてのがん検診を受けようとすると多額の負担になる。自己負担をなくし、費用負担の心配なく検診が受けられるように改善が必要である。
②40歳未満の住民健診
40歳未満を対象とした住民健診を実施しているのは50市町村(93%)であり、特定健診と同じ内容で実施しているのは21市町村(実施市町村の42%)である。
未実施は、名古屋市、岡崎市、津島市、東海市の4市のみである。1日も早く実施をさせていくことが必要である。
③歯周疾患検診
歯周疾患検診を毎年受診できるのは19市町村(35%)である。
個別方式または集団方式の両方またはいずれか一方で、無料で受診できるのは45市町村(83%)となった。
国基準(40歳、50歳、60歳、70歳)より対象を拡大しているのは47市町村(87%)となった。
9.予防接種について
2013年度からHib、小児用肺炎球菌、HPVの3ワクチンが先行して定期予防接種とされる予定だが、接種費用は市町村の負担となる。財政事情から被接種者への自己負担を求める自治体が出てくることが懸念される。
予防接種は、国の責任で行うことが本来の姿であり、国庫負担を増やすことが求められる。また、市町村では費用負担の心配なく予防接種が受けられるよう、無料化することが求められる。
①Hib・小児用肺炎球菌・HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの無料接種
Hib・小児用肺炎球菌・HPVワクチンの予防接種費用について、全市町村で助成が行われている。そのうち自己負担無料なのは、Hibと小児用肺炎球菌が33市町村(61%)、HPVが32市町村(59%)である。
②高齢者用肺炎球菌・水痘(みずぼうそう)・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・B型肝炎ウィルス・ロタウィルスワクチンの任意予防接種費用への助成
高齢者用肺炎球菌の助成を実施するのは昨年の20市町村(37%)から、40市町村(74%)に広がった。
みずぼうそう・おたふくかぜへの助成は、名古屋市、小牧市、飛島村、豊根村で実施されている。そのうち、小牧市と飛島村は自己負担無料で接種できる。
ロタへの助成は、名古屋市、豊橋市、北名古屋市、豊根村で実施されている。そのうち、豊根村は自己負担無料で接種できる。
B型肝炎への助成はなかった。
10.生活保護
世界有数の経済力を誇る日本で餓死、孤立死といった悲惨な事件が後を絶たない。相対的貧困率は16.0%(2009年)となり、貧困線以下の国民が2000万人を超える。とりわけ、労働法制の規制緩和=雇用破壊のもとで、若年層を中心に年収200万円以下の「働く貧困層」(ワーキングプア)が5年連続で1000万人を超えた。加えて、劣悪な年金制度に起因する高齢者の貧困層も1000万人を超えている。15年余の新自由主義的「構造改革」政治が、日本社会の劣化、「貧困大国」化に拍車をかけたといえる。さらに、貧困層の増大、相対的貧困から絶対的貧困へと広がる様相を示している。
2012年5月には211万816人と過去最多の受給者数を記録した。愛知県内では、保護開始件数は2009年20,126件(相談件数比30.5%)、2010年17,052件(同31%)、2011年14,452件(同30.2%)と減少傾向にある。
生活保護担当の職員については、2012年は正規690人・非正規259人となっている。1職員あたりの担当受給者数は、蟹江町241人、大治町200人、武豊町162人と国基準80人の倍以上。さらに、100人を超えるのは、名古屋市、豊橋市など15市、国基準を上回るのは合計26自治体である。担当職員の在任期間も市で最低4カ月、最高5年5カ月と短い。国基準を超える職員配置と短期間の在任ではきめ細かな支援はできない。緊急に職員体制の充実が必要である。
景気悪化の元、雇用問題は厳しい状態が続いている。しかし国は、就労・自立支援、不正受給を口実にした生活保護費削減や「窓口での暴力行為」などを口実に、警察官OBを配置するなど生活保護費の圧縮にむけた対策が強まっている。
すでに、岡崎市、春日井市、豊田市、江南市、みよし市、あま市、長久手市の7自治体が生活保護関係に配置し、検討中は名古屋市、常滑市、清須市の3市である。なお、名古屋市は2013年度4月予算の中で警察官OB配置を決定した。
9.今後の課題
2012年12月16日投票で行われた衆議院選挙の結果は、民主党への批判と主権者の意思をゆがめる小選挙区制度のもとで自民党が「圧勝」した。しかし、自民党の公約が支持されたとは到底言えるものではなく、社会保障の拡充、消費税増税反対、TPP参加反対、原発ゼロの日本の実現など、国民要求と選挙結果には大きな隔たりがある。
「社会保障制度改革国民会議」がはじまり、医療・介護・年金・少子化対策・生活保護問題等、社会保障改悪の具体案の検討が始まった。民主・自民・公明の3党合意のもとに「自立・自助、共助」を前面に、「公的責任」は極めて限定的な救済に対してだけという、自民党の理念に基づく憲法25条をないがしろにする、重大な挑戦である。
増税と一体で行われる「社会保障制度改悪」のダブル攻撃によって、国民生活は著しい悪化が予想される。
声高に「改憲」や国防軍発言やTPP交渉参加等々、危険な安倍自民党内閣にたいし、雇用の確保や社会保障の充実を求めた共同の運動の高揚が求められている。
(1)自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~これまでの貴重な成果を踏まえ~
①福祉医療制度の存続・拡充
福祉医療制度の見直しについて、2011年から2012年にかけ、キャラバン行動の中でも重点要求として追及してきた。愛知県は当初、2012年度中に改定案をまとめ、2013年度から具体化に向けた準備を進め、2014年度から実施の予定であったものの、改正案がまとまらずその工程が遅れてきている。キャラバン行動での理解と協力にむけた説明や率直な意見交換や、保険医協会の地元会員からの意見書採択にむけた請願提出、個人・団体の賛同署名等の積み上げによる成果である。しかし、愛知県は過去2回の改定計画の頓挫を踏まえ、「同じ轍は踏まない」と慎重にその実現のため取り組みを強めている。引き続き、県の動向を注視しつつ、機敏な対応を取る必要がある。
②安心安全の介護の実現
介護保険料の大幅引き上げや利用料の負担、軽度者の保険はずしなど、制度見直しが先行している。今後、「介護サービスの範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、低所得をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保」「高齢者医療制度に係る改革――制度の在り方、70~74歳の患者負担の在り方」(3党実務者協議「検討項目」より)等、具体化がされる。県民、地域住民の立場で改悪が波及されないような取り組みが必要である。
③国民健康保険の改善
国民健康保険料(税)が払えない加入者が増加し、無保険となり医療が受けられない事態も起こっている。今後、「医療保険制度について、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」や「医療保険の財政基盤の安定化―市町村国保の財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等」の具体化が進められる。
厚労省「国民健康保険実態調査」(2010年度)によれば、国保の加入者の構成は無職40.8%、被用者35.3%、自営業者15.5%、農林水産業3.1%である。さらに、所得なし27.6%、100万円以下53.8%、200万円以下77.4%、1世帯当たりの平均所得は約145万円となっている。
2012年4月5日改正国保法では、国公負担の割合を給付費の34%が32%に引き下げ、財政運営の都道府県単位化による保険財政共同安定化事業対象をすべての医療費に拡大するなど、すすめられている。高すぎる保険料の結果、滞納者の増加、差押えの強化など、悪循環となっている。国民健康保険加入者の実態に合わせた保険料の設定や運営の在り方など、緊急に見直しが求められる。無保険者の増大で、医療を受ける権利が奪われることのないような対策が必要である。
④生活保護問題
2012年春頃から、お笑いタレントの母親による「不正受給」問題に端を発した生活保護バッシングは急速に強まり、国会での厚生労働大臣の「保護基準の見直しや扶養義務範囲の見直し・法制化」発言、2013年度予算での削減実施と加速している。
バッシングが、国民的な支持を得られる背景には、「貧困」化の深刻な広がりによる生活悪化がある。2012年5月には211万816人と過去最多の受給者数を記録。ここ数年不況による雇用環境の悪化で、失業による生活保護受給も増加中である。
なかでも、若年者の非正規化による生活悪化、子育て世代の貧困率の高さ、ひとり親家庭、高齢者世帯に集中する。しかし、所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、実際に受給している割合を示す「捕捉率」は、ドイツでは64.6%、イギリスでは47~90%、フランスでは91.6%なのに対し、日本は15.3~18%となっている。
愛知県内でも、生活保護受給者が増加しているものの、相談件数47,744件にたいし申請件数15,058件、保護開始14,452件と3割強が保護開始の状況である。生活保護基準の引き下げは、最低基準や年金、就学援助はじめ、課税最低限、各種福祉施策に連動するナショナルミニマムに大きく影響を及ぼす。国の動きを中止させるとともに、改悪の影響を最低限にとどめるなど県内世論の確立が急がれる。
⑤子育て支援、就学援助など
「減税」を売り看板にする河村名古屋市長は、2013年4月から保育料「5%UP」、公立保育園15か所の民営化など、子育て支援に反する市政をすすめている。2013年4月には市長選挙が行われるが、真価が問われなければならない。
就学援助の受給割合は、愛知県内平均7.97%、名古屋市16.3%、豊橋市18.4%と都市部で増加しているものの、全国水準より大きな立ち遅れがみられる。受給者数は2011年度156万7831人で前年より1万6748人増加し、全生徒に占める割合は過去最多の16%。要保護は15万2060人、準要保護は141万5771人。都道府県別の割合では、大阪府が27%、山口県25%、高知県が24%と続いている。必要とするところに制度が届いているか、愛知の課題である。
(2)地域ごとの運動課題を明確にした運動を
医療・福祉・介護など社会保障施策の拡充を求め、子どもの医療費無料制度や障害者控除認定書の発行、巡回バス・福祉バス、配食サービスの実施、妊婦健診、予防接種助成など各市町村の施策を大きく前進させた。
さらに、国保の都道府県単位化(広域化)を阻止し、介護保険料や国保保険料(税)の引き下げ、独自減免など現行のサービスを改善させる取り組みと高齢者の生活を総合的に支える地域づくりなど継続的な取り組みの強化が求められている。
そのためには、①事前学習会では事前に回答を分析し、具体的な事例で改善をめざす準備をする、②重点陳情事項をできるだけ絞り込み集中的な受け応えを準備する、③「まとめ」の学習会も市町村ごとに開催し次年度の取り組みにつなげていく――など引き続き改善をしていくことが求められる。
また、キャラバン行動の懇談に留まらず、日常的な議会での審議状況の把握、議会の傍聴と適宜必要な要請行動を行うなど前後の取り組みが重要である。地域を主体とする継続的な取り組みにしていくように、地域社保協の確立などの運動体づくりが不可欠である。