2017年度(第37期)総会を開催
「戦争法・共謀罪・特定秘密法」の廃止、安倍政権の暴走阻止と平和を守り、社会保障再生めざす方針を確認
愛知社保協の2017年度・第37期総会が6月25日(日)、愛知県保険医協会伏見会議室で開催され、33の団体・地域から63人が参加しました(ほかに委任状19通)。
総会は、小松事務局長から憲法を生かした安全・安心の医療・介護・社会保障充実の取り組みなどを報告、各団体・地域の討論に続き、方針案・予算案が採択されました。記念講演は、神戸大学名誉教授の二宮厚美氏が「安倍政権の改憲と社会保障解体路線と如何に闘うか」と題して講演。80名が聞き入りました。
また、「安倍内閣の『戦争できる国づくり』反対 社会保障の連続改悪を止め改善を求める決議」を確認しました。
森谷議長開会あいさつ(要旨)
英国のEU離脱、アメリカのトランプ政権の誕生と一国保護主義・ポピュリズムの台頭、止むことのないテロ、あるいは北朝鮮の核実験・ミサイル発射など、世界は混乱の状況になっています。日本においても安倍政権のもとで、平和、人権、社会保障が非常に危険な状況になっています。先の国会では共謀罪法案が審議が尽くされないまま強行採決されました。安倍首相はさらに戦争できる国づくりをめざして憲法を変えると言っています。森友学園や加計学園問題に見られるような行政の私物化も露わです。
介護は在宅では安心できない状況を放置したまま施設から在宅への流れを強めていますが、介護保険法関連法案がまたも十分な審議がされないまま強行採決されました。自助・互助の名のもとに健康自己責任論を言って医療保険・介護保険の給付削減を進めていると言わざるを得ません。
いまや日本は格差と貧困が広がり、本当にみすぼらしい社会になろうとしてきています。大企業の内部留保は400兆円に達して、2%の富裕層が日本の資産の2割を保有する、そういうもとで子どもから高齢者にまで広範に貧困が拡大しています。こうした中で、まさに私たち社保協の活動が必要とされています。憲法13条の個人の尊重、25条の生存権保障、そして9条の平和主義を高く掲げて、国民の幸せにつながる政治・社会・環境、そして社会保障を築いていく必要があります。
本日の総会を契機として、さらにしっかりと活動を推進していきましょう。
記念講演 (要旨)
「安倍政権の改憲と社会保障解体路線と如何に闘うか」
二宮厚美 氏(神戸大学名誉教授)
<安倍改憲とのたたかいの重大さ>
二宮先生は、講演の冒頭で「昨日、神戸に安倍首相がやってきて、いよいよ『来年には改憲の手続きをやりたい』と言った。5月3日の安倍首相のメッセージに続いての国民に対しての挑戦と考えてよいだろうと思います。
今度の挑戦は生半可なものではありません。彼は9条の改憲を一発でしとめる、こういう覚悟でもって、お試し改憲をやりながらというような生ぬるいことはしない。この作戦にもし彼が失敗するようなことがあれば安倍政権はつぶれます。それどころではなく、安倍政権に代わって改憲をすすめる政権をつくれる見通しはありませんから、改憲勢力をここは大一番と覚悟を決めて、どうしてもやるという覚悟できています。我々も今までの改憲発言や構えとはもう質も量も違っているというふうにうけとめなければならない。関ヶ原の大合戦がこの1、2年の間に繰り広げられようとしている。私もこの合戦に加わりたいと思い、今日はその合戦のひとつのつばぜり合いの場と思ってきました。」と安倍改憲とのたたかいの重大さにふれながら、「安倍改憲を阻止する力は憲法9条・25条を最大限生かすことです。」として本論にすすみました。
<改憲を阻止する力は憲法9条・25条を生かすこと>
「9条・25条を憲法に持たない国・アメリカをみると軍事大国化と貧困大国化が相互に補完しあいながら進んでいます。オバマケア前には4000万~5000万人たちが無保険だったと言われ、家族の誰かが軍隊へ入れば軍の病院にかかることができるという経済的徴兵制が進みました。これは、いま日本でも青森や北海道などで高校卒業後に地元に就職先がないために自衛隊に入る若者が増えるなど、進行しています。
憲法9条の力で軍事費の膨張を抑え、25条の力で国家予算を積極的に福祉に回すことできる、そのことだけでなく25条を生かすことで軍事大国化と改憲を防止する力を日本の社会に定着させることができるということを強調したいと思います。
<貧困の克服は最大の課題>
多くの国民に貧困が広がっているもとで、もう生活に精一杯で、国や政治の動きに対しては「それどころではない」と目に入らなくなってしまっています。だからこそ貧困の克服は、憲法を守り社会を良くする最大の課題と言ってよいと思います。憲法9条と25条を統一的に生かし、これからのたたかいに活かしていただきたい。
<25条解釈改憲とのたたかいを>
安倍政権は解釈改憲をすでに9条で行ってきましたが、25条の分野でも社会保障制度をねじ曲げ・萎縮させてきました。その起点は「消費税増税と社会保障の一体改革」です。消費税は富裕層の投資による所得には課税せず、低所得であるほど厳しく課税される税制です。消費税を社会保障財源にするという目的税にしたことで、“生存権を侵害する消費税で生存権を保障する”というおかしな話になってしまっています。その矛盾から逃れるために、社会保障を憲法とは関係のないものにするという大転換が行われました。これからは“共助・連帯の社会保障”にする、“生命保険や火災保険のような保険でやればよい”、“地域の連帯でやればよい”、ということで国の責任をなしにしようというもの。」とし、「このたたかいを憲法を生かし改憲を許さずすすめていきましょう」と結ばれました。
(小見出しは編集部付記)
討論から(各団体・地域の報告)
<一宮社保協(高橋さん)>
一宮社保協は7月30日に総会を開催する。自治体キャラバンでは、従前は懇談の対応がひとつの課だったのを複数の課の対応に改めさせた。新婦人は会員アンケートで要望をまとめ市交渉を実施、年金裁判には43人の原告が参加などの成果があった。今後はキャラバンに市長、議長の出席も実現させたい。
キャラバンまとめ冊子には肺炎球菌ワクチンへの自治体補助の一覧表をつけてほしい。
<愛知県生活と健康を守る会連合会(浅田さん)>
生活保護費の過誤払いが問題になっている。誤って支給した多額な保護費の全額返還を求めるというもの。全国では2万件を超えると言われているが、そもそも保護費に支給明細書がないためわかりにくことに原因がある。明細をつけるよう要求していきたい。また、生活保護基準の水準以下で暮らす低所得者にも介護保険料・国民健康保険料が請求されているのは憲法違反だ。ただしていく運動をすすめたい。
<愛知県医労連(幸島さん)>
医労連の夜勤改善署名へのご協力に感謝申し上げたい。
日本医労連調査では、看護師の夜勤は全国の67%の施設で16時間二交替夜勤が実施されている。たとえばトラック・バスなど長距離運転のドライバーには長時間勤務が禁止されているが、看護師には規制がなく、医療の安全性が脅かされている。
今年も看護労働実態調査にとりくみ、記者会見などで社会にアピールしていく。
<愛知民医連(島崎さん)>
全日本民医連が実施した、経済的な事由で受診が遅れたことによる死亡事例調査では昨年1年間に全国で58人、愛知でも4事例があった。高すぎる国保料の滞納による保険証の取り上げや貧困、低所得者への国・自治体の支援制度の不備が背景にある。
来年度からの国保の都道府県単位化によって、保険料の一層の引き上げが危惧される。誰もが安心して受診できる医療の実現のために奮闘したい。
<福祉保育労東海地本(井上さん)>
保育や福祉の現場の職員の処遇が社会問題になっているもとで、労働条件改善に大きくとりくんできた。3・16全国統一行動にはストライキを含む行動を起こすことができた。私の職場も24時間・365日回っているきびしい職場だが、給料はあがらず、退職する人が出ても人が集まらず困っている。残った人で回すしかないが、きびしさが増すばかりだ。名古屋市の福祉施策は公立施設を民間へ移すというものばかり。福祉サービスの質の低下が危惧される。
<小松事務局長のまとめ>
肺炎球菌ワクチン自治体補助一覧は、載せられるよう実行委員会で検討させていただく。
生活保護の過誤払い問題は東京の裁判で、返還よりも最低生活の保障が優先するという画期的な判決が確定した。各自治体の対応に活かされるよう周知していきたい。また、非課税世帯から介護保険料が徴収されている問題では、中央社保協として厚労省へ改善を要望をしている。引き続き運動を強めたい。
民医連が「介護困難800事例」として、制度のひずみが介護保険を奪っている実態をまとめている。全日本民医連のホームページ・「介護ウェーブ」から見れるのでぜひご覧いただきたい。
医療・福祉労働者の労働条件改善が職員の離職防止・定着の力だ。運動を強めていこう。
安倍内閣の「戦争できる国づくり」反対
社会保障の連続改悪を止め改善を求める決議
本日、私たち愛知県社会保障推進協議会は、わが国の進路が大きな危機に立たされる中で、第37期総会を開催しました。
「戦争できる国づくり」をめざす安倍内閣は、戦前の治安維持法と言われる共謀罪法案をテロ対策と国民をだまし、中間報告なる手を使い乱暴な方法で強行成立させました。
2015年9月の安保法制=戦争法強行に次ぐ暴挙です。さらに2020年に憲法9条を改悪する国民投票の実施を想定し、自民党内ではそれに向けた改悪案づくりに着手しました。
また復活させた経済財政諮問会議主導の「経済・財政一体改革」にもとづき、軽介護度の介護保険外しや通院時毎の定額負担を含む、新たな医療・介護保険の保険給付の削減策を、2018年度の通常国会への法案提出に向けて検討を始めています。
安保法制=戦争法を成立させた安倍内閣は新たに「一億総活躍社会」を打ち出し、福祉の提供体制として「我が事丸ごと」地域共生社会を唱え具体化に乗り出しています。その内容は福祉を地域近隣の助け合いによって賄おうとする、国の責任を丸ごと地域社会に押し付けようとするもので、さまに戦時体制下の福祉提供体制かとさえ思わせます。
平和を脅かし暮らしを切り捨てる安倍内閣の暴走に対して、それに反対する広範な国民・市民の運動が巻き起こり、私たちもまたそれに参加してきました。こうした中で加計・森友学園問題も噴出し、安倍内閣は追い込まれています。2017年通常国会の幕切れは、暴挙を繰り返しつつ追われるように逃げ込んだ様を、全国民の前にさらしました。
本日私たちは総会を開き、さらに覆いかぶさろうとする社会保障の連続改悪を食い止めるためには、安倍内閣の暴走をストップさせることが緊急の課題であることを確認しました。そして「戦争政策と社会保障は両立しない」とのスローガンをあらためて掲げ、安倍内閣の「戦争できる国づくり」反対の闘いをさらに強めることが大切であることを確認しました。
私たちは、安倍内閣の「戦争できる国づくり」に反対し、戦争法と共謀罪の廃止を求めます。また経済財政諮問会議主導によるこれ以上の社会保障費抑制は直ちに中止し、国と大企業の責任と負担でこれまで改悪してきた社会保障を元に戻し、さらに改善することを求めます。
以上決議する、
2017年6月25日
愛知県社会保障推進協議会第37回総会