2014年 愛知自治体キャラバンのまとめ概要

2015年3月/愛知自治体キャラバン実行委員会

1.名 称

「介護・福祉・医療など社会保障の充実とくらしを守る愛知自治体キャラバン」

2.主 催

愛知自治体キャラバン実行委員会
≪事務局団体≫
愛知県社会保障推進協議会
愛知県労働組合総連合
日本自治体労働組合総連合愛知県本部
新日本婦人の会愛知県本部

3.日 程

2014年10月21日(火)~24日(金)
※愛知県11月12日(水)、名古屋市11月19日(水)に。弥富市は10月29日(水)に実施した。

4.要請相手とコース日程

愛知内54市町村を5コースで実施

コース 主な地域 責任団体 宣伝カー
第1 尾西・海部 年金者組合 名古屋ブロック
一宮・稲沢 一宮社保協
第2 尾北・尾東 自治労連 自治労連
第3 知多・尾東 愛労連・社保協 愛労連
第4 西三河 社保協・新婦人 保険医協会
新婦人
第5 東三河 自治労連 豊橋市職労
東三河労連
事務局4団体

5.参加状況

※(  )内は昨年参加者数

①各コースの参加者総数は延べ906(836)人であった。愛知県に27(37)人、名古屋市に43 (34)人が参加した。おもな団体の参加は、延べ参加者数で次の通りである。

団体名 延べ人員
年金者組合 174(167)
新婦人 182(114)
自治労連(名古屋市職労含む) 145(111)
保険医協会 86( 90)
愛労連(医労連・地域労連含む) 89( 83)
愛商連 71( 82)
民医連 58( 44)

②年金者組合や自治労連、医労連、尾中・東三河・知多など地域労連から参加している。また、新婦人、保険医協会、愛商連、民医連、愛障協、生健会、介護をよくする会はじめ地域で運動している市民団体からの参加が定着してきている。医労連は、看護師・介護労働者の確保に関わる独自要請を位置づけ参加した。
その他、地域社保協では一宮、日進から、介護をよくするの会、生健会、愛障協など市民団体から延べ60人が参加した。
東三河山間部は今回も事務局団体と東三河労連が協力し取り組んだ。

③自治体側からは731(747)人の出席があった。副首長3(2)人、部長19人、議会からは事務局含め40人(あま市では議長が参加)が出席した。愛知県は16(21)人、名古屋市は17(19)人。主には、福祉・保険・医療の課長・次長等の担当者が対応した。

④地方議員は日本共産党から、39(36)市町村で54(48)人が参加した。

6.事前学習会の取り組み

事前学習会は、要請事項だけでなく「社会保障と税の一体改革」の動きや国保の都道府県単位化、介護保険の「見直し」等と地域の具体的要求の検討も含め、全地域での開催を目標に16地域17会場で開催し298人の参加があった。
「社会保障と税の一体改革」をめぐる情勢・進捗状況とたたかい方について学習を行った。
また、陳情書への文書回答・アンケート回答を受け、当日の懇談にむけ、地域の到達点を踏まえ分析と対策、交流、懇談当日の重点項目や発言者の確認など意志統一を行った。
地域要求の前進、制度の改善にむけ継続的な対応が求められることから、「地域社保協」結成が急ぎ求められる。市町村行政区単位での学習会の開催、回答内容の分析と対策・検討が不可欠になっている。
また、社会保障をめぐる情勢や陳情内容の検討を深める上でも、講師団の養成が求められる。

開催地域 開催日 参加者数
東三河 豊橋・田原 10/16 25 (15)
西三河 豊田・みよし 10/ 3 16 (14)
西尾(介護) 9/18 19 (15)
西尾(キャラバン項目) 10/ 9 14
岡崎 10/ 1 16 (19)
安城 10/18 9 ( 9)
知立・碧南・高浜 ― (11)
知多 半田 10/10 14 (12)
大府 10/ 1 15 (10)
東海・知多 ― (11)
尾張東 瀬戸・尾張旭 10/18 16 (24)
長久手・日進・東郷 10/ 7 19 (18)
豊明 ― ( 7)
尾張中部 春日井・小牧 10/ 9 21 (19)
清須・北名古屋・豊山 10/ 9 19 (16)
尾張北 江南・大口・扶桑 10/17 11 (15)
岩倉 10/ 8 8 ( 5)
犬山 10/11 21 (17)
尾張西 一宮・稲沢 9/30 24 (38)
海部津島 津島・愛西・弥富・
あま・大治
9/29 31 (27)
合  計 16地域 298(280)

7.懇談の重点項目とアンケート・回答

①1時間という限られた懇談時間の中で、有効に懇談できるように今年も重点項目を決めた。今回は、「滞納整理機構」「生活保護」「安心できる介護保障、保険料や利用料の軽減、基盤整備、障害者控除の認定」「福祉医療の存続拡充」「子育て支援、就学援助や保育」「国保、保険料及び滞納問題」「65歳以上障害者の介護保険優先適用」「予防接種、高齢者肺炎球菌ワクチン」を重点に設定した。

②要請事項は、すでに多くの市町村が実施している施策は入れずに、実施状況をアンケートで集約した。

③国への意見書採択を求めたのは、「消費税増税の中止」「年金の切り下げ中止と最低保障年金の確立」「介護保険、国の負担増と経度者はずしの中止」「子どもの医療費拡充」「入院給食などの患者負担増等中止」「病棟転換型教授施設構想の撤回」「介護労働者の処遇改善」「生活保護基準引き下げの中止」等である。
また、愛知県へは「福祉医療制度の拡充」「国保への単独補助復活や医療提供体制の充実」の意見書提出を求めた。

④要請項目についてのアンケート・文書回答について、キャラバンの事前学習会で活用できるように準備した。アンケートはすべての市町村から届いた。文書回答は96%(昨年94%)の市町村から提出されたが、豊田市、みよし市が届かなかった。また、豊橋市は懇談後の提出となった。

⑤今回のキャラバンでは、下記の通り意見書が採択されている。他に、愛知県後期高齢者医療広域連合2月議会で県社保協と年金者組合の請願提出が後押しとなって、「後期高齢者の保険料軽減特例の継続を求める意見書」が採択されている。 (HP参照)
知立市
〈国〉介護福祉労働者の処遇改善に関して
〈県〉医療提供体制に関して
扶桑町
〈国〉介護保険制度の改善を求める
〈国〉新たな患者負担増の中止を求める
〈国〉介護・福祉労働者の処遇改善・人材確保を求める
〈県〉県民の医療を守り、医療提供体制の充実を求める
蟹江町
〈国〉子ども医療費無料の国の制度をつくることを求める
〈県〉県民の医療を守り、医療提供体制の充実を求める

8.要望項目への対応と到達点

2014年6月いわゆる「医療介護総合法」が成立し、入院ベッドの削減や介護保険からの軽度者締め出しなど具体化が進行する中での取り組みとなった。また、2015年通常国会には国保の都道府県単位化や入院給食負担増や混合診療の拡大など盛り込んだ医療保険制度改悪案の提出が予定された。
安倍政権が戦略市場創造プラン第1に「国民の『健康寿命』の延伸」として「健康長寿社会」をめざした。ここでは、国の社会保障における役割は「自助・自立のための環境整備」「自然増も含め聖域なく見直し、徹底的に効率化・適正化」していく流れであることを明確にした。こうした「国の社会保障改悪に対し防波堤の役割」を強く要請した。
35年の節目の自治体キャラバンは、子ども医療費窓口無料制度の拡大、高額療養費や出産育児一時金の受領委任払い、妊婦健診の助成回数拡大、福祉医療制度(給付金制度)の窓口無料化、国保一部負担金減免制度の拡充、介護保険料・利用料の減免制度の拡大、地域巡回バスなどの外出支援、配食サービスの拡大、Hib・小児用肺炎球菌・HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの全市町村での助成など実現してきた。
高齢者用肺炎球菌ワクチンの予防接種の公費助成を2013年に全市町村で実施させ、2014年10月からは国の制度としてスタートさせた。障害者控除認定書発行枚数が要望当初の11倍を超えるなど、市町村の医療・福祉施策の改善に大きな役割を果たした。
また、県の福祉医療制度の見直し(一部負担金・所得制限の導入)や、名古屋市の65歳からの敬老パス見直しを、それぞれストップさせる貴重な成果を勝ち取った。
運動の到達点を広く住民の確信にしながら、あらたな前進に向け取り組んだ。

1.自治体の基本的あり方

①憲法、地方自治法等をふまえて、住民一人ひとりが人間としての尊厳が保障され、健康で文化的で平和的な生活を送れるように自治体の施策を進めること、および「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の目的に沿って、住民の利益への奉仕を最優先することを要請した。

②徴税を強める愛知県地方税滞納整理機構(以下、機構)について、「徴税は自治体の業務である」ことをふまえて、機構に税の徴収事務を移管しないこと。参加していない市町村は今後とも参加しないことを求めた。
機構は、市町村民税の滞納整理を推進すると共に、市町村の税務職員の徴税技術の向上を図ることを目的に県内6カ所に設立され、2011年4月から税金等の徴収及び滞納整理をおこなっている。当初3年間の予定だったが、市町村の要望が強いとの理由で2017年3月まで延長された。
機構送りになった事案について、市町村窓口は「機構送りになった事案だから」と「相談」の対象から外されるなど、住民に不利益が生じている。機構まかせにせず、市町村が責任を持って相談に乗ることが重要であると要請した。
2014年度は豊明市が脱退し、機構には47市町村が参加している。参加していないのは名古屋市(独自の「債権回収室」設置)、岡崎市、春日井市、豊田市、豊明市、大口町、幸田町の7市町である。
2013年度の徴収額は、27億4千万円(徴収率52.4%)であり、2011年度の県平均徴収率(18.6%)の約3倍と高い数字となっている。
機構への引き継ぎ基準は、「滞納額50万円以上かつ徴収困難」などあるが、一方で「少額でも引き継ぐ」としたのが24市町村(参加市町村の50%)あり、「100件を機構に引き継ぐ」と回答している自治体もあり、機械的な対応がされていないかの調査が必要だ。機構送りになった事案には国保税も含まれており、その滞納者に保険証が届いているか定かでなく、医療を受ける権利が奪われていないか懸念される。

③税の滞納世帯の解決は、住民の実情をよくつかみ、相談にのるとともに地方税第15条(納税の緩和措置)①納税の猶予、②換価の猶予、③滞納処分の停止――の適用をはじめ、分納・減免などで対応するよう求めた。また、児童手当を差押えた鳥取県の処分を違法とした広島高裁判決を踏まえ、差押え禁止財産の差押えをしないことも求めた。整理マニュアルがあるのは12市町村のみであった。

2.生活保護の拡充を求めて

生活保護引き下げは社会保障改革推進法実施の最初の標的として、平均6.5%引き下げが2013年8月、2014年4月、2015年4月と3回に分けてすすめられている。加えて住宅扶助費や冬季加算の引き下げも実施される。
こうしたなかで、愛知では2013年8月の引き下げに対して9月274件、2014年4月の引き下げに対して5月に117件の、不服審査請求がされた。
2013年8月引き下げの不服審査請求が却下されたことから、2014年7月13日に16人が、名古屋市、豊橋市、刈谷市、高浜市を相手取り生活保護基準の引き下げ取り消しを求め、また国の責任を問う国家賠償請求も合わせて提訴している。

①生活保護が必要な人にただちに支給を
生活保護は受給要件が厳しいことから厚生労働省の2010年発表でも、捕捉率(生活保護基準以下の所得の世帯で、生活保護を受給している世帯の割合)は、わずか15.3%に留まっている。
愛知県の相談件数・申請件数・保護開始件数は、リーマンショック以降2010年度から年々減少しているが、なお保護開始件数は1万1千件を超え、生活保護の受給世帯数は約6万世帯で受給人数は約7万9千人と、高止まりとなっている。
生保申請者が増える中で福祉事務所の窓口では、「働けるのだから働け」等と追い返す「働けるからムリ」型、口頭でも有効な申請を「書類を一式全てそろえなければ申請は受け付けない」という「申請煩雑化」型など、申請させない「水際作戦」の実態が多数報告されている。愛知県では、2013年度の相談件数は38,044件あるが、保護開始件数は11,573件と3割に過ぎない。
2013年4月に生活保護法改悪が行われたが、運動の成果によって、2014年8月には口頭でも申請を受け付けることや、扶養義務等は従来通りの取り扱いとする通達も出されている。
自治体キャラバンではこれを踏まえて、申請書を渡さない、親族の扶養について問いただすなど、相談者・申請者を追い返す違法な「水際作戦」を行わないこと、生活保護が必要な人には早急に支給することを求めた。
懇談ではほとんどの自治体が、「水際作戦」のようなことがないよう努めているとの回答であった。

②生活保護費の引き下げに対し、自治体の責任で受給者の生存権を守る措置を
今回の基準引き下げは3年間で平均6.5%・最大10%にも達し、子どもが多い世帯ほど削減額が大きくなり、子どもの貧困にも拍車をかける。
生活保護基準の引き下げは、1950年に現行制度が開始されて以来、2003年(0.9%減)と2004年(0.2%減)のみで、しかも今回削られる生活扶助費は、生活を切り詰める貧困世帯をさらに追い詰める戦後最大の引き下げである。
キャラバンでは引き下げ分に対応した自治体の措置を求めたが、「生活保護法に基づき生存権を守る措置は国の責任で行うべき」「受給者が困らないよう親切・丁寧に相談にのる」「全国市長会を通して、地方共通の意見として集約し、県および国に要望していくことが望ましい」「被保護者の生活実態を把握した上で必要に応じ近隣福祉事務所、県とともに検討」という範囲の回答にとどまった。

③生活保護費引き下げに連動する諸施策に独自の対策を
厚労省は、生活保護基準は最低賃金基準や就学援助・保育料減免・国民健康保険料減免など31施策に連動するとし、北海道帯広市の調べでは51施策で市民の4分の3に影響するとしている。
キャラバンでは、生活保護費と連動する諸施策の基準引き下げが起こらないよう要請、多くの自治体が「できる限り影響を受けないよう配慮」するとしているが、中には「制度ごとに判断していくもの」など、具体的に手が打たれないままのところも多い。
またアンケートで、引き下げに伴って連動する制度の有無について尋ねたが、26自治体が無回答であった。生活保護の担当課だけではその影響について全体を把握することは難しく、自治体の責任として影響を調査し具体的に手当てすべきである。

④弱者の生存権侵害につながりかねない警察官OB配置は違法
厚生労働省は2012年3月、「警察官OB等を福祉事務所内に配置すること」を積極的に検討するよう指示。アンケートでは、13自治体・1福祉事務所に23人が配置されており、昨年から5人増となっている。
社会福祉行政と警察行政とはもともとその目的、性格を全く異にしており、これを単純に一体化しては社会福祉の目的を達することができない。市民と直接やりとりする現業に元警察官が社会福祉主事の資格もなく従事することは、市民の生存権行使を阻害する事態をもたらす危険性がある。社会福祉主事の資格を有しない警察官OBを生活保護の現業業務に従事させることは生活保護法第21条、社会福祉法第15条に違反し、違法であることが明らかである。

⑤生活困窮者自立支援事業は自治体直営で
生活困窮者自立支援事業については、町村を除く38市で2015年度からの準備検討が進められているが、直営を明確にしているのが10市、直営と委託両方が1市、委託が4市となっている。委託を決めている4市の内、名古屋市以外は社会福祉協議会が委託先となっている。自治体が庁内連携を強め、住民の福祉要求を把握し満たした制度設計を行うためにも自立支援事業等は直営で行うのが望ましい。
また、この事業が水際にも近づけないための「沖合作戦」とならないように就業支援に偏らず生存権保障を求めたことについては、「適切に対応」「生活相談窓口に繋ぐ」としており、不当な扱いが発生しないように注視していく必要がある。

3.安心できる介護保障について

(1)介護保険について

①介護保険料・利用料の減免制度
介護保険の保険料減免は29市町村(54%)で、減免実績は3,650件、3487万円である。利用料減免は21市町村(39%)で、減免実績は対象範囲が狭く7,112件、7,192万円である。訪問介護、通所介護、通所リハを利用している利用者・家族からは、「1割負担の軽減」の切実な要望が寄せられている。

(2)基盤整備、「新しい総合事業」など

①特養などの基盤整備
2015年の介護保険制度改定で、特別養護老人ホ-ムへ入所基準が原則要介護3以上と定められたことは大きな問題である。依然として特別養護老人ホ-ムの待機者は愛知県全体で20,857人(2014年9月1日調査)であり、今後さらに増加が見込まれる。
市町村によっては施設整備を計画し、待機者数を減らしているところもあるが、、安易にサービス付き高齢者住宅なども含めた「待機者解消」に流れることは問題である。多くの高齢者は、「年金でも入れる」終の棲家である特別養護老人ホ-ムの増設を求めている。
愛知県は2017年までの第6期高齢者健康福祉計画について、社保協との懇談では「在宅での待機者で要介護3以上は7,285人あり、各市町村に通知しこれを上回るよう建設計画を作るようお願いしている」との説明であった。しかし出された案では、広域型(定員30人以上)2,276人、地域密着型(定員29人以下)841人の合計3,117人増の計画にとどまっている。これでは特養建設の放棄であり、特に県の姿勢が問われている。
また、施設の増設と同時に、人材の育成と定着が重要な課題となっている。

②地域包括ケアを含む「新しい総合事業」について
2014年7月末に「新しい総合事業」についての「ガイドライン案」が、県及び市町村に示された。要支援の訪問介護・通所介護については、今後は市町村の地域支援事業に移し、サービス内容、単価、利用者負担等については各市町村任せとされた。
しかし、参議院の附帯決議にあるように「専門職によるサービス提供が相応しい利用者に対して、必要なサービスが担保される」ことが必要である。また、専門職によるサービスの代替として「多様な主体による多様なサービス」を提供するとしているが、認知症の方への対応も含めて、現行サービスを後退させるべきではない。
国の「ガイドライン案」が示したサービス利用の流れでは、「まず市町村または地域包括支援センターの窓口に被保険者が相談に来てから、明らかに要介護1以上と判断される場合や非該当の場合等を除き、基本チェックリストを活用して振り分ける」とされた。窓口対応によっては、要介護認定を受けさせない「水際作戦」が危惧される。介護保険利用希望者については、すべて要介護認定申請の対象にすることが求められる。
キャラバンの懇談では、多くの市町村で「介護保険の利用を申し出た場合は、要介護認定申請を受け付ける」と回答があった。しかし愛知県との懇談では、「専門家でない窓口職員が明らかに要介護1以上と判断できるのか」との疑問に対し、県側は「チェックリストは国の示した基準で、窓口チェックの結果、要介護認定が必要なら要介護認定に回ることとなる。基本チェックリストは介護保険への入口条件なのでまずはこちらを受けていただく」と回答。市町村での回答を紹介し、改善を強く要望した。

(3)介護認定者の障害者控除の認定

介護保険の要介護認定を受けている人は「障害者等に準ずる」と考えることができ、「障害者控除対象者」とすることが妥当である。
県内での障害者控除認定書の発行数は、2012年の34,778件から7,544件増え、42,322件となった(前年比122%)。調査開始の2002年からは11倍を超える発行数となった。
これは、「要介護認定者に障害者控除認定書を」と毎年粘り強く要請してきた成果の表れである。しかし、要介護認定者数と比べて依然として少数であることには変わりなく、制度の周知が十分とは言いがたい状況である。
認定書を要支援2以上に発行するのは昨年同様9市町あり、要介護1以上に発行する30市町村と合わせ、39市町村(72%)が要介護1以上の方に認定書を発行している。
障害者控除はあくまで税法上の措置であり、要介護認定者を「市町村長が身体障害者等に準ずる」と認めれば対象とすることができる。ただでさえ重い介護保険料・利用料負担をしている要介護認定者及びその家族の税負担を軽減することは、何ら違法ではない。全市町村で、最低でも要介護1以上を障害者控除認定書の発行対象とすることが求められる。
要介護認定者に障害者控除認定書を自動的に送付しているのは、瀬戸市・江南市を新たに加え、16市町村に、申請書を自動的に送付しているのは、高浜市・東栄町を新たに加え、15市町村に。これらにより、31市町村(57%)が認定書・申請書を自動送付していることとなった。
キャラバンでは認定書の自動発行を要請してきたが、少なくとも申請漏れがないよう、申請書の自動発行は全市町村ですべきだ。

(4)高齢者福祉施策の充実について

①高齢者が地域でいきいきと生活するために
「ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策」「高齢者や障害者などの外出支援のための施策」「宅老所・街角サロン施策、運営費用助成施策」などの充実を求めた。
安否確認は、ほぼどの市町村も実施しており、今回のアンケートでは、多くの自治体で「緊急通報システムの設置」と新たに回答されている。
生活支援についてもほとんどの市町村で実施している。その内容は在宅介護支援サービス事業の利用やボランティアの活用などとしている。
バスは昨年より2市増え43市町村(80%)の実施で、タクシー代助成は昨年より3市増え49市町村(91%)で実施されている。両方未実施自治体はなくなった。
宅老所・街角サロンへの助成は3市町増え21市町(39%)で実施されている。老人クラブ、ふれあいサロン運営費や備品費助成、ボランティア団体への助成がある。

②配食サービスの毎日実施と利用者負担の引き下げ、会食方式の実施
配食サービスは全自治体で実施され、毎日実施は1市増で21市町村(39%)が実施。利用者負担額は高いところで600円以上のところもあり、引き下げが求められる。会食方式は3市町減で11市町村(20%)で実施されている。

③住宅改修費、福祉用具購入費、高額介護サービス費の受領委任払い制度の実施を
住宅改修の受領委任払い制度は、長久手市が新たに実施し、42市町村(78%)となった。実績は昨年より1,451件増加し、16,248件となった。
福祉用具の受領委任払い制度は、豊明市・長久手市が新たに実施し、35市町村(65%)となった。実績は、昨年より655件増加し、11,907件となった。
高額介護サービス費の受領委任払いは、昨年同様、豊田市のみの実施に留まっている。

4.福祉医療制度

(1)福祉医療制度を縮小せず、存続拡充を
愛知県は「福祉医療制度(子ども・障害者・母子父子家庭・高齢者の医療費助成)」に一部負担金と所得制限を導入する見直しを2012年から2013年にかけて検討したが、キャラバンを始めとする様々な運動による県民の反対世論の広まりの中で、2013年6月3日大村知事は「当面、一部負担金を導入することはしない」と2014年度からの見直しを断念した。
しかし、「所得制限の導入については、社会保障・税番号制度の導入も踏まえながら研究は引き続き深めていく」としており、引き続き注視が必要だ。
福祉医療制度については、「現行制度維持・存続」とする回答が多かったが、「障害者医療の精神障害者への補助対象を一般疾病へ拡大」することについては、すでに多くの市町村が拡大をしている中で、豊橋市(10月から手帳1・2級所持者を対象に、全診療科目、通院を無料へ)や蒲郡市(4月診療分から自己負担の助成を2分の1から全額助成へ拡大)、田原市(手帳1・2級所持者の補助対象を一般の病気にも拡大し、償還払いで実施)、東郷町(8月から手帳1・2級所持者を対象に一般の病気を対象とした助成を実施)といった、新たな拡大が見られる。引き続き、全市町村での実施を求めたい。

(2)子ども医療費助成制度
昨年のキャラバン以降、安城市が入院に限ってだが、対象を18歳年度末まで自己負担なしで拡大した。しかし一方で半田市、稲沢市、あま市がこれまでの「小学校卒業」から「中学校卒業」へと対象を拡大したものの、拡大分に一割の自己負担を導入した。さらに唯一、義務教育就学前に留まっていた津島市は、小学校3年生まで対象を拡大し、県制度に留まる市町村は完全になくなった。
これらにより、中学校卒業まで助成が51市町村(94%)、うち全額助成が42市町村(78%)に、18歳年度末まで助成が7市町村(13%)、うち入通院とも全額助成が東郷町・飛島村・設楽町、入院のみ全額助成が安城市・南知多町となっている。
全市町村が県制度から拡大したいま、全市町村が18歳年度末まで対象とするためにも、県制度を通院も中学校卒業までを対象とすることが必要である。また国の制度として義務教育就学前まで現行8割給付・2割自己負担を10割給付(窓口無料)に引き上げることが強く求められている。
自己負担を導入している自治体は、豊橋市、一宮市、半田市、犬山市、常滑市、江南市、稲沢市、北名古屋市、あま市、南知多町の10市町である。子ども医療費への自己負担は多くの市町村が掲げる「子育て支援」と逆行している。この10市町には自己負担をなくすことが求められている。
また現在、医療費助成を償還払いとしているのは、豊橋市、一宮市、半田市、安城市、犬山市、常滑市、江南市、稲沢市、愛西市、北名古屋市、あま市、南知多町、設楽町、豊根村の14市町村である。これらの市町村では、医療機関窓口で一旦支払ったあと、役場に申請し、後日支払った一部または全部が払い戻される。豊橋市では、中学生は入通院とも償還払いの手続きが必要になるが、「医療費償還払い請求に来たのは5~6割」とキャラバンの懇談で市当局が述べている。これは、償還払いに煩雑な申請手続きが必要であることが原因であり、医療機関窓口で支払った自己負担をそのまま負担する結果になっている。医療費助成は償還払いとせず、現物給付へと改善することが求められる。

5.子育て支援・就学援助等

①就学援助制度の改善
就学援助制度の改善を求めた。
県内の就学援助の認定制度は、生活保護基準の1.5倍以上としているのが5市町(9%)、1.3~1.4倍が15市町(22%)。岡崎市、半田市、碧南市、東海市、知多市で基準を引き上げた。半数以上が1.0~1.25倍となっているが、これでは支給を受ける子どもたちの家庭が生活保護家庭よりも生活が苦しい事態がでてくる。
申請窓口は、「市町村窓口」15、「学校」6、両方を利用できるのが35市町村(65%)になっている。民生委員の証明等が必要なのは西尾市・稲沢市・幸田町のみとなった。
支給項目の基準では2010年から「クラブ活動費、生徒会費、PTA会費」も対象となったが3項目追加は6市町村、2項目追加は6市町村である。引き続き、就学援助の活用を広げ、国と自治体の責任で、教育の機会均等と義務教育の無償化を求める。
就学援助の2014年度見込みは63,753件(受給割合7.85%)と、前年の64,012件(7.9%)より減少している。最も高いのは豊橋市で5,754件(17.6%)だが、10%を超えているのはわずか11市町のみである。全国的平均は15・64%であり、愛知県はその半分程度に受給に留まっている。
生活保護基準引き下げで、「今まで就学援助を受けていた世帯にも影響」(尾張旭市など)との回答。一方、豊明市のように「ひきつづき現行世帯が受けられるように、就学援助基準を改正する予定」との自治体もあり、一層の改善が求められる。

②児童虐待の現状と対応、早期発見、未然防止対策について
児童虐待の対応件数は、昨年より664件増加の10,568件で、昨年より深刻化している。対応職員数は59人増の313人となったが、ケースが多様化・複雑化しており、専門知識を持つ職員の配置や関係機関との連携が引き続き課題となっている。早期発見、未然防止対策としては、ほどんどの市町村で要保護児童対策地域協議会が設置され、毎月の会議が開催されている。
また、職員研修、ホームページ・広報での啓発、保健センターや民生委員による赤ちゃん訪問、保育所・幼稚園・小中学校・学童保育等との連携が実施されている。今後とも、虐待を増やさないよう、対応強化が求められる。

③保育実施義務について
待機児童が発生しないように供給量を充実させることが実施義務だと捉えている自治体が多い。質の確保も重要だと捉えていることは良いのだが、新制度になっても保育所だけは24条1項が残り、保育実施義務があることをどう具体的に実現するのかを示すことができた自治体はない。24条1項を形骸化させず保育所に直接契約を持ち込ませないためにも、難しくとも自治体に追求し続ける必要がある。
新制度による地域保育事業を、「格差はない」と考える自治体が3自治体あった。国は、地域保育事業で、認可保育所基準より低い基準での保育を認め、「保育の格差」があることは明らか。自治体は国の制度の不備を補完し住民福祉(保育)の防波堤となる必要があるのに、この3自治体は残念。他は、多くは面積基準を引き上げ、人員配置や資格要件を引き上げているところが複数あった。しかし、これだけで保育の格差が解消されるわけではない。本来は、保育を希望するすべての子どもが認可保育所で保育される権利がある。ここを求め続ける必要がある。

6.国保の改善

①国民健康保険制度の都道府県への運営移譲に反対を
政府は、国保保険者の都道府県への移行時期を「2018年度から」と位置付け、「改正」法を今の通常国会に提出することをめざす」としている。
2013年度には名古屋市・豊橋市・岡崎市の保険料(税)の所得割算定方式が旧ただし書き方式に変更され、全市町村の算定方式が統一された。
都道府県単位化について、26市町村(44%)が「広域化が必要」「広域化すべき」と回答し、主な理由は「財政基盤の安定」としている。また、24市町村(46%)が「国や県の動向を見守る」「時期尚早」と回答しており、反対は飛島村のみである。
国の検討内容に適切な批判や、一般会計からの繰り入れや独自減免制度の廃止などの保険料(税)への影響や問題点を引き続き明らかにし、反対世論を高める必要がある。

②国保料(税)と減免制度
2014年6月1日現在、愛知県内の国保加入世帯数は1,125,791世帯で、そのうち約15%に当たる166,140世帯が保険料(税)を滞納し、短期保険証が47,690件、資格証明書が5、577件発行されている。加入者の2割近くが払えない保険料(税)はそもそも高すぎる。
今回、①現役40歳代夫婦と未成年の子ども2人の4人世帯、②65歳以上74歳以下で年金生活高齢者夫婦のみ2人世帯、③65歳以上74歳以下で年金生活者・独居世帯―の3つで、世帯所得100万、200万、300万のモデルケースでの国保料(税)のアンケートをおこなった。世帯所得100万で国保料(税)が10万円を超える市町村が多数あるなど、とても払える保険料(税)ではないことがよくわかった。国に対し国庫負担を元の45%に戻すよう要望するとともに、保険料(税)の引き下げ、市町村独自の低所得者減免の拡充などが求められる。
「低所得者向けの減免」は、19市町村(35%)が実施している。また、「収入減の減免要件」は引き続き阿久比町を除く53市町村(98%)で実施しているが、要件の緩和が必要である。
また、各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。国の制度改善と合わせ、自治体の努力で保険料(税)の引き下げ等の改善を求めたい。

③保険料(税)滞納者への対応について
ア.資格証明書・短期保険証など
愛知県内の国民健康保険料(税)滞納世帯は、2006年をピークに減少を続けていたが、2014年6月1日現在では、前年から2,570世帯増(前年比11.8%減)の166,140世帯となった。
短期保険証は、47,690件と10,356減となった。滞納世帯数に対して、大口町(82.4%)、安城市(74.1%)、清須市(74.8%)が高い割合で発行している。
資格証明書は2014年8月1日現在、愛知県合計で5,577件と滞納世帯の3.3%に発行されている。資格証明書を1枚も発行していないのは28市町村(52%)になった。資格証明書の発行基準を「国の基準」としたのは17市町村(31%)、「独自に配慮」は20市町村(37%)である。
滞納世帯であっても子どもの無保険をなくすということで2009年4月から、6カ月の短期保険証を発行している。愛知県で資格証明書世帯に18歳年度末までの子どもがいるのは、2014年8月1日現在で558世帯あり、うち短期保険証が渡っていない「未解消」は昨年に引き続き名古屋市の38世帯(うち、中学生以下30人)のみである。保険証が渡らないと、子ども医療費助成制度が利用できず、必要な医療が受けられなくなる事態も生じる。名古屋市は一刻も早く解消することが求められている。
資格証明書世帯にあっても、病気などで一時的に支払いが困難だと申し出れば短期保険証を交付することが2009年1月20日付事務連絡で示されている。
医療を受ける権利を奪いかねない1カ月の短期保険証など、6カ月未満の短期保険証は発行するべきではない。
証の発行はしているが、本人に証が渡っていない「留め置き」は5,182人、そもそも証(短期証も資格証明書も)を発行していない(作成していない)「未交付」は3,096人、合計8,278人が無保険状態にある。
各市町村で「子ども・低所得者減免」や「収入減の減免」など情勢に対応した減免制度の実施・改善が求められる。
イ.滞納者の差押え
差押え件数・金額は、12,048件・3億6千万となっている(2013年度)。
差押え物件は不動産(1,146件)と預貯金(8,111件)で全体の76.8%を占め、生命保険(901件)、学資保険(32件)は前年よりも増加しており、子どもへの影響が懸念される。
なかでも名古屋市の差押えは2008年164件から2009年305件、2010年1,254件、2011年2,436件、2012年2,958件、2013年3,098件へと急増している。
滞納世帯の多くは、払いたくても払えないという世帯が圧倒的であると考えられるが、収納率アップのための差押えを含めた徴収強化というのは、国保法第1条「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とする」との定めからみても許されない。
なお、国税徴収法第48条は、「超過差押え及び無益な差押え禁止」を明記し、また国税徴収法153条および地方税15条7項では、「滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させる恐れのあるときは、差押えをおこなっていけない」としている。
憲法25条、国保法1条の精神にそった対応が強く求められる。
ウ.一部負担金減免
一部負担金の減免制度を設けているのは50市町村(93%)となった。未整備は新城市、豊根村のみであり設楽町、東栄町は検討中である。生活保護基準を基にした減免は、46市町村(85%)となった。
2013年度の減免実績は、14市町で278件、金額13,263,848円である。
引き続き、住民にわかりやすいリーフの発行などの周知徹底を市町村に求めるとともに、制度の拡充と申請の促進運動が必要である。

7.障害者施策の充実

2014年度は、法改正を受け福祉サービスがどのように広がったかを確かめた。また、障害者が65歳になると居宅介護が障害福祉サービスから介護保険優先とされている実状も確かめた。

①訪問系各サービスの支給状況
愛知県内の主要市で過去3年間の「居宅介護」の支給状況を比較すると、豊田市・一宮市で大幅に増加。平均時間では岡崎市・一宮市で大幅に減少している。岡崎市は支給基準を設けつつも「必要とする時間数を支給」、一宮市は「支給上限時間を設けていない」と回答している。
重度訪問介護・行動援護・同行援護の支給者数状況をみると重度訪問介護:9市12町村、行動援護:10市7町村、同行援護:1市9町村で支給者が「0」となっている。また、重度訪問介護の支給者が「1人」が11市町村ある。県は「重度訪問介護を増やす」としているが、2014年度から重度訪問介護の対象者が知的・精神障害に対象拡大されているが、利用条件の制限に加え重度訪問介護の報酬の低さもあり、利用できる障害者が少ないとともに、対応できる事業所がないのが実状だ。行動援護・同行援護の支給者数も少なく、そもそも利用できる体制・基盤があるのか疑問だ。

②地域生活支援事業の移動支援
ほとんどの市町村の支給時間では、月に1~2回余暇を楽しむ時間があるかどうかだ。豊かな時間を過ごす時間とはなっていない。また、大口町:平均28時間、扶桑町:平均5.2時間と市町村格差が端的にあらわれている。

③計画相談支援の利用実績
国は、サービス等利用計画について、2015年4月以降は市町村の支給決定に際し、全ての害福祉サービス等の支給決定に先立って作成することとしている。8市4町が「完全実施の見込なし」と回答、「あり」とする中にも「計画相談事業所数が少ない」「人員不足」と問題点が指摘され、県や国の意向どおりにはすすんではいないことが見える。

④障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係
介護保険適用時の障害者本人の利用(意向状況)聴き取り調査を行っていないのが20市町村あるのに加え「ケアマネを通じて聞く」が4市町村あり、本人の納得と合意に市町村として責任をもっているのか疑問だ。
どこに暮らそうとも、本人意向にもとづいた障害福祉サービスが利用できるようにすることが必要だ。

8.予防接種、健診・検診

①任意予防接種助成事業
これらのワクチンは定期予防接種とすることが本来の姿だが、「ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐ」の考えの下、安全性・有効性の高いワクチンは定期接種化を待たずとも、各市町村で任意予防接種に助成制度を設けることが求められる。
ア.おたふくかぜ―豊橋が新たに実施
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチンの任意予防接種への助成は豊橋市が新たに実施し、既に実施していた名古屋市・小牧市・飛島村・東栄町・豊根村と合わせ6市町村(11%)となった。無料実施は小牧市・東栄町・豊根村のみ。
重症化すると、無菌性髄膜炎や重度の難聴になるなど、重度の合併症を引き起こすこともある。世界の国々と同様に、2回の接種を定期接種化することが求められる。
イ.ロタウィルス―安城が新たに実施
ロタウィルスワクチンの任意予防接種への助成は安城市が新たに実施し、既に実施していた名古屋市・豊橋市・北名古屋市・東栄町・豊根村と合わせ6市町村(11%)となった。無料実施は東栄町・豊根村のみ。
ロタウィルスワクチンで重症化を約90%防ぐことができる。WHOはこのワクチンを、子どもが接種する最重要ワクチンのひとつに位置付けている。
ウ.B型肝炎―未だゼロ
今回の調査でも、B型肝炎ウィルスワクチンへの助成を実施する自治体はなかった。
B型肝炎ウィルスワクチンは、1992年にWHOが国の定期接種ワクチンとして、世界中の子どもたちに生まれたらすぐ接種するよう指示しており、実際にほとんどの国ではすでに定期接種となっている。
エ.高齢者用肺炎球菌―31市が継続
定期接種化されたことは歓迎するが、定期接種から漏れた人は任意予防接種となり、高額な費用負担により接種をためらうことも考えられる。定期予防接種対象から漏れる人を対象とした任意予防接種への助成制度は継続すべきだ。
高齢者用肺炎球菌ワクチンが10月から定期接種化されたことに伴い、任意予防接種への助成制度が廃止されることを危惧していたが、31市町村(57%)が独自に継続することが分かった。
定期接種の対象者に合わせて対象者を拡大(後期高齢者医療被保険者から65歳以上へ)、自己負担を軽減(4,000円を2,000円へ)するなど、制度が拡充された自治体もある。
定期接種化された時点で廃止した豊橋市・一宮市・豊田市・蒲郡市・田原市・みよし市の6市及び、「今年度末で廃止する予定」とアンケートで答えている17市町村には廃止の見直し=制度の継続が求められる。
オ.風疹ワクチン―実効ある制度に
愛知県が2013年に創設した「風しんワクチン接種緊急促進事業」に伴い、県内全市町村で風疹ワクチン予防接種への助成制度を開始し、今年度も全市町村で助成が実施されている。
しかし対象者が非常に限定されており、しかもこの対象者は「抗体検査」の対象である。県制度では抗体検査が無料となっているが、実際のワクチン接種は「市町村助成額の半額で、上限2,500円」となっており、風疹の流行を防ぐためには不充分だと指摘せざるを得ない。
また、この事業は昨年に引き続き単年度事業となっており、「風疹を根絶した」と言えるまで、来年度以降も費用補助を継続することが求められる。
市町村によっては、対象者に経産婦、妊婦の家族等を加えるなど拡大したり、全額助成しているところもある。風疹の流行を防ぐためには、「妊娠を希望する、出産経験がなくワクチン接種も風しんにかかったこともない女性」のみならず、経産婦、妊婦の家族等も含めて希望者全員が無料で接種できるようにすることが望ましい。

②健診・検診事業
特定健診・各種がん検診・歯周疾患検診を「毎年」「無料」で受診できるようにすることは、早期発見・早期治療に繋がる。
また、個別方式・集団方式ともに実施することが受診機会を増やし、受診率向上に寄与する。
これらのことから、全市町村で毎年自己負担無料での健診・検診を、個別方式・集団方式両方で実施することが必要だ。
ア.特定健診
自己負担無料で受診できるのは、個別方式で36市町村(67%)、集団方式で26市町村(48%)であり、個別方式・集団方式のどちらかで無料受診できるのは40市町村(74%)である。
個別方式で無料受診できる割合はここ数年は横ばいだが、3分の2の自治体が実施しており、全自治体での無料化が期待される。
イ.各種がん検診
自己負担無料で受診できるのは、肺がんの集団方式を除くとほとんど実施されていないのが現状だ。
毎年受診に関しては、2013年同様、胃がん・大腸がん・肺がん・前立腺がんが過半数を大きく超えているが、子宮がん(頸部)・乳がん(マンモグラフィー)は半数程度と、国の示すガイドラインによる「2年に一度の実施」の考えが反映していると考えられる。
ウ.歯周疾患検診
自己負担無料で受診できるのは、個別方式で41市町村(76%)、集団方式で15市町村(28%)と、2013年と同様だった。
個別方式・集団方式どちらかで毎年受診を可能としているのは、20市町村(37%)と、愛知県内市町村のうち、3分の1を超えている。住民の間にも、口腔の健康が全身の健康に繋がるという考え方が広がっており、全市町村で毎年受診できるようにすることが求められる。

9.今後の課題

アベノミクスの進行の中で、格差と貧困が広がり、国民生活支援の強化が求められている。労働者の実質賃金は減り続け、子どもたちの6人に1人が貧困状態にあり、高齢者は年金引下げや物価の高騰、制度改悪による負担増により生活が苦しめられている。
社会保障制度改革国民会議報告および社会保障制度改革プログラム法の具体化が国民生活の悪化に追い打ちをかける。まず、「医療介護総合法」による介護保険制度の改悪は、「要支援者の介護保険はずし」「特養からの軽度者追い出し」「介護報酬の削減」などが実行される。
続いて2015年通常国会への改悪法案提出で、国保改革、医療適正化、混合診療の拡大、国民の負担増をもくろんでいる。
2018年度には第7次の医療計画と介護保険事業計画の同時改定で「一体改革」の完結をめざしている。さらに、子育て支援の地域自治体での具体化、障害者福祉の「保険」化、公的年金の給付削減などが強行されようとしている。
格差と貧困の解消のために、本来、「税の徴収」と「所得の再配分」の両機能を果たすのが、国の役割であり、なかでも、社会保障による住民の命と暮らしへの支援が求められているが、安倍政権は大企業と富裕層への優遇税制の拡大と社会保障制度の切り捨てを推進し、一層格差を拡大している。
本来の国や自治体の役割発揮を求める自治体キャラバン行動の役割はますます重要となっていることを踏まえ、今後の課題を押さえたい。

1.自治体を住民のいのちと暮らし守る砦に~制度改悪に地域住民の目線で~

(1)生活保護問題
政府は2015年度予算案で、生活保護の住宅扶助と冬季加算をそれぞれ30億円減額することを決めた。住宅扶助は2017年度には約190億円減額となる。3年計画で引き下げてきた生活扶助の減額約260億円も合わせると、約320億円の減額になる。政府が貧困問題を解決するのではなく貧困を拡大・深化する政策を一貫してとっている。
愛知県でも生活保護世帯数・人数は、2013年は59,622世帯79,129人であったが、2014年は60,030世帯79,011人と、高止まりしている。2013年度の保護開始件数は11,573件と、相談件数38,044件の3割に過ぎない。「格差と貧困」の拡大の中で、受給を必要とする人が、もれなく受給できているのかどうか、注目する必要がある。
生活保護基準の引き下げは、社会保障制度の基盤を切り崩すもので、最低賃金や年金、就学援助などに波及するものであり、すべての国民の問題である。県民に共通の理解として広めたい。

(2)安心安全の介護の実現
介護保険制度が大きく変わる。「保険あって介護なし」という事態がより一層進むことが懸念される。高齢者の保険料・利用料の負担は極めて重い。介護保険への「公費投入」が必要になっている。さらに、「介護保険外サービス」「新しい総合事業」が拡大されようとしているが、実施主体となる自治体の多くが「見通しが立たない」という状況である。
特別養護老人ホーム待機者の解消のために、県としての増設は引き続き必要である。
介護保険の実施主体は行政単位である。地域の実態やニーズに合わせた第6期・第7期介護保険事業計画の具体化など、地域住民が主体となった計画づくりがますます求められている。

(3)国保改善・福祉医療制度拡充を
2015年2月12日、厚生労働大臣と全国知事会、市長会、町村会の代表の間で「国民健康保険の見直しについて(議論のとりまとめ)」の協議が行われた。これは、プログラム法に基づいてすすめられてきた「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議会」のとりまとめで、地方団体が協議を踏まえ厚生労働省が提案した内容を合意了承するために持たれた。これにより、国民健康保険法の改正案が閣議決定され、国会審議により法案が成立すると、2018年度から国民健康保険制度の都道府県単位化が行われる。
知事会は、国保を協会けんぽ並の保険料にするためには1兆円必要としていたが、2015年度は3400億円で妥協した。
1958年に国民皆保険制度として、現在の「市町村運営」である国民健康保険制度が誕生して60年。その運営主体が変わる大改革が行われることになる。
国民皆保険制度の中核であり、最後のセーフティーネットである国保制度を持続可能なものとしていくためには、国保制度の運営主体は市町村におき、市町村が運営しやすい環境を、財政面でも人材面、運営システム面でも作り上げていくことが求められている。
国保への愛知県独自の補助金が2014年に廃止されたが、少なくとも1997年の水準(約28億円)に戻すことが必要だ。

(4)子育て支援、就学援助など

①子どもの医療費助成(窓口無料)の拡大
子ども医療費助成制度の拡大は、ますます強い要求になっている。愛知県は「通院」が「義務教育就学前」、「入院」は「中学校卒業」までとなっている。国は窓口2割負担に留まっている。
愛知県内全市町村が県基準を拡大している。窓口無料は通院で、「小学校卒業」までが48市町村(88%)、「中学校卒業」までが42市町村(78%)、18歳年度末までが3町村(6%)である。
県が制度として「通院」を「中学校卒業」まで引き上げることが求められている。また、国にも制度として「義務教育就学前」までの医療費助成制度(窓口無料)の創設を強く求めたい。

②子ども・子育て支援新制度
2015年4月からは「子ども・子育て支援新制度」が実施され、保育分野にも直接契約が持ち込まれる。保育園には「児童福祉法第24条第1項」に定められた自治体の保育実施義務が残るが、行政の主導で公立幼稚園・保育所の「認定こども園」化がすすめば「公立保育園」というスタンダードがなくなり、私立保育園の認定こども園化を促進させ自治体の保育実施義務の空洞化が進む恐れがある。
自治体の保育実施責任を放棄させない観点から、今後の愛知県内の自治体が「新制度」にどう対応していくか注視と運動が必要である。
また、県が廃止した「第3子以降の保育料無料制度」の復活が求められる。

③就学援助受給者の拡大
就学援助の2014年度の見込み数は63,753件(受給割合7.85%)と、前年より減少している。全国では15.64%であり、全国平均の半分程度の受給に留まっている。「生活保護対象者の制度」などと間違った理解が広まっている。正しい広報、具体的な対象者の基準などを広める必要がある。

④学校給食費の無償化
子どもの貧困が拡大する中で、「学校給食の無償化」要求が強まっている。県内の要求運動とともに重点要求としての位置づけが求められている。

(5)障害者施策の充実を
障害のあることを「自己責任」とし「応益負担」を課した障害者自立支援法成立(2005年10月31日)から10年を迎える。しかし、障害者が地域で暮らし続けることの困難さは減少しているとは言い難い。加えて「移動支援」の支給者数・平均支給時間で見ると豊橋市283人・8.26時間、一宮市693人・19.2時間と市町村格差も解消されてはいない。市町村格差の解消は県・国が主導し行うべき課題だ。
「障害福祉サービスと介護保険サービスの適用」では、国が幾度も通知しているように、本人希望を市町村の障害福祉担当が聞き取り、少なくとも介護保険サービスと障害者福祉サービスの併給(横出し・上乗せ)をすべきである。なお、国は通知を繰り返すのではなく、総合支援法第7条を即刻廃止すればこうした問題は解決する。

2.地域での要求実現共同行動の重視

①事前学習会の充実
事前学習会の開催が広く定着してきている。これを情勢認識や共通の要求内容について共有し、独自要求の検討につなげるようにすることが課題である。

②地域要求の把握、請願・陳情書への反映
議会への「請願・陳情書」は、重点項目を絞りつつも全体を網羅することから、項目も多く、中にはすでに実施済みのものも含まれる。自治体ごとの到達をふまえ、提出する請願・陳情項目の精査が引き続き求められている。請願・陳情書の訂正や分割・再提出を行っているのは15自治体である。「実施済み項目の削除」が豊明市・刈谷市・東郷町で、その他、各委員会ごとに分割するなどある。
実行委員会は事前学習に間に合うように、自治体から文書回答・アンケート回答を求めている。この回答をもとに、懇談でのポイントを地域ごとに設定することができる。個別の自治体対応を具体的に検討するためにも、さらに自治体単位での開催も実現させたい。

③キャラバン訪問時の懇談の充実
重点陳情事項をできるだけ絞り込み集中的な受け応えを準備する。発言も事前の打ち合わせの中で、内容や発言者の分担など具体的な相談がされることによって改善が進んできている。
また、懇談について、評価や改善点など意見交換し、次に生かすまとめの報告会なども課題としたい。

④地域社保協の確立を
提出した要求の実現にむけ、懇談以降の進捗をつかみ、首長や議会への要請を強めるなど、継続的な働きかけが欠かせない。地域を主体とした行動のセンターとして、「地域社保協」等を各自治体・行政区に1つを目標に、関係者の協力を得たい。
自治体キャラバンの要求を支持する議員を増やすことや、住民目線に立った自治体づくりを前進させることが大切である。

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