2010年9月22日
名古屋市長 河村 たかし 殿
愛知自治体キャラバン実行委員会
代表者 徳田 秋
名古屋市熱田区沢下町9-7
労働会館東館3階301号
介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての要請書
医療、福祉、介護、年金など社会保障の改悪や派遣切り・リストラなどにより、国民のいのちと暮らしが脅かされています。その結果、生活不安・破綻、家族崩壊などが増加し、自殺、介護殺人、子どもの虐待など悲惨な状況が後を絶ちません。
「姥捨て山制度」といわれた後期高齢者医療制度も廃止が先送りされ、検討されている新制度の「中間報告」も「負担増か医療抑制か」の二者択一をせまり、後期高齢者医療制度の根幹をそのまま引き継いでいます。施設になかなか入所できず、介護サービスの利用制限など問題山積みの介護保険制度も、2012年4月からの介護保険制度改定にむけての検討もはじまり、「地域包括ケア」の名で在宅サービスの重視を掲げながら、料理・買い物・掃除など生活援助は保険給付外とするなど給付制限をすすめようとしています。
私たちは、名古屋市が医療や福祉の切り捨てや民間委託など自治体リストラをすすめることなく、市民のいのちと健康、くらしを守る砦としての役割をはたしていくために、以下の事項について改善をお願いします。
【1】自治体の基本的あり方について
①憲法第25条、地方自治法第1条をふまえて医療・介護・福祉など社会保障施策の充実をすすめてください。
②各種の臨時交付金などは時限措置でなく、恒久的な制度となるよう国に要望するとともに、国からの交付がなくなっても、市独自に施策を継続実施してください。
③税滞納世帯等への行政サービスの制限は行わないでください。
【2】以下の事項を実現し、名古屋市の福祉施策を充実してください。
1.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
①低所得者に対する介護保険料の減免制度を実施してください。とくに、住民税非課税、介護保険料普通徴収の高齢者、無年金者への配慮をつよめてください。
②低所得者に対する利用料の減免制度を実施してください。
③訪問介護サービスにおける「院内介助制限」など厚労省通知に反するサービス制限をやめ、事業所にその内容を徹底してください。
④地域包括支援センターは、地域における高齢者の生活をささえるセンターとして市が責任をもって設置数や体制を確保し、運営できるようにしてください。
⑤特別養護老人ホームや小規模多機能施設など施設・在宅サービスの基盤整備を早急におこなってください。基盤設備が円滑に進み、低所得者・医療依存度の高い利用者の入所が確保できるよう助成制度を設けてください。
⑥介護労働者を確保するために、適正な賃金・労働条件および研修について、財政的な支援をしてください。
(2)高齢者福祉施策の充実について
①配食サービスは、介護保険対応でなく、名古屋市独自の福祉施策として新たに設けてください。また、閉じこもりを予防するため会食(ふれあい)方式も含め実施してください。
②「消えた高齢者」が社会問題になっていますが、高齢者が地域でいきいきと生活するために、以下の施策を一般会計で実施してください。
ア.ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策を充実してください。
イ.高齢者や障がい者などの外出支援のため区内巡回バスなどの施策を充実してください。
ウ.宅老所、街角サロンなどの高齢者の集まりの場への助成金制度を拡充し、高齢者がねたきりにならないよう多面的な福祉施策を実施してください。
エ.高齢期になっても住み続けることができるバリアフリーの市営住宅を増設してください。
(3)障がい者控除の認定について
①介護保険のすべての要介護認定者を障がい者控除の対象としてください。
②すべての要介護認定者に「障害者控除対象者認定書」または「障害者控除対象者認定申請書」を個別に送付してください。
2.敬老パスについて
①敬老パスを元の無料制度にもどしてください。
3.高齢者医療の充実について
①70歳以上の医療費負担を無料にしてください。少なくとも、非課税世帯は医療費負担が無料になるように、福祉給付金制度の対象を拡大してください。
②後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対する保険証の取り上げ・資格証明書の発行をしないでください。
③後期高齢者医療制度に加入しない65~74歳の障がい者には、障害者医療費助成制度を適用してください。
4.子育て支援について
①18歳年度末まで医療費無料制度を現物給付(窓口無料)で実施してください。
②妊産婦健診は、初回の健診も含め、産前14回、産後1回を無料で受けられるように助成してください。
③就学援助制度の対象を生活保護基準額の少なくとも1.4倍以下の世帯までとしてください。申請の受付は、学校だけでなく区の窓口でも受け付けてください。
④義務教育は無償の立場から学校の給食費は無料にしてください。
5.国保の改善について
①国民健康保険制度の広域化に反対してください。
②保険料について
ア.一般会計からの繰り入れを元にもどし、保険料を1人平均1万円以上引き下げてください。また、減免制度を拡充してください。
イ.18歳未満の子どもについては、均等割の対象としないでください。当面、一般会計による減免を実施してください。
ウ.前年所得が生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対する減免制度を設けてください。
エ.所得激減による減免要件は、「前年所得が1,000万円以下で当年の見込所得が500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」にしてください。
③保険料滞納者への対応について
ア.資格証明書の発行をやめてください。とりわけ、18歳年度末までの子どものいる世帯、母子家庭や障がい者のいる世帯、病弱者のいる世帯には、絶対に発行しないでください。なお、義務教育修了前の子どもについては、窓口交付だけでなく、郵送も含め1枚も残すことなく保険証を届けてください。
イ.滞納者に対し給付の制限をしないでください。
ウ.保険料を支払う意思があって分納している世帯には正規の保険証を交付してください。
エ.保険料を払いきれない加入者の生活実態の把握に努め、加入者の生活実態を無視した保険料の徴収や差押えなど制裁行政をしないでください。また、無保険者の調査を実施してください。
④一部負担金の減免制度については、生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対しても実施してください。また、一部負担金の減免制度を行政や医療機関の窓口にわかりやすい案内ポスター、チラシを置くなど住民に制度を周知してください。
6.障がい者施策の充実について
①現行の障害者自立支援法の継続にあたっては、以下の事項を早急に具体化するよう国に申し入れてください。なお、国が実施するまでの間、市独自に利用料や実費負担を軽減してください。
ア.自立支援医療を利用する住民税非課税世帯の利用料を無料にしてください。
イ.利用者負担の際の収入認定は、障がい者(児)本人(個人単位)としてください。
ウ.移動支援等の地域生活支援事業に対する予算を増額してください。
エ.施設利用者に対する食費・水光熱費の自己負担を撤廃してください。
オ.実態に合わない障害者程度区分認定の見直しとともに、それを基準としたサービス利用の制限を撤廃してください。
②ホームヘルパー増員、生活施設・グループホーム・ケアホームの増設など選択できる基盤整備をすすめてください。
7.健診事業について
①がん検診、歯周疾患検診は、年1回無料で受けられるようにしてください。
②40歳未満の住民を対象にした健康診査を、年1回無料で受けられるようにしてください。
8.予防接種について
①小児用肺炎球菌ワクチンの費用について助成する制度をつくってください。また、ヒブワクチン、高齢者用肺炎球菌ワクチンへの助成を増やし、無料で受けられるようにしてください。
②上記任意予防接種を定期接種とするよう国に働きかけてください。
9.生活保護について
①憲法第25条および生活保護法に基づいて、他の制度を理由に生活保護申請を認めない、あるいは妨害することのないようにしてください。また、生活保護が必要な人には早急に支給してください。
②就労支援や生活指導を個別にていねいにおこなうために、専門職を含む正規職員を増やしてください。
【3】国および愛知県・広域連合に、以下の趣旨の意見書・要望書を提出してください。
1.国に対する意見書・要望書
①宙に浮いた年金問題を全面解決し、全額国庫負担による「最低保障年金制度」の創設、受給資格年限を短縮し安心してくらせる年金制度を確立してください。また、旧社会保険庁職員の分限免職を撤回し、業務に精通した職員を活用し、国民の期待にこたえる年金業務体制としてください。
②後期高齢者医療制度をすみやかに廃止し、元の老人保健制度にもどしてください。医療保険の患者負担を軽減してください。また、国民健康保険への国庫負担を増額してください。
③介護保険への国庫負担を増やして、負担の軽減と給付の改善をすすめてください。介護労働者の処遇を改善し、働き続けられるようにしてください。
④18歳年度末までの医療費無料制度を創設してください。現物給付による子どもの医療費助成に対し国民健康保険の国庫負担金を減額しないでください。妊産婦健診の補助金を拡充し、恒久措置としてください。
⑤消費税の引き上げは行わないでください。
⑥国の責任で医師・看護師不足を解消し、地域医療を充実してください。
⑦障がい者(児)が生きるために必要な福祉・医療制度の利用料負担、実費負担を撤廃してください。また、早急に高齢障がい者等に対する介護保険制度を優先する仕組みを改め、障がい者本人の必要性に応じて障がい者施策と介護保険を選択できるようにしてください。
⑧ヒブ・肺炎球菌等の任意の予防接種を定期予防接種としてください。
2.愛知県に対する意見書・要望書
①後期高齢者医療制度を選択しない65~74歳の障がい者にも、障害者医療費助成制度を適用してください。
②後期高齢者医療対象者の医療費負担が無料となるように、福祉給付金(後期高齢者福祉医療費給付)制度の対象を拡大してください。
③後期高齢者の健康診査事業に県として補助金を出してください。
④子どもの医療費助成制度の対象を18歳年度末まで拡大してください。
⑤国民健康保険への県の補助金を増額してください。
⑥精神障がいにある人の医療費助成は、一般疾病も対象にしてください。
⑦障がい福祉サービス・自立支援医療・補装具の利用料負担、施設での食費・水光熱費などの実費負担、市町村が行う地域生活支援事業の利用料負担を無くしてください。
⑧在宅重度障害者手当の2種で65歳以上の新たな対象者について元の制度に戻し、手当の対象にしてください。
3.愛知県後期高齢者医療広域連合に対する意見書・要望書
①愛知県に健康診査事業への補助を行うように要請してください。
②低所得者に対する保険料および一部負担金の独自の減免制度を設けてください。
③保険料滞納者への保険証取り上げ・資格証明書の発行は行わないでください。
④後期高齢者医療制度に関する懇談会の委員に公募枠を設けてください。
以上