2007年10月3日
名古屋市長 松原武久様
愛知県社会保障推進協議会
議長 徳田 秋
名古屋市熱田区沢下町9-7
労働会館東館3階301号
介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての要請書
【趣旨】
小泉・安倍内閣がすすめた医療、福祉、介護、年金など相次ぐ社会保障の構造「改革」により格差と貧困が一層拡大し、国民のいのちと健康、暮らしが脅かされ、一家心中や介護「殺人」など悲惨な状況が増えています。
また、医療費や介護の負担増とあわせ、住民税の増税によって国保料や介護保険料が引きあげられ「もう払えない」と悲痛な声もあがっています。
さらに、08年4月からは、「後期高齢者医療制度」がはじまり、新たな保険料負担など高齢者の不安はつのるばかりです。
名古屋市は、「外部評価」によってこれまで福祉日本一といわれた福祉施策を、次々と廃止・削減し、さらに大幅な後退をすすめようとしています。
私たちは、名古屋市が医療や福祉の切り捨てや民間委託など自治体リストラをすすめることなく、市民のくらしを守る砦としての役割をはたしていくために以下の事項につい改善を強く要請します。
【要請事項】
【1】憲法第25条、地方自治法第1条をふまえて、医療・介護・福祉など社会保障施策の充実をすすめてください。
【2】以下の事項については、名古屋市が住民サービス向上の視点にたって臨めば、実施可能なサービスですので、速やかに実施してください。
①障害者控除の認定にあたって、次の3点を実施してください。
ア.介護保険のすべての要介護認定者を「障害者控除」の対象としてください。
イ.すべての要介護認定者に「障害者控除対象者認定書」または「障害者控除対象者認定申請書」を個別に送付してください
ウ.「障害者控除認定書」を交付した人については、対象者の障害事由の変更・消滅がなければ、翌年以降は、認定書がなくても障害者控除の対象となることを周知してください。
②老人保健の「現役並み所得者」の認定に当たっては、課税所得が145万円以上であっても、収入基準(夫婦世帯520万円、単身383万円)に満たない高齢者については、申請がなくても、自動的に「現役並み所得者」から除いてください。少なくとも、「基準収入額適用申請書」を個別送付してください。
③「高額医療・介護合算療養費」の払い戻し手続きは、毎回の申請に係る負担を軽減するために、申請を初回のみとし、2回目からは自動払いとしてください。
④国民健康保険の保険料(税)二割軽減および市の減免制度について、減免対象者が把握できる世帯には自動適用または申請書を個別送付するなどの方法で申請漏れのないようにしてください。
【3】以下の事項を実現し、福祉施策を充実してください。
1.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
①保険料、利用料減免、介護サービス改善の費用を一般会計から繰り入れてください。
②介護保険料について
ア.低所得者に対する保険料の減免制度を実施してください。とくに、住民税非課税、介護保険料普通徴収の高齢者、無年金者への配慮をつよめてください。
イ.減免に際して預貯金や不動産の所有を理由にして対象者を狭めないでください。
③利用料について
ア.低所得者に対する利用料の減免制度を実施してください。
イ.低所得者の高額介護サービス費の限度額を引き下げてください。
ウ.2005年10月からの居住費・食費の全額自己負担に対し、国の軽減措置の拡充と独自の減免制度を設けてください
④要支援、要介護1の人に対する車いすや介護ベッドなど福祉用具の貸与について、一律的に取り上げず簡素な手続きで利用できるようにしてください。
⑤地域包括支援センターについて
ア.介護予防のケアプランをたててもらえない利用者を出さないために、地域包括支援センターを日常生活圏(人口2万人から3万人に1カ所)に1カ所設置し、国基準の3人以上配置してください。
当面、「分室」は、介護予防のケアプラン作成など介護予防マネジメントだけでなく、「①本人が家族等の虐待又は無視を受けている場合、②痴呆その他の理由により意思能力が乏しく、かつ、本人を代理する家族等がない場合など」の困難事例の対応など、地域における高齢者の生活をささえるセンターとして市が責任をもった体制を確保し、運営できるようにしてください。
イ.地域包括支援センターの委託料を公的責任がはたせる水準に引き上げてください。
⑥介護老人福祉施設の建設、在宅サービスの基盤整備を早急におこない、介護サービスが必要な人すべてにゆきわたるようにしてください。
⑦介護労働者の研修の実施や処遇が適正におこなわれるよう必要な施策を講じてください。
(2)高齢者福祉施策の充実について
①地域支援事業の財源は、一般財源を基本とし、介護保険からの支出は極力しないでください。
②配食サービスは、利用者・事業者にも利用しやすい制度となるよう改善してください。
③独居、高齢者世帯のゴミ出しの援助など生活支援の施策を充実させてください。
④要支援、要介護の高齢者などの介護手当を新設し、所得や介護期間、介護度などの制限を設けず支給してください。
⑤住宅改修費への独自の助成制度を実施してください。
⑥高齢者が地域でいきいきと生活し、要介護状態にならないようにするため、地域ではじまっている宅老所やミニデイーサービスなど高齢者の集まりの場など多面的な介護予防のとりくみに対しての財政援助をしてください。また、外出支援のため区内巡回バスを充実してください。
2.敬老パスを元の無料制度にもどしてください。
3.国の税制改正に伴う負担増の軽減措置について
①公的年金等控除の縮小、老年者控除や定率減税の廃止など、国の税制改正に伴う国民健康保険料、介護保険料などの負担増を軽減する緊急対策を、国の施策に加えて独自に実施してください。
②市町村独自の減免制度が、同様の理由で受けられなくなった人に対しては、引き続き受けられるようにしてください。
4.高齢者医療について
①2008年4月から2割負担に引き上げられる70歳以上の高齢者の医療費負担を1割に据え置くために、医療費助成を実施してください。
②福祉給付金の対象者を元に戻すとともに、せめて、市民税非課税世帯のひとり暮らしの老人と介護保険1号被保険者の第1~第3段階の対象者を早急に対象者にしてください。
③後期高齢者医療の対象者に対し、国保並みの減免制度を継続して実施してください。また、保険料滞納者に対する保険証の取り上げをしないでください。
5.子育て支援について
①中学校卒業まで医療費無料制度を実施してください。
②妊産婦の無料健診制度は、産前は14回以上、産後は1回以上を無料にしてください。
③妊産婦医療費無料制度を新設してください。
④就学援助制度を拡充し、申請の受付は学校だけでなく市町村の窓口でも受け付けてください。
6.国保の改善について
①制度の運用にあたっては、国民健康保険法第1条「社会保障及び国民保健の向上を目的とする」の立場でおこない、「受益者負担」「相互扶助」「公平な負担」などの考え方を持ち込まないでください。
②保険料について
ア.保険料の引き上げをおこなわず、減免制度を拡充し、払える保険料にしてください。イ.保険料の徴収方式は、現行の「市県民税額方式」を堅持してください。
ウ.就学善の子供については、均等割の対象にしないでください。
エ.所得激減による減免要件は、「前年所得が1,000万円以下で、当初の見込み所得が500万円以下、かつ前年所得の9/10以下」にしてください。
③保険料滞納者への対応について
ア、資格証明書の発行をおこなわず、すべての被保険者に正規の保険証を無条件で交付してください。むやみに短期保険証の発行はおこなわず、払う意思があって分納中の加入者には、正規の保険証を交付してください。
イ、保険料を払いきれない加入者の生活実態の把握に努め、加入者の生活実態を無視した保険料の徴収や差押えなど制裁行政をしないでください。
ウ、保険料の滞納を理由に、高額療養費の「限度額適用認定証」の交付制限をおこなわないでください。
④国民年金保険料の滞納を理由にした短期保険証の発行はおこなわないでください。
①一部負担金の減免制度(国保法第44条)の案内チラシ、申請用紙などを役所窓口におくなど、制度を広く住民に周知してください。
⑥国保法第58条第2項に基づいて、傷病(休業)保障手当、出産手当制度を新設してください。
7.生活保護に携わる経験ある専門職員を増やすとともに、市民の申請権を保障し、請求漏れの無いようにしてください。
8.障害者施策の充実について
①障害福祉サービスの利用料を廃止してください。
②地域生活支援事業に係わる報酬単価の引き上げをしてください。
③移動支援の余暇利用時間上限の撤廃、必要とする時間を支給してください。
④精神障害者を障害者医療費助成制度の対象にしてください。
⑤障害児に係わる福祉サービスの利用料、給食費などの負担をなくしてください。
⑥学齢障害児の放課後・長期休暇中の支援体制をつくってください。
9.守山市民病院のお産対応を復活し、市民病院の(城北・守山)の機能縮小はおこなわないでください。
10.健診事業について
①特定健診、がん検診、歯周疾患検診は、無料にしてください。
②歯周疾患検診および75歳以上の健診については、少なくとも現行水準を後退させることなく、年1回受けられるようにしてください。
③子宮がん・乳がん検診を年1回にしてください。
④前立腺がん検診を年1回受けられるようにしてください。
【4】国および愛知県・後期高齢者医療広域連合に、以下の趣旨の意見書・要望書を提出してください。
1.国に対する意見書・要望書
①「宙に浮いた」年金問題を全面解決、全額国庫負担による「最低保障年金制度」の創設、受給資格年限を短縮して、安心してくらせる年金制度を確立してください。また、国民年金保険料滞納者に対し、短期保険証の発行など制裁措置をしないでください。
②後期高齢者医療制度の実施を凍結し、抜本的な見直しを行ってください。対象者が経済的状況にかかわらず、必要な医療が受けられるよう、国において十分な低所得者対策を講じてください。また、保健事業および葬祭費に十分な公費負担を導入してください。
③介護保険への国庫負担を増やして、保険料・利用料減免制度を国の制度として実施するなど負担の軽減と給付の改善をすすめてください。また、障害者自立支援法の利用者負担の軽減措置を拡充するとともに、施設・事業者に対する報酬単価を改善してください。
④子育て支援として就学前までの医療費無料制度の創設と妊産婦の健診制度の補助金を復活・拡充してください。また、現物給付による子どもの医療費助成に対し国民健康保険の国庫負担金を減額しないでください。
⑤消費税の引き上げは行わないでください。
2.愛知県に対する意見書・要望書
①2008年4月から2割負担に引き上げられる70歳以上の高齢者の医療費負担を1割に据え置くために、医療費助成を実施してください。少なくとも、73歳・74歳の老人医療費助成制度対象者については、必ず1割分の助成を行ってください。
②福祉給付金制度を70歳から実施し、支払方法を現物給付方式にしてください。
③後期高齢者医療対象者へ県としての減免制度を設けてください。
④子どもの医療費助成制度の対象を入院・通院とも中学校卒業まで拡大してください。
⑤削減した国民健康保険への県の補助金を元にもどし、増額してください。
⑥精神障害者を障害者医療費助成制度の対象にしてください。
⑦4月から行われている通所施設・在宅サービス利用者の負担軽減措置にかかわって、資産要件を撤廃するなどさらなる軽減策をとってください。
3.愛知県後期高齢者医療広域連合に対する意見書・要望書
①保険料は、高齢者の生活実態に即した保険料にしてください。
②低所得者に配慮し、必要な医療が安心して受けられる減免制度を設けてください。
③保険料を払えない人への保険証の取り上げをしないでください。
④健診を、今まで通り、希望者全員が受けられるようにしてください。
⑤県民および高齢者が参加できる運営協議会を設けてください。
以上