2014年2月/愛知自治体キャラバン実行委員会
1.名 称
「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」
2.主 催
愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部
3.日 程
2013年10月22日(火)~25日(金)・30日(水)
※愛知県とは11月13日(水)に、名古屋市とは11月18日(月)に実施
4.要請相手とコース日程
愛知内54市町村を5コースで実施
コース | 主な地域 | 責任団体 | 宣伝カー |
---|---|---|---|
第1 | 尾西・海部 | 年金者組合 | 名古屋ブロック |
一宮・稲沢 | 一宮社保協 | ||
第2 | 尾北・尾東 | 自治労連 | 自治労連 |
尾中 | 新婦人 | ||
第3 | 知多・尾東 | 愛労連・社保協 | 愛労連 |
第4 | 西三河 | 社保協・新婦人 | 保険医協会 |
新婦人 | |||
第5 | 東三河 | 自治労連 | 豊橋市職労 |
東三河労連 | |||
事務局4団体 |
5.参加状況
※( )内は昨年参加者数
①各コースの参加者総数は延べ836(933)人であった。愛知県に37(33)人、名古屋市に34(45)人が参加した。各団体の参加は、延べ参加者数で次の通り。
団体名 | 延べ人員 |
---|---|
年金者組合 | 167(144) |
新婦人 | 114(121) |
自治労連(名古屋市職労含む) | 111(127) |
保険医協会 | 90( 97) |
愛労連(医労連・地域労連含む) | 83( 95) |
愛商連 | 82( 71) |
民医連 | 44( 36) |
②年金者組合や自治労連、医労連、尾中・東三河・知多など地域労連から参加している。また、新婦人、保険医協会、愛商連、民医連、愛障協、生健会、介護をよくする会はじめ地域で運動している市民団体からの参加が定着してきている。医労連は、看護師・介護労働者の確保に関わる独自要請を位置づけ参加した。
その他、地域社保協では一宮、日進から、介護をよくするの会、生健会、愛障協など市民団体から延べ81人が参加した。
東三河山間部は今回も事務局団体と東三河労連が協力し取り組んだ。
③自治体側からは747(723)人の出席があった。首長1(1)人、副首長2(5)人、議長1人事務局長18人が出席した。愛知県は21(19)人、名古屋市は19(14)人。主には、福祉・保険・医療の課長・次長等の担当者が対応した。
④地方議員は36市町村で、日本共産党から48人参加した。
6.事前学習会の取り組み
事前学習会は、要請事項だけでなく「社会保障と税の一体改革」の動きや国保の都道府県への運営委譲、介護保険の「見直し」等と地域の具体的要求の検討も含め、全地域での開催を目標に取り組み、18地域で開催し280人の参加があった。
「社会保障と税の一体改革」をめぐる情勢・進捗状況とたたかい方について学習を行った。
また、陳情書への文書回答・アンケート回答を受け、当日の懇談にむけ、地域の到達点を踏まえ分析と対策、交流、懇談当日の重点項目や発言者の確認など意志統一を行った。
地域要求の前進、制度の改善にむけ継続的に対応するうえでの「地域社保協」への発展が望まれる。市町村単位での学習会の開催、回答内容の分析と対策・検討が不可欠になっている。
また、社会保障をめぐる情勢や陳情内容の検討を深める上でも、講師団の養成が求められる。
開催地域 | 開催日 | 参加者数 | |
---|---|---|---|
東三河 | 豊橋・田原 | 10/17 | 15 (12) |
西三河 | 豊田・みよし | 9/30 | 14 ( 8) |
西尾 | 10/ 8 | 15 (12) | |
岡崎 | 10/10 | 17 (19) | |
安城 | 10/12 | 9 (12) | |
知立・碧南・高浜 | ― | ― (11) | |
知多 | 半田 | 10/11 | 12 ( 9) |
大府 | 9/19 | 10 (New) | |
東海・知多 | 10/15 | 11 (11) | |
尾張東 | 瀬戸・尾張旭 | 10/19 | 24 (20) |
長久手・日進・東郷 | 10/ 9 | 18 (22) | |
豊明 | 10/ 4 | 7 ( 8) | |
尾張中部 | 春日井・小牧 | 10/10 | 19 (20) |
清須・北名古屋・豊山 | 10/12 | 16 (New) | |
尾張北 | 江南・大口・扶桑 | 10/11 | 15 (13) |
岩倉 | 10/15 | 5 (11) | |
犬山 | 10/12 | 17 (15) | |
尾張西 | 一宮・稲沢 | 10/18 | 38 (30) |
海部津島 | 津島・愛西・弥富・ あま・大治 |
9/27 | 27 (20) |
合 計 | 18地域 | 280(253) |
7.懇談の重点項目とアンケート・回答
①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように今年も重点項目を決めた。今回は、「滞納整理機構」「生活保護」「安心の介護、軽度者外し」「高齢者施策充実」「子育て支援」「就学援助」「国保改善」「障がい児者」「予防接種」を重点に設定した。
②要請事項は、すでに多くの市町村が実施している施策は入れずに、実施状況をアンケートで集約した。
③さらに、住民が安心して暮らしていける市町村の施策の充実のなかで介護認定者の障害者控除認定書発行や子育て支援、国保の制裁措置の改善などを求め、あわせて、介護報酬改定や介護保険料値上げ、軽度者外しの影響などの弊害について実態を伝え国への意見書採択と改善を求めた。
④要請項目についてのアンケート・文書回答について、キャラバンの事前学習会で活用できるように準備した。
アンケートはすべての市町村から届いた。
文書回答は96%(昨年96%)の市町村から提出されたが、豊田市、みよし市が届かなかった。また、豊橋市は懇談後となった。
⑤国への意見書では、医師・看護師増を求める意見書が26、介護保険の国庫負担引き上げを求める意見書が23採択されている。
県への意見書では、福祉医療制度の存続・拡充に関する意見書が、最終的に34市町村(63%)で採択されている(趣旨採択含む)。
国への意見書を採択したのは次の通り。
・年金…2市
・介護…9市町
・国保・高齢者…3市
・子育て支援…3市町
・障がい者施策…3市
・医師・看護師…4市町
・消費税…1村
8.要望項目への対応と到達点
34年をむかえた自治体キャラバンは、地域住民の運動とともに、子ども医療費無料制度の拡大、高額療養費や出産育児一時金の受領委任払いの実施、妊婦健診の助成回数拡大、福祉給付金制度の窓口無料化、国保一部負担金減免制度の拡充、介護保険料・利用料の減免制度の拡大、地域巡回バスなどの外出支援、配食サービスの拡大、Hib・小児用肺炎球菌・HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの全市町村での助成など実現してきた。
2013年は、高齢者用肺炎球菌ワクチンの任意予防接種の公費助成を全市町村で実施させたことや、障害者控除認定書発行枚数が要望当初の9倍を超えるなど、市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たした。
2013年のキャラバン行動は、社会保障連続改悪の方向を打ち出した社会保障制度改革「プログラム」法案と生活保護改悪関連二法案が、臨時国会に提出されているなかでの実施となった。そのため各市町村との懇談では、「国の社会保障改悪に対し防波堤の役割」を強く要請した。
1.自治体の基本的あり方
①憲法、地方自治法などをふまえて、住民一人ひとりが人間としての尊厳が保障され、健康で文化的で平和的な生活を送れるように自治体の施策を進めること、および「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の目的に沿って、国の施策に左右されることなく、住民の利益への奉仕を最優先することを要請した。
②徴税を強める愛知県地方税滞納整理機構について、「徴税は自治体の業務である」ことをふまえて、滞納整理機構に税の徴収事務を移管しないこと。参加していない市町村は今後とも参加しないこと。税滞納世帯の解決は、住民の実情をよくつかみ、相談にのるとともに、地方税法第15条(納税緩和措置)の適用をはじめ、分納・減免などを求めた。
愛知県地方税滞納整理機構が、市町村民税の滞納整理を推進すると共に、市町村の税務職員の徴税技術の向上を図ることを目的として、県内6カ所に設立され、2011年4月から税金等の徴収及び滞納整理を行い、更新の時期を迎えたが継続されている。
機構送りになった事案について、市町村窓口は「機構送りになった事案だから」と「相談」の対象から外されるなど、住民に不利益が生じている。機構まかせにせず、市町村が責任を持って相談に乗ることが重要であり、そのことを要請した。
機構に参加している自治体数は、2013年度は48市町村。参加していないのは名古屋市(独自の「債権回収室」設置)、岡崎市、春日井市、豊田市、大口町、幸田町の6市町である。
2012年度の徴収額は、28億4,000万円、徴収率は55.4%。2011年度の市町村税(国民健康保険税を含む)滞納繰越分の県平均徴収率の18.6%の約3倍と高い徴収率となっている。
キャラバンの懇談では「差押えは生活状況を把握して」と回答しているが、そもそも生活費に食い込む差押えはすべきでない。
機構への引き継ぎ基準は、「滞納額50万円以上かつ徴収困難」などあるが、一方で「少額でも引き継ぐ」としたのが24市町村(参加市町村の50%)あり、「100件を機構に引き継ぐ」と回答している自治体もあり、機械的な対応がされていないかの調査が必要だ。
機構送りになった事案には国保税も含まれており、その滞納者に保険証が届いているか定かでなく、医療を受ける権利が奪われかねないものとなっている。
法的根拠のない整理機構の廃止を要求するとともに、差押えなどの強制徴収でなく、地方税第15条(納税の緩和措置)の適用をはじめ、分納・減免などでの対応が求められている。
2.生活保護の拡充を求めて
自助(自己責任)を強調する社会保障改革推進法実施の最初の標的が生活保護で、3回に分けた平均6.5%引き下げの第一弾が2013年8月に実施された。
生活保護は全ての社会保障の土台であるが、当事者が声を挙げにくい生活保護を先ず狙い打ちにした。しかし、保護基準の引き下げにたいし、全国10,654件、愛知は302件の不服審査請求が提出され、当事者と支援者のたたかいが広がっている。
2013年自治体キャラバンは、生活保護改悪に対する自治体の姿勢と対応を問うことを、第一の重点に据えた。
①生活保護が必要な人に早急な支給を
生活保護は、受給要件が厳しいこともあり、厚労省が2010年に発表した推計でも、基準で定める最低生活費を下回る所得しかない世帯の15.3%しか受給していないことがわかっている。
相談件数・申請件数・保護開始件数は2010年度から年々減少しているが、依然として保護開始件数は1万3千件を超えている。生活保護の受給世帯数は約6万世帯と、愛知県297万世帯の約2%となっている。
こうしたなかで、相手の弱みに付け込み申請をさせないようにする「脅迫」型、「働けるのだから働け」等と追い返す「働けるからムリ」型、口頭でも有効な申請を「書類を一式全てそろえなければ申請は受け付けない」という「申請煩雑化」型など、福祉事務所の窓口で申請をさせない「水際作戦」の実態が、全国的には多数報告されている。
自治体キャラバンでは、生活保護の相談・申請にあたっては、憲法第25条および生活保護法第1条・第2条に基づいて行い、申請書を渡さない、親族の扶養について問いただすなど、相談者・申請者を追い返す違法な「水際作戦」を行わないこと、生活保護が必要な人には早急に支給することを求めた。懇談ではほとんどの自治体が、そのようなことがないよう努めているとの回答であった。
②生活保護費の引き下げに対し、自治体の責任で受給者の生存権を守る措置を
今回の基準引き下げは3年間で平均6.5%・最大10%にも達し、子どもが多い世帯ほど削減額が大きくなり、子どもの貧困にも拍車をかける。生活保護基準の引き下げは、1950年に現行制度が開始されて以来、2003年(0.9%減)と2004年(0.2%減)のみで、戦後最大の引き下げである。
今回削られる生活扶助費は、食費、光熱費、衣類などに充てられる生活費そのもので、生活を切り詰める貧困世帯をさらに追い詰める。キャラバンでは引き下げ分に対応した自治体の措置を求めたが、法に基づき適正に対応している、受給者が困らないよう親切・丁寧に相談にのるという範囲の回答にとどまっている。
③生活保護費引き下げに連動する諸施策に独自の対策を
厚労省は、生活保護基準は最低賃金基準やや就学援助・保育料減免・国民健康保険料減免など38施策に連動するとしており、北海道帯広市の独自の調べでは51施策で市民の4分の3に影響するとしている。
2013年度は生活保護引き下げが年度途中であったことから厚労省も連動しない手当を行った。キャラバンでは、2014年度以降の影響試算の実施と市独自の対策を求めたが、キャラバンの時点ではほとんどの自治体が調査も行われず対策も考えられていなかった。
3.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
①介護保険料・利用料の減免制度
介護保険制度見直しの検討が進む中、「要支援者の給付はずし」や「特養への入居は介護度3以上」などに対し、住民の立場で国に意見を述べることを要請した。県は「良い悪いは判断できない」との発言にとどまった。介護保険利用者や家族、関係者の「保険あって介護なし」につながる不安や、自治体関係者の「公的責任の放棄につながる」懸念など、参加者から積極的な対応を求めた。
介護保険料減免は31市町村(57%)で、利用料減免は22市町(41%)で実施されている。訪問介護、通所介護の利用料減免等は利用者からの切実な声である。すべての自治体で低所得者に対する利用料減免制度の実施・拡充が求められる。
②介護保険による介護予防サービス及び地域支援事業を充実し、要支援の介護保険外し反対を
現在検討されている介護保険改悪は、要介護認定者の4分の1にあたる約154万人の要支援者を介護保険から外し、「介護予防・日常生活支援総合事業」を焼き直した「地域包括推進事業(仮称)」に移行しようとしている。「地域包括推進事業(仮称)」の内容は市町村の裁量とされ、介護にあたる人員や運営の基準もなく、ボランティアや民間企業頼みとなる。
要支援者への保険給付の大半を占める専門のヘルパーによる生活支援の切り捨てにつながり、財政状況によっては市町村間でサービス内容に差が出ることや、利用者の自己負担が高額になる。
懇談では、多くの自治体が要支援受け入れに反対する意向を示し、6市2町で反対の意見書が採択された。
(2)高齢者福祉施策の充実
①高齢者が地域でいきいきと生活するために、「ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策」「高齢者や障害者などの外出支援のため地域巡回バスや福祉バスなどの施策」の充実を求めた。
安否確認は、ほぼどの市町村も実施しているが、その方法は自治体規模や都市部・郊外部・山間部など条件によってばらばらである。安否確認の手段として、民生委員の訪問や老人クラブの利用、配食業者・乳酸菌飲料配達での確認がされている。
生活支援についてもほとんどの市町村で実施している。その内容は在宅介護支援サービス事業の利用やボランティアの活用などとしている。
バスは41市町村(76%)の実施となった。タクシー代助成は46市町村(85%)で実施されている。両方未実施なのは、津島市のみである。利用者からは「福祉車両がまだまだ少ない」との声が出されている。
(3)介護認定者の障害者控除の認定
介護保険のすべての要介護認定者を障害者控除の対象とすること。すべての要介護認定者に「障害者控除対象者認定書」または「障害者控除対象者認定申請書」を個別に送付することを求めた。
障害者手帳を所持していなくても、税法上の障害者(①知的障害者・精神障害者・身体障害者と認定された人、②常時寝たきりの人、③市町村長が身体障害者等に準ずると認めた人)と認められれば、障害者控除を受けることができる。
介護保険の要介護認定を受けている人は「障害者等に準ずる」と考えることができ、「障害者控除対象者」とすることが妥当である。
愛知県内の障害者控除認定書の発行枚数は、2011年度の32,736枚から2012年度には2,042枚増え、34,778枚となった(前年比106%)。調査を開始した2002年から9.2倍の発行枚数となった。これは、「要介護認定者に障害者控除認定書の発行を」と毎年粘り強く要請してきた成果だと言える。しかし、要介護認定者数からみると、依然少数であり、十分とは言えない状況にある。
①すべての要介護認定者を対象に
認定書を要支援2以上に発行するのは新たに扶桑町を加え、9市町(17%)となった。要介護1以上に発行するのは30市町村あり、合計39市町村(72%)が要介護1以上の方に認定書を発行している。
要介護1以上を認定対象と明記していないものの、介護認定時の調査票や主治医意見書から、障害高齢者及び認知症高齢者の日常生活自立度を確認し一定基準以上であれば発行している自治体もある。これらの自治体は、実質的に要介護1以上で認定書を発行しているところが多い。
一方で、「手帳所持者」や「障害者認定と同じレベル以上を認定」とする、非常に狭い範囲でしか障害者控除対象者を認めていない自治体もある。「要介護認定を受けた人は障害高齢者だ」という割り切りで対象者とすべきだ。
②認定書・申請書の送付を
要介護認定者に障害者控除認定書を自動的に送付しているのは、江南市を新たに加え15市町村(28%)となった。申請書を自動送付している14市町村と合わせ、29市町村(54%)となった。
申請漏れをなくすために、全市町村で少なくとも申請書を自動送付すべきだ。
③認定書は毎年送付を
確定申告時に認定書のコピーを添付して提出させる自治体も一部ある。しかし、障害高齢者に、交付された認定書を翌年まできちんと保管しておくことを求めるのは思いやりに欠ける措置だと言わざるを得ず、必要な時期に毎年交付することが求められる。
今回初めて認定書の発行が毎年されているかについて調査したが、47市町村(87%)が毎年発行していることが分かった。残る7市町は障害高齢者の立場に立って毎年発行に切り替えるべきだ。
4.福祉医療制度
(1)福祉医療制度を縮小せず、存続拡充を
愛知県は「福祉医療制度(子ども・障害者・母子父子家庭・高齢者の医療費助成)」に一部負担金と所得制限を導入する見直しを検討してきた。県民の反対世論の広まりの中で、2013年6月3日大村知事は「当面、一部負担金を導入することはしない」と2014年度から見直しを断念した。
キャラバンでは市町村議会に「県の福祉医療制度の存続・拡充を求める意見書」採択を求め、その後、広範な団体が意見書採択の取り組みを行った。その結果、全54市町村中、3分の2近い34市町村(63%・趣旨採択1含む)が意見書を採択するという成果を生んだ。知事は、「任期中は一部負担は導入しない」と述べたが、所得制限については「研究は引き続き深める」とした。今後、県が一部負担や所得制限を再び検討・提案することがないよう、引き続き存続・拡充を求めていく。
(2)子ども医療費助成制度
昨年のキャラバン以降、豊川市が自己負担を撤廃し、扶桑町が「中学校卒業」まで対象を拡大、南知多町が通院に一部自己負担があるものの対象を「18歳年度末」まで拡大した。
東郷町・飛島村・設楽町が入通院とも、南知多町が入院のみ、18歳年度末まで自己負担なしで実施している。この4町村を含み、49市町村(91%)が入通院とも「中学校卒業」以上を対象としており、「中学校卒業」まで入院・通院とも無料とすることは、常識となった。しかし、子ども医療費無料制度は国の制度としてはなく、愛知県の制度は通院で「義務教育就学前」、入院で「中学校卒業」までにとどまっている。
市町村で「18歳年度末」まで拡大するには、愛知県制度を通院も「中学校卒業」まで拡大することが不可欠であり、そのためには国の制度として直ちに「義務教育就学前」までの医療費助成制度を創設することが必要だ。
5.高齢者医療など
①高額医療・高額介護合算療養費
高額医療・高額介護合算療養費の支給についての通知で、申請書を自動的に送付しているのは、後期高齢者医療で11市町村(20%)、市町村国保で27市町村(50%)ある。
申請漏れが起こらないよう、全市町村で自動的に申請書を送付することが求められる。
②後期高齢者医療制度の保険料滞納者について
資格証明書の発行は、厚労省の指導もありゼロとなっているが、短期保険証は643人(滞納者数の6.54%)となっている。
差押え件数・金額を初めて調査した。2012年度は合計で93件約536万円となっているが、1件あたり57,632円となり、果たして「悪質な滞納」と言えるのか疑問である。
6.子育て支援・就学援助
就学援助制度の改善を求めた。
大府市で2013年度より就学援助制度基準が改善し、認定基準を生活保護の1.0倍から1.2倍とした。今までの認定基準では4人家族で年間所得約234万円だったが、約280万円まで援助基準が広がり、受給者も2012年度638人だったのが726人に、受給者割合も県平均の 7.9%を上回る8.8%になった。
県内の就学援助の認定制度は、生活保護基準の1.5倍以上としているのが5市町(9%)、1.3~1.4倍が12市町(22%)。半数以上が1.0~1.25倍となっている。これでは支給を受ける子どもたちの家庭が、生活保護家庭よりも生活が苦しいような事態がでてくる。
申請窓口は、「市町村窓口」と「学校」の両方を利用できるのが32市町村(59%)になっている。さらに、民生委員の証明等が必要なのは刈谷市、安城市、知立市が廃止し、残るは6市町村となった。
支給項目の基準では2010年から「クラブ活動費、生徒会費、PTA会費」も対象となったが3項目追加は6市町村、2項目追加は6市町村である。引き続き、就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等と義務教育の無償化を求める。
今回、生活保護基準引き下げで、今まで就学援助を受けていた世帯にも影響(尾張旭市など)との回答。一方、豊明市のように「ひきつづき現行世帯が受けられるように、就学援助基準を改正する予定」との自治体もあり、一層の基準引き上げの取り組みが求められる。
7.国保の改善について
①国民健康保険制度の都道府県への運営移譲に反対を
政府は、国保保険者の都道府県への移行時期を「2017年度目途」と位置付け、「改正」法案を「2015年の通常国会に提出することをめざす」としている。2013年度から名古屋市・豊橋市・岡崎市の保険料(税)の所得割算定方式が旧ただし書き方式に変更され、全市町村の算定方式が統一されたことも、その布石である。
都道府県単位化について、24市町村(44%)が「広域化が必要」「広域化すべき」と回答し、主な理由は「財政基盤の安定」とする。また、25市町村(46%)が「国や県の動向を見守る」「時期尚早」、反対は飛島村のみ。2017年実施に向け議論が集中されるが、国の検討内容に適切な批判や、一般会計からの繰り入れや独自減免制度の廃止などの保険料(税)への影響や問題点を引き続き明らかにし、反対世論を高める必要がある。
②国保料(税)と減免制度
2013年6月1日現在、愛知県内の国保加入世帯数は1,093,756世帯で、そのうちの15.0%に当たる163,570世帯が保険料(税)を滞納し、短期保険証が58,046件、資格証明書が6,044件発行されている。加入者の2割近くが払えない保険料(税)はそもそも高すぎる。国に対し国庫負担を元に戻すよう要望するとともに、保険料(税)の引き下げ、市町村独自の低所得者減免の拡充などが求められる。
払える保険料(税)にしていくために、昨年に続き以下の要請をした。
ア)これまで以上に一般会計からの繰り入れをおこない、減免制度を拡充し、払える保険料(税)にする。
イ)18歳未満の子どもは均等割の対象から外す。
ウ)前年所得が生活保護基準の1.4倍以下の減免制度を新設する。
エ)所得激減の要件を「前年所得1000万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」にする。
「低所得者向けの減免」は、19市町村(35%)が実施している。また、「収入減の減免要件」は引き続き未実施の阿久比町を除く53市町村(98%)で実施しているが、要件の緩和が必要である。
引き続き国に対し、国庫負担を医療費の45%に戻し、払える保険料(税)にしていくための取り組みが必要である。
また、各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。
なお、2014年度から「7割・5割・2割」の法定減免のうち、「5割・2割」が改善される。国の制度改善と合わせ、自治体の努力で保険料(税)の引き下げ等の改善を求めたい。
③保険料(税)滞納者への対応について
ア.資格証明書・短期保険証など
愛知県内の国民健康保険料(税)滞納世帯は、2006年をピークに減少を続けており、2013年6月1日現在では、前年から21,947世帯減(前年比11.8%減)の163,570世帯となった。
短期保険証は、昨年は減少したものの今年は増加に転じ、58,046件(前年比3,621件、6.7%増)となった。滞納世帯数に対して、大口町95.4%、豊橋市72.8%、大府市72.4%、清須市71.2%が高い割合で発行している。
資格証明書の発行は、2013年8月1日現在、愛知県合計で5,087件と滞納世帯に対する比率は3.1%(全国7.0%)となっている。資格証明書を1枚も発行していないのは25市町村(46%)になった。
資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは17市町村(31%)、「独自に配慮」は20市町村(37%)である。
資格証明書の発行は、名古屋市が前年8月1日の4,129件から4,200件へと増加している。名古屋市を除く愛知県合計は減少しており、名古屋市の突出した発行数は異常である。
2007年から資格証明書の大量発行を始めた名古屋市。その発行数は愛知県全体の発行数の7割を超える。滞納世帯の10.6%にもなる発行件数は、一斉更新で一時的に増加した岡崎市(10.6%)、阿久比町(9.1%)を除くとしても、比較的高い大口町(4.6%)、南知多町(5.5%)と比べても極めて高い。この背景には、主要政令市の中でも高額な保険料負担があり、名古屋市の資格証明書は、まさに「懲罰的対応」といえる。
滞納世帯であっても子どもの無保険をなくすということで2009年4月から、6カ月の短期保険証を発行している。愛知県で資格証明書世帯に18歳年度末までの子どもがいるのは、2013年8月1日現在で494世帯あり、うち短期保険証が渡っていない「未解消」は昨年に引き続き名古屋市の23世帯(うち、中学生以下26人)のみである。保険証が渡らないと、子ども医療費助成制度が利用できず、必要な医療が受けられなくなる事態も生じる。名古屋市は一刻も早く解消することが求められている。
資格証明書世帯にあっても、病気などで一時的に支払いが困難だと申し出れば短期保険証を交付することが2009年1月20日付事務連絡で示されている。
医療を受ける権利を奪いかねない1カ月の短期保険証など、6カ月未満の短期保険証は発行するべきではない。
留め置き人数は7,374人、未交付4,100人、合計11,474人が無保険状態にある。
各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。
イ.滞納者の差押え
滞納者の差押え件数は、2010年度9,412件・8億円、2011年度10,871件・6億円、2012年度12,727件・7億円となり、1,856件増加している。
差押え物件は不動産1,188、預貯金8,714件で68.5%を占め、生命保険752件は前年よりも減ってはいるが学資保険が24件と増加している。子どもへの影響が懸念される。
なかでも名古屋市の差押えは2008年164件、2009年305件、2010年1,254件、2011年2,436件、2012年2958件へと急増している。
名古屋市の資格証明書発行世帯の所得区分状況からみると、総数4,569件のうち、ワーキングプアといわれる200万円以下が56.2%を占め、300万円以下では73.2%を占める。資格証明書の発行開始時は、「悪質滞納者」に対し、発行するということであった。しかし、現在では低所得者層300万円以下に73.2%が発行されている。すでに、「滞納=悪質」と基準が変質している。滞納世帯の多くは、払いたくても払えないという世帯が圧倒的であると考えられるが、収納率アップのための差押えを含めた徴収強化というのは、国保法第1条「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とする」との定めからみても許されない。憲法25条にそった対応が強く求められる。
なお、国税徴収法第48条は、「超過差押え及び無益な差押え禁止」を明記し、また国税徴収法153条および地方税15条7項では、「滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させる恐れのあるときは、差押えをおこなっていけない」としている。
ウ.一部負担金減免
一部負担金の減免制度を設けているのは50市町村(93%)となった。未整備は新城市、豊根村の2市村であり設楽町、東栄町は検討中である。
生活保護基準を基にした減免は、46市町村(85%)となった。
2012年度の減免実績は、13市町(24%)で398件、金額29,171,979円である。
引き続き、住民にわかりやすいリーフの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度の拡充と申請の促進運動が必要である。
8.障害者施策の充実
2013年4月に「障害者総合支援法」は、「障害者自立支援法」の名称を変え、障害福祉サービス等の対象に130疾患の難病患者を加えただけで、応益負担の仕組み、介護保険優先をそのままにスタートした。
①訪問系各サービスの支給状況について
愛知県内の主要市で「居宅介護」の支給状況を2012年度と比較すると、名古屋市で106%、岡崎市110%と増加しているが、一宮市だけは支給者数が56%に大幅減となっている。なお一宮市の支給時間は121%となっている。
重度訪問介護・行動援護・同行援護の支給者数状況をみると重度訪問介護:9市11町村・行動援護:6市7町村・同行援護:1市10町村で支給者が「0」となっている。また、重度訪問介護の支給者が「1人」が12市町村ある。2014年度から重度訪問介護の対象者が知的・精神障害に対象拡大されるが、重度訪問介護の報酬の低さもあり対応できる事業所があるのか疑問だ。また、行動援護・同行援護の支給者数も少なく、そもそも利用できる体制・基盤があるのか疑問だ。
②地域生活支援事業の移動支援
昨年と大きな変化はない。支給時間では、月に1~2回余暇を楽しむ時間があるかどうかだ。豊かな時間を過ごす時間とはなっていない。
③計画相談支援の利用実績
国は、サービス等利用計画について、「障害のある人の自立した生活を支え、障害のある人の抱える課題の解決や適切なサービス利用に向けて、ケアマネジメントによりきめ細かく支援するサービス」として、2015年4月以降は市町村の支給決定に際し、全ての障害福祉サービス等の支給決定に先立って作成することとしている。
愛知県は、第3期愛知県障害福祉計画で、サービス見込み量を2012年度4,564人/月、2013年度6,062人/月としたが、2013年8月時点で3,119人と目標を大きく下回り、国の意向どおりにはすすんではいない。
④障害高齢者への介護保険優先は見直しを
65歳以上の障害者や16疾病のある40歳以上の障害者が、それまでの生活を維持・継続できるよう介護保険サービスを一律に優先させることなく、本人意向にもとづいた障害福祉サービスが利用できるようにすることが必要である。
障害福祉サービスを介護保険サービスに同名のサービスがあるとし、介護保険サービスを優先させてきているが、サービス内容は異なる。
同じ入浴介助を利用しても障害福祉サービスでは負担が無かったものが介護保険では一気に1割負担となり、負担額の大きさから従来の生活を維持できない。
9.健診事業
①特定健診・がん検診
2008年度から基本健診は、「特定健診」と制度変更された。健診の実施に責任を持つのが自治体から保険者へと変更され、病気の早期発見に主眼がおかれなくなった。
今回も、特定健診の実施状況をつかみ、住民の健康を重視し、改善を要請した。
特定健診を自己負担無料で受診できるのは個別方式で36市町村(67%)、集団方式で27市町村(50%)であり、個別方式・集団方式のどちらかで無料受診できるのは、40市町村(74%)である。個別方式で無料受診できる割合が年々増加しており、長年の働きかけの成果だと言える。
各種がん検診では、自己負担無料で受診できるのは、肺がん検診を除くとほとんど実施されていないのが現状だ。毎年受診の可否を一昨年のキャラバンから調査しているが、個別方式・集団方式とも胃がん検診・大腸がん検診・肺がん検診・前立腺がん検診が市町村数で過半数を超えている。子宮がん検診(頚部)・乳がん検診(マンモグラフィー)は国の示すガイドラインで「2年に一度」となっており、これに従う市町村が多いことが原因と考えられる。
歯周疾患検診を自己負担無料で受診できるのは個別方式で41市町村(76%)、集団方式で15市町村(28%)と、集団方式で昨年の17市町村(31%)から減少した。毎年受診可能としているのは、個別方式が13市町村(24%)、集団方式が15市町村(28%)となっている。
特定健診・各種がん検診・歯周疾患検診を「毎年」「無料」で受診できるようにすることで、医療費削減につながる。このことから、全市町村で毎年自己負担無料での健診・検診の実施が必要とされている。
②40歳未満の住民への一般健康診査
40歳未満を対象とした特定健診に準じた住民健診を行っているのは49市町村(91%)だった。特定健診と同様の内容での実施は23市町村(実施市町村の47%)ある。特定健診と異なるが住民健診を実施していると回答している自治体の中には、一宮市や豊田市のように、女性対象の健診のみにもかかわらず「実施」としているところもある。全市町村で少なくとも特定健診と同様の内容での実施を求めたい。当然のことながら、特定健診よりも項目を増やして実施し、病気の早期発見に主眼を置く健診とすることが望ましい。
10.予防接種
2014年秋から、みずぼうそう(水痘)及び高齢者用肺炎球菌ワクチンを定期予防接種とすることが決まった。名古屋市はみずぼうそうに関して、4月から無料とすることを決定しており、他の市町村にも秋を待たずに無料化することを求めたい。
キャラバンで要望している残りの3ワクチン(おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、ロタウィルス、B型肝炎ウィルス)はすべて定期予防接種となる方向だが、「ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐ」の考えのもと、希望するすべての人が接種できるよう、全市町村で任意予防接種に助成制度を設けることが求められる。
①水痘、流行性耳下腺炎、B型肝炎、ロタに助成制度を
みずぼうそう、おたふくかぜ、ロタウィルスへの助成は、東栄町が新たに実施し、それぞれ5市町村(9%)での実施となった。
B型肝炎ウィルスワクチンの助成を実施している市町村は、今年もなかった。
②高齢者用肺炎球菌
昨年のキャラバン以降、14市町村が新たに助成を開始し、全市町村での実施となったのは画期的な成果である。
高齢者の死亡原因の約4割が肺炎によるものと言われており、ワクチンを接種することで死亡率を下げることができ、また、肺炎の重症化を防ぎ、医療費の削減にもつながる。
しかし、対象年齢を75歳以上や70歳以上に限定していたり、助成額は3千円から5千円と決して十分とは言えない。高齢期を安心して過ごすためにも、対象年齢の拡大と助成額の増額が求められる。
9.今後の課題
社会保障制度改革国民会議報告とそれに基づく「プログラム」法による、これからの社会保障費抑制のための方法は、医療・介護・福祉・子育てを「地域づくり」として描き、それぞれ国の責任を補完的なものに止め、国民と地方自治体に負担と責任を押し付けるものとなっている。その端的な例が今国会に法案が提出される介護保険の改悪である。
自治体の高齢者保健福祉事業が担っていた介護事業を、それでは介護問題に対応できない、誰もが自由に「介護」が利用できるためにと、2000年に介護保険制度を発足させた。
その介護保険がさまざまな行き詰まりを抱えているが、その打開の一つとして地域包括ケアシステムの構築と、介護予防について地域包括推進事業(仮称)に委ねることによって、介護予防や要支援者への対応を、逆に保険から自治体へ投げ返そうとしている。
介護保険改悪案は2014年度の通常国会に提出され2015年度から順次実施に移す計画である。また国保の都道府県運営化にむけた法案は2015年に提出され2017年度に実施に移される計画である。
こうしたなかで私たちは、地方自治体に「悪政からの防波堤」としての役割を求めるものであるが、国の悪政に地方自治体として反対の意思を示すと同時に、地方自治体としてできる施策を、勇気をもって実施してほしいという2つの側面がある。
私たちの運動は、県の福祉医療制度の見直し(一部負担金・所得制限の導入)や、名古屋市の65歳からの敬老パス見直しを、それぞれストップさせる貴重な成果を勝ち取った。
自治体キャラバンの取り組みはますます重要となっていることを踏まえ、今後の課題を押さえておきたい。
1.自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~制度改悪に地域住民の目線で~
(1)生活保護問題
生活保護基準の引き下げに抗議する不服審査請求は、全国で1万件、愛知は302件が提出された。激しい生活保護バッシングの中での勇気ある行動である。しかし生活保護受給の権利を制約する、扶養義務を盛り込んだ「生活保護法の一部を改正する法律」や「生活困窮者自立支援法」が強行成立された。
国会前の連日座り込みの行動や1,000人を超える研究者の共同声明運動、市民団体や弁護士などの反対運動の広がりの中で、改悪に歯止めをかける「付帯決議」が付けられている。
愛知県でも生活保護受給者は増加しているが、相談件数47,144件に対し申請件数15,058件、保護開始14,452件と、保護開始は3割強に止まっている。受給を必要とする人が、もれなく受給できるようにすることが大切である。
生活保護基準の引き下げは、社会保障制度の基盤を切り崩すもので、最低賃金や年金、就学援助などに波及するものであり、すべての国民の問題である。
連動する諸制度への影響について、キャラバンでの懇談の中で回答を求めたが、愛知県全体を掌握する部署もなく、ほとんどの自治体が手つかずの状態であった。緊急の課題である。
(2)安心安全の介護の実現
介護保険は、制度の根幹を変える改悪がねらわれている。利用料が所得(年収280万以上)によって2割負担、在宅サービス利用者15%に影響がおよぶ。要支援者の介護サービスの切り捨ては154万人に影響し、特養ホームは原則要介護3以上に制限される。
サービス実施を丸投げされる自治体は、中央社保協アンケートによれば、515自治体中162自治体(32%)が「対応不可能」と回答した。愛知では、「可能」は54自治体中4自治体(7%)のみである。可能と答えた自治体でも「事業所がそのまま受けてくれるなら」「国の十分な財政支援があれば」などの条件付きである。多くは「法改正がされれば、やらざるを得ない」としている。
現場の実態、利用者や家族、事業者の声や要望を自治体や国に届け、介護保険法改悪に反対し、制度の改善を求めたい。
すでに、制度があっても「利用できない」高齢者も多くある。また、高齢者と介護保険を食い物にする貧困ビジネスも広がっている。公的介護による、安心と安全の介護制度の確立は急務である。
(3)国保改善・福祉医療制度拡充を
国が進める「国保の広域化、都道府県運営化」の中で、国保のあり方が大きく変えられようとしている。
市町村国保の都道府県運営化で、一般的には「保険料の平準化」「保険料の引き上げ」「市町村の法定外繰り入れの廃止」「独自減免の縮小・廃止」「赤字国保は都道府県委譲前に赤字解消が求められる」などが起こり、被保険者は大きな負担増が懸念される。
国保の今日的問題の中心は国保への国庫負担減らしが「高い保険料」「払えない保険料」となっていることである。しかし市町村では「お荷物がなくなるから」のような、国保の都道府県運営化賛成意見があるが、市町村を含めて反対の姿勢をつくることが大切である。
さらに2015年には国保の都道府県への運営委譲と合わせて、在宅療養との公平の観点から入院時食事療養費など、外来・入院に関する給付の見直しを含めた、医療保険制度改悪法案の提出が準備されている。
これ以上の患者負担増に反対するとともに、福祉医療制度の拡充を要求していくことが必要となってくる。
また2015年2月は愛知県知事選挙もあり、県に対して外来も含めて子ども医療費無料制度の中学卒業までの拡充を求める運動が重要である。
(4)子育て支援、就学援助など
現在、子ども医療費助成制度は、愛知県は通院で「義務教育就学前」、入院は「中学校卒業」までとなっており、国としては制度がない。
県内では、通院について全市町村が県制度から拡大しており、「中学校卒業」まで「窓口無料」としているのは43市町村(80%)に上る。
県制度として入院につづき通院も「中学校卒業」までとすべきであり、そのためにも国制度として「義務教育就学前」までの医療費助成制度を創設することが待ったなしの課題である。
2015年4月からは「子ども・子育て支援新制度」が実施されるが、この制度は保育現場に深刻な影響を与える。
新制度に連動して浮かび上がる問題としては、名古屋市が存続させている「公私間格差是正制度」の変質や、公立保育園を18カ所廃止し80カ所まで減らす公立保育園の廃止民営化がある。名古屋市の公的保育の後退は、その影響が愛知県下に広がることから、一層の運動強化が求められる。
愛知県保育団体連絡協議会(愛保協)があることから保育の問題はこれまでキャラバンの課題としてこなかったが、「プログラム」法全体に対する運動として、愛保協と連携した運動を課題とすることが必要となる。
就学援助の2013年の受給は、前年から横ばい状態である。愛知県全体で64,012件7.9%、名古屋市25,291件15.3%、豊橋市5,998件18.2%と都市部で2ケタの受給があるものの、全国平均の半分程度に受給に止まっている。必要とするところに制度が届いているか、愛知の課題である。
(5)障害者施策の充実を
2014年1月21日、日本は障害者権利条約を批准した。
条約19条(b)項は「地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること」としており、アンケートから見える障害者サービスの現状は、条約違反の状態だ。
市町村は、少なくともこの認識の上に立ち、県・国に「異議申し立て」すべきである。
また、65歳になると介護保険が優先し障害者福祉が使えなくなる問題がある。これに対して一宮市在住の舟橋さんが訴訟を準備し支援する会が発足した。「生存権保障へのたたかいであり、憲法を形骸化する国への異議申し立て」のたたかいを支援する。
また本人の希望も踏まえて障害者福祉も優先できる国の通達もあり、これを踏まえた自治体での対応や、介護保険と障害者福祉の併給(横出し・上乗せ)の拡充も課題である。
2.地域での要求実現共同行動の重視
①事前学習会の充実
事前学習会の開催が広く定着してきている。これを情勢認識や共通の要求内容について共有し、独自要求の検討につなげるようにすることが課題である。
②地域要求の把握、陳情書への反映
「陳情書」は、重点項目を絞りつつも全体を網羅することから、陳情項目も多く、中にはすでに実施済み項目も含まれる。自治体ごとの到達をふまえ、提出する陳情項目の精査が引き続き求められている。
実行委員会は事前学習に間に合うように、自治体からのアンケートと回答を求めている。各回答・アンケートをもとに、懇談でのポイントを地域ごとに設定することができる。個別の自治体対応を具体的に検討するためにも、さらに自治体単位での開催も実現させたい。
③キャラバン訪問時の懇談の充実
重点陳情事項をできるだけ絞り込み集中的な受け応えを準備する。発言も事前の打ち合わせの中で、内容や発言者の分担など具体的に相談することが必要である。
また、懇談について、評価や改善点など意見交換し、次に生かすまとめの報告会なども課題としたい。
④地域社保協の確立を
提出した要求の実現にむけ、懇談以降の進捗をつかみ、首長や議会への要請を強めるなど、継続的な働きかけが欠かせない。地域を主体とした行動のセンターとして、「地域社保協」等を各自治体に1つを目標に、関係者の協力を得たい。
自治体キャラバンの要求を支持する議員を増やすことや、住民目線に立った自治体づくりを前進させることが大切である。